君がくれた帰る場所
ライトを浴びた森野さんは、本当に綺麗だった。
その姿を見た瞬間、胸の奥でそっと確信する。
——やっぱり、森野さんの居場所は“ライトの下”なんだ。
森野さんと離れるのは辛かった。
けれどステージの中央に立つその姿を見て、
(これで良かったんだ……)
そう、自然に思えた。
2時間のステージはあっという間に過ぎ、
アンコールを求める拍手と歓声がホール全体を包む。
「カケル!」「もう一曲!」
たくさんの声が渦巻く中、再び照明が灯り、メンバー全員がツアーTシャツ姿で現れた。
森野さんもラフなTシャツ姿で登場する。
普段とのギャップに思わず胸が高鳴る。
「こいつ、今が一番緊張してると思うんだよね」
ギターを担ぎながら鈴原さんが笑うと、
森野さんは少し睨んだあと、マイクの前で深呼吸をした。
「え〜と……まず、アンコールありがとうございます」
ペコリと頭を下げると、会場のあちこちから
「カケル──!!」
という歓声が飛ぶ。
その声を受け止めるように、
森野さんは静かに口を開いた。
「アンコールなのに、俺の我儘で、一曲だけ歌わせてください」
その一言に、ざわめきが止んだ。
「俺は約二十年前……大切な人を目の前で亡くしました。
守れなかった自分が許せなくて、事故だったとしても……
彼女を巻き込んだ自分のファンも、許せませんでした」
空気が凍るように、ホールが一瞬静まり返る。
「歌うことが怖くなり、声も出なくなりました。
さらに……音楽が聞こえなくなる病気にもなって、
もう二度とステージには戻れないと本気で思っていました」
森野さんはゆっくりと言葉を選んだ。
「そんなとき、ある人と出会ったんです。
最初の出会いは……二十年近くも前。
まだ、彼女が生きていた頃。
その人は俺の歌を好きだと言ってくれた。
Blue Moonが大好きだと……まだ小学生の小さな子でした」
息が止まる。
「その人は……解散後の二十年という長い時間、
俺達の曲を宝物みたいに大切にしてくれていて……
俺の歌が、その人の人生の支えになっていたって知って……初めて、
——“歌っていて良かった”って思ったんです」
喉の奥が熱くなる。
「その人が居たから……俺はここに戻って来られた」
最後の言葉は、噛みしめるように、優しく。
その瞬間、私の目から涙が止まらず溢れた。




