表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/68

クリスマス前夜の地獄絵図

 椅子に腰を下ろした瞬間、コツンと頭に何かが乗った。


「……?」


 見上げると、森野さんが無言で缶コーヒーをもう一本手に持っていた。


「お疲れ。売り出しの本番は明日からだけどな」


 そう言いながら、缶コーヒーを私に手渡す。


 続けて杉野チーフへは、軽く放り投げるように一本。


「本当は飲食厳禁だけど……ほら、こっち来て」


 商品が置かれていないスペースへ椅子を移動し、三人で缶コーヒーを開けた。


 木月さんは15時で上がるため、それ以降の三時間は私・杉野チーフ・森野さんの三人で戦い抜いたのだ。


「毎年思うけど、クリスマス時期は本当にすごいよね」


「ほんと。子どもが可愛いから、お父さんお母さんが必死になる気持ちは分かるけど……人気商品は数に限りがあるから辛いよね」


 そんな“ブレイクタイム”の空気の中、私は声を出す気力もなく、ただぐったりしていた。


「なんだ、柊。こんな程度でへばってんのか? そんなんじゃ明日と明後日の“本番”の闘いに負けるぞ」


 森野さんが苦笑しながら言う。


「明日は整理券が必要かもしれないわね」


「確かに……早めに並んでるお客様がいそうですね。じゃあ、売台には出さずに、ストック置き場から手渡しにします?」


「開店時間と同時に整理券を配って、お一人様一つにしましょう」


「クレームになりませんか?」


「ん〜……でも、せっかく来てくれたお客様に、一つでも多く届けたいじゃない?」


 二人の会話を聞きながら、私は口を開けたまま固まっていた。


 今日でさえあの大混乱だったのに、

「明日はもっと凄い」ってどういうこと……?


 現実感がなくなって呆然としていると、森野さんが腕時計を見て言った。


「あ、こんな時間か。じゃあ、俺、倉庫から明日の分の商品取ってきます」


 そう言って椅子を片付け、階段を駆け下りていった。


「さて! 私たちもそろそろ売り場の整理しましょうかね」


 杉野チーフが膝を叩いて立ち上がり、売り場へと向かう。


 私もよろよろと立ち上がり、売り場へ向かうと――


「……え?」


 そこに広がっていたのは、言葉を失うほどの凄惨な光景だった。


 お客様が帰り、静まり返った売り場に残されていたのは“戦場の残骸”。


 ◆ おままごと用のサンプルに混ざって、

  ビニールの開封テープを無理やり剥がされ、

  箱がビリビリに破れたガラガラのおもちゃ。


 ◆ 二階チャイルドの靴売り場の靴が、

  袋から出されたままポンと置かれている。


 ◆ 一階レジ横のお菓子が、

  なぜか玩具の陳列棚の中に突っ込まれている。


 見るも無残な“迷子商品”たちが、ところどころに散乱していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ