表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/68

クリスマス前夜の地獄絵図と、終わらない品出し戦争

玩具売り場の商品で、箱が破損したもの。

 そして、他の売り場から“迷子”になって流れ着いた商品。

 それらを“迷子商品用のかご”に仕分けしながら回収していく。


 売台の下を箒で掃くと──


 無惨に潰れた万引き商品の残骸 が転がっていることもある。


 「はぁ……」


 何度目か分からないため息をつきつつ、ようやく売り場の整理が終わった頃。


 ――店内放送が響いた。


『3F玩具売り場、3F玩具売り場。商品上げました。お願いします』


 森野さんの声だ。


「行くよ!」


 私と杉野チーフは顔を見合わせ、急いでエレベーター前へ走った。


 “ウィーン” と開いたドアの向こう──


 満員電車のようにパンパンに詰められた段ボール が、どどどっと手前へ崩れてきた。


「うわっ!」


 身をのけぞったその瞬間。


 ドドドッ、と階段を駆け上がる足音。

 森野さんが視界に飛び込んできて、崩れ落ちる段ボールを片手でキャッチした。


「柊! 商品、絶対に落とすな!!」


 ギロッと睨まれ、心臓がビクッと跳ねる。


「す、すみません!」


 謝る間もなく、森野さんは次々と段ボールを持ち上げ、また階段を駆け下りていく。


 ――速い。

 ――いや、本当に速すぎる。


 その姿は、まるで戦場を駆ける“運び屋”のようだった。


 私と杉野チーフは、限界まで積み上がった商品を必死に売り場へ運んでいく。


 すると、他売り場の社員たちも次々と応援に来てくれて、


「じゃあ俺たちが荷下ろしやるから、杉ちゃんたちはどんどん品出しして!」


 2Fチャイルド担当・山岸チーフが的確に指示を飛ばす。


「了解! 行くよ柊さん!」


「はいっ!」


 段ボールを開ける。

 商品を出す。

 開封部分にテープを貼る。

 貼ったら売り場へ走って陳列。


 戻ったらまた段ボールを開けて、貼って、陳列。


 これをひたすら繰り返す。


 すると──


「3F玩具売り場、荷物上がります」


 森野さんの声が再びアナウンスで流れ、

 直後に階段を駆け上がる足音が聞こえる。


(ほんとに……何往復してるんだろう……)


 息つく暇もない。


 そして数分後、


「3F玩具売り場、最後の商品上げます」


 その一言に、応援部隊は一斉にほっと息を吐いた。


 やがて森野さん自身も階段を駆け上がって戻り、何事もなかったように品出し作業へ合流する。


 普段会わない人たちも加わり、売り場は一体感に満ちていた。


 “ビリッ”とテープを引き剥がす音。

 “カタン、カタン”と商品を並べる音。

 小さな会話と気配があちこちから聞こえる。


 私はツリー用の小物飾りをフックにかけ続ける作業をしていた。

 離れた特設ツリー会場で、一人黙々と手を動かす。


 やがて、


「じゃあ先に帰りますね〜」


 応援に来てくれた社員たちが次々と挨拶し、帰っていく。


 私は空になった段ボールを潰し、次の箱を開け、また商品を並べる。

 ひたすら、黙々と。


 その時──


「柊さん、そろそろ終わらせるよ〜!」


 杉野チーフの声が飛んできた。


「は〜い!」


 返事はした。


 ……したけれど、


 手が止まらない。


 動いていないと、不安になる。

 この“地獄の作業”の流れから落ちこぼれてしまう気がした。


 体も心も、まだずっと“戦闘モード”のままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ