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店長の奥様、降臨

「やっぱりすげぇな、園田さん。

ちょっと手を加えただけで、田舎のスーパーがおしゃれなショップになったくらい違うもんな」


く森野さんはツリーや陳列の細かな変化に気づいては、まるで子供みたいに目を輝かせていた。


「本当に惜しい人材ですよ。

店長、なんで手を出したんですか!」


「あのなぁ……人聞き悪いこと言わんといてや」


店長と森野さんの軽口が飛び交う。

店長は普段から穏やかで優しく、独身時代は“かなりのモテ男”だったという噂を何度も耳にした。

奥様は、店長が一目惚れして猛アタックし、ようやく射止めた相手――らしい。


森野さんですら一目置くほどの女性。

どれほど魅力的な人なのだろう?


胸がざわつき始めたその時――


「亮君、もう帰ってもいい?」


階段の方から、ふくよかで温かい雰囲気をまとった女性の声が響いた。


「由美〜!危ないから、ここまで来んでええのに!」


店長が、見たことない“デレデレ顔”で駆け寄っていく。


「大丈夫だよ。もう安定期だし、亮君は心配しすぎなの」


豪快に笑うその女性は、まるで太陽みたいな人だった。


「あ、あなたが噂の新人ちゃん?」


にっこりと笑いながら近づいてくる。


包容力があって、ふわっと優しい。

見ているだけで、空気が明るくなるような人だ。


「玩具売り場、大変でしょう?

とくに、森野くんの下はね〜」


わざと森野さんに聞こえるように言う。


「園田さん!」


「今は“和田”だけど〜?」


けらけら笑いながら、森野さんの背中をバシバシ叩く。


(……この人、すごい……)


私はぽかんと見つめるしかなかった。


奥様は、ただ“居るだけ”で周囲の温度を上げる人だ。

ひまわりのような明るさに、店長が惹かれた理由がすぐに分かる。


そして私の肩をぽんっと叩き、優しく目を細めた。


「色々大変だと思うけれど、みんなあなたに期待してるのよ。

森野くんだってそう。口は悪いけど、あなたのことを“真面目で一生懸命”って褒めてたわよ」


「え……」


あまりの意外さに声が漏れる。


その直後――


「園田さん。余計なこと言うなら帰ってください」


森野さんがそっけなく言い放ち、ぷいっとそらした顔のままストック置き場へ消えていった。


胸がきゅっと痛む。


奥様は私の背中をぽんっと叩き、


「そんな顔しないの。あれは照れ隠しよ。

もっと自信を持ちなさい。()()森野くんに褒められているんだから」


「自信……か」


ぼんやりその言葉を反芻していると――


「さて。帰れって言われちゃったし、私は戻ろうかな」


そう言って歩き出した奥様に、


「ま、待ってください!」


気づけば私は、必死に声をかけていた。


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