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第1話  高坂亜紀良と若葉月夜

ここは都内の端っこ。


私鉄と地下鉄の2つの駅の間に、商店街がある。


その商店街にある小さな輸入食品店。


ビルの1階のこじんまりとしたお店だ。


そこを経営してるのは、高坂亜紀良(たかさかあきら)24歳。


180cmの黒髪、ボサボサの無造作ヘア。


そして眼鏡をかけている。


大学を卒業したのち、夢だった輸入食品店を経営している。


高坂は1人で店を切り盛りしている。


アルバイトを(やと)う余裕はない。


しかしいつも1人で店にいるかというと、そうでもない。


いつも顔を出す女の子がいるからだ。


若葉月夜(わかばつきよ)


高坂の近所に住むいわゆる幼馴染。


年齢は17歳の高校2年生。


153cmとやや小柄で、黒髪が肩まで。


そして右側のサイドに、三日月のヘアピンを着けている。


歳はやや離れているが2人の仲はすこぶるよい。


高坂のことは「あき兄」と呼んでいる。



夕方いつものように、月夜はお店に入り端っこの椅子に、ちょこんと座って本を読んでいる。


高坂の手が空いてると、今日学校であったことなどを、話したりするのだ。


月夜が話しかけてしばらくすると若い主婦がやってきた。


店内を色々見て回ってから、店主である高坂に声をかける。


「来客用に出す珍しいお菓子が欲しいのだけど、どういのがありますか?」


高坂は

「そうですね。まずはアルファホーレスですね。

アルゼンチンの国民的お菓子です。

2枚のクッキーにキャラメルクリームをサンドして、

チョコレートでコーティングしたものです。」


そして

「他にはギフラーですかね。

フィンランドなどで売られているシナモンロールですね。」


あたりを見回し

「ストロープワッフル。オランダの人気のお菓子で、

ワッフル生地にシロップを挟んだもので…

コー…コ・コ・コーヒーの上に乗せてシロップを溶かして…」


今まで流暢(りゅうちょう)に接客していたのに、急に口ごもる。


店の奥で月夜がため息をつく。


「あき兄、相変わらずだね。」


若い主婦は不思議に思いながらも、

最初に紹介したアルファホーレスを買って行った。


月夜が高坂に向かって言う


「まだコーヒー恐怖症(きょうふしょう)治ってないの?」


「治るわけがない!あれは悪魔の飲み物だ」


高坂には理由がある。それはコーヒーを飲むと…。



しばらくして月夜は今日の学校の出来事を話し出す。


日本史の奈良時代の藤原氏と藤原氏以外の勢力争いを覚えるのが大変とか、

お昼に食べたシシリアンライスが美味しかったとか。


ちなみにシシリアンライスは佐賀のご当地グルメで、

ご飯の上にタレで炒めたお肉・生野菜・マヨネーズをかけたものである。


お肉のタレと野菜・マヨネーズの相性がよく、非常に美味な食べ物である。


そして

「また放課後部活に入部しないか誘われたよ」


誘われた部はいつものようにインディアカ部である。


インディアカはドイツ生まれのスポーツで、

羽のついたボールを手で打ち合う団体競技である。


4対4又は5対5でインディアカは全国大会・ワールドカップなどがある。


インディアカの競技人口は日本は世界でも多い。


しかし高校となると活動してる学校・部員はやはり少なく、

どこも人員確保と対戦相手に苦労しているのだ。


「体育の授業で上手かったからって、しょっちゅう誘われるの困るんだよね」


月夜は部活に入っていない。


いわゆる帰宅部だ。


表向きは親の手伝いとか家の用事と言っているが、実際は違うのである。


学校が終わったらこの店に入り(びた)っているからだ。


別に手伝いとかをしてるわけではない。


高坂が接客してる時は本を読んでいたり、勉強をしたりしている。


つまり高坂と話をするために来てるといってもいい。


月夜にとってはこれが日課なのである。




営業終了の時間になった。


「月夜、店閉めるぞ」


高坂は月夜に声をかけ、シャッターを半分閉めてレジに向かい、今日の売り上げの計算をする。


それをパソコンに打ち込み、売り上げと在庫状況をチェックする。


(お菓子類の売り上げが良いから、新しい商品を仕入れようかな…)


高坂は考えながら、帰る準備をした。



ドアの前で月夜が待っている。


そして月夜は高坂に声をかけた。


「今日も1日お疲れ様」


2人は店を出て、ドアとシャッターを閉めて家へと向かった。


店を出てすぐ、月夜と同じ学校の大山伊月(おおやまいつき)が歩いてきた。


クラスの友達である。


2人は目が合うが、月夜が男の人と一緒に歩いているので、

声をかけづらいのか、そのまますれ違って歩いて行った。



商店街は飲食店が多いので営業中の店が多く明るい。


その飲食店のいくつかをすぎ、左のわき道にそれ、踏み切りへと向かう。


途中右手に、白をベースとした自販機があった。


ここに自販機あったっけ?と思って見ると、飲み物の他にやきいもの文字が。


高坂は驚き、方向を変え自販機に近づいて行った。


3段に並んだ商品の3段目にやきいも500円とある。


「月夜、焼き芋が売ってるぞ」


月夜は驚き高坂の隣に行き、自販機を見る。


「ほんとだ。ほんのりあたたかいって書いてあるね」


2人は目を合わせた。


高坂は

「月夜。食べるか?」


「うん!」


高坂は500円を入れ、やきいもと書いてあるボタンを押した。


ガタッゴト


自販機から音を立てながら、焼き芋の写真がのってるプラスチックの容器が出てきた。


フタをまわして開けると、ビニールがあり中に焼き芋が入っている。


「「おおー!」」


2人して感嘆(かんたん)の声をあげた。


ビニールを破くと、中に焼き芋が3つ入っている。


「あたたかい。それに焼き芋の匂いがする」


「あき兄焼き芋なんだから当然でしょ」


お互い1つずつ持ち、皮を向きながら食べ始めた。


「蜜がたっぷりで美味しいね」


月夜が言うと

「皮はどうすればいいんだ?」


高坂は皮の処理に困っていた。


「私がもらうよ」


月夜はピンクのハンカチを出し、自分の向いた皮を乗せる。


「いいのか?」


「いいの、いいの。あき兄は美味しい?」


「うん。美味しい。見ると冷やしてもいいらしいぞ」


「じゃあもう1つはあき兄が冷やして食べてね」


「月夜はいらないのか?」


「2つも食べたら太ります」


高坂は1つぐらいで変わらないだろうと思ったが、口に出すのをやめた。


食べ終わると、高坂は焼き芋が1つ入っているプラスチックの容器をしまい、

月夜はハンカチをスクールバッグに入れた。


そして踏み切りに向け歩きだした。


「この街って変わった自販機多いよね」


月夜は言った。


「どんなのがあったっけ?」


「お菓子の自販機にドレッシングの自販機にラーメンの自販機に餃子の自販機!」


「餃子だと…」


「冷凍餃子だけどね」


「なんだその場で食べれるんじゃないのか」


「ラーメンは食べれるよ」


「!!!」


高坂は驚き

「今度食べに行こう」


「うん!」


2人は約束をして、踏み切りを渡り坂を下って月夜の家に向かった。


高坂は月夜を送り届けてから自分の家に帰ったのだった。

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