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鉄仮面の先輩、接客モードになると別人です

ハロウィンが終わり、街がクリスマスムードに染まり始める頃――

玩具売り場は、毎年恒例の“戦場”と化す。


「柊! 売り場の商品、在庫確認したのか!」


ストック置き場に入るや否や、森野さんの怒号が飛んでくる。


「あ、今行きます!」


慌てて返事をすると、背中に追い打ちの一言。


「言われる前にやれ! この時期は、いちいちお前の面倒を見る時間ねぇんだから!」


……はいはい、分かってますとも。


私も最近になって、ようやくいくつかのメーカーを任されるようになっていた。

担当は“ピクチャーパズル”と“知育玩具”。


売り場に出ると、棚にぽっかり空いたスペースがいくつもあり、

私は大急ぎでストック置き場から商品を抱えて戻り、黙々と陳列を始めた。


そんな時――視界の端に、ある光景が飛び込んできた。


「あの……」


小綺麗なママさんが、森野さんに声をかけている。

すると彼は――


普段の“鉄仮面”が嘘のような、とびきり爽やかな笑顔を浮かべ、


「はい、何かお困りですか?」


と柔らかい声で応えているではないか。


……いや、誰??


ぶっちゃけ最初に見た時は、本気で目を疑った。

普段はムスッとした無表情のくせに、接客モードになると急に“爽やかイケメン店員”に変貌するのだ。


そんな笑顔ができるなら、少しでいいから私にも見せろ!!

と思うのは、私だけではないはず。


そのママさんは、森野さんの本性を知らないから、

説明を聞きながら頬まで赤らめている。


……うん、知育玩具より確実に“あなた”に興味があるよね。


一緒に働くようになって分かったのは――

森野さんは、とにかくモテるということ。


他の売り場のスタッフから「森野くんが好き!」なんて噂もちらほら耳に入る。

お客さんの中にも、完全に森野さん目当ての人が明らかに存在していた。


そして、そういう人たちは――

絶ッッ対に、私には話しかけてこない。


森野さんが品出ししているタイミングを見計らって、そそそ……と寄っていき、

まるで“偶然通りがかりましたワタシ♡”みたいな顔で声をかけるのだ。


……ああいうの、マジでわかりやすい。


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