4 挑戦と互助とあと何か・・・
「ゴールデンシニアに贈る、元気になるカイ君の生活講座(終活も含む)」
終活プロデューサー小出カイによる、身の回りの整理整頓術から終活の始め方までためになる3時間です、プロのメイクによる遺影撮影や健康食の試食もあります。
希望者はイベント後の温泉入浴も無料です。今回は募集は女性のみ
参加費2000円 定員10人 お早めにお申し込みを 協賛・農協企画部
第一回の農協主催の終活セミナーはこうしてトライアルを迎えた
美容師の渋谷先輩に協力を仰ぎ、写真屋の後輩品川さんにはお父さんにもお願いして旅館の一部屋を撮影用するため色々な機材を運び入れてセッティングした
大まかなプログラムを作り、司会は藍子が務めることにして前日はカイ君、農協、旅館の3人を生徒に見立てて講座のリハーサルをした。
「いい?カイ君 最初は私が司会をするけど、2回目以降はカイ君が司会進行を一人でこなすのよ」
「できるかな?」
「できるカナじゃなくてやるのよ、こんなの回を重ねれていけば慣れてくるし、なんてことないから、それに人前で話す事でどうすれば人の心を掴むことができるかを学ぶのよ」
「あ、あれですね、ジンシンショ・・・?」
「そう、覚えてた?人心掌握ね。人の心をつかむ話し方よ、ほらホストの経験を生かして、どうすればもっと相手の懐に届くメーッセジを送れるか、スキルアップさせていくの、お客さんからも学ぶのよ、いい?」
当日はこっそり地元新聞の記者を呼んでおいた。一番後ろにはビデオカメラを置き、講座の内容を記録した。
プログラム進行表は大まかに次の通り
1 開催宣言 カイ君あいさつ
2 オリジナルファイルでの生活の管理 質疑応答
3 逝去から葬儀までの流れ
4 葬儀前後の、手続きや書類の流れ 質疑応答
5 休憩
6 ストレッチなど体にいい運動
7 体にいい食事 実演試食
8 プロによるメイクと写真撮影
9 集合写真 質疑応答 ご意見・ご感想 アンケート記入
10 希望者は入浴後帰宅 おみやげのジュース
「ざっとこんな感じかな・・・」藍子がスケジュールをカイ君らに見せる
「まあ、とにかくやってみようよ」と皆を促し円陣を組んで気合を入れた。
当日はイベントをする方も初めてだし参加する方も初めてなのでどうなるかと少しは不安もあったが、まあ人生経験の長い藍子はその年の功で難なく乗り切っていった
「皆さま初めまして、今日はお忙しいところ、わざわざお運び頂きましてありがとうございます。今回は私が小出カイ君を見込んでこの講座をたちあげましたところ、同級生の農協の青年大崎君と今回場所を提供してくれるこの旅館の植野君の協力もあって、開催にこぎつけることができました。
こういう経緯で今回は私が司会を務めさせていただきますが、次回からは小出カイ君が全てを取り仕切る予定です。
小出カイ君は去年私の夫の葬儀を担当してくれましたがとてもしっかりした青年だったので、ゆくゆくはこの町をよくしてもらうためにも町議会議員に立候補してもらいたいと思っています。皆さんも是非彼をそこまで育て上げ見守ってあげてください
はい、すいませんココで拍手で~すよ・・・・
では今日の講座のプログラムと大まかな流れの説明からさっそく本題に入りたいと思います。では拍手でお迎えください、小出カイくんで~す」
ちょっと芝居がかった盛り上げ方は昔バイトの添乗員で学んだ藍子だったので、
初回10人という人数のとりまとめはどうにかこなせた。
一番の盛り上がりはやはりメイクと写真撮影だった。遺影ということなので首から上だけなのだが、首周りに花やスカーフを飾る予定が、一応用意したロングドレスを皆着たがった。
最初ということもあり、それらは自分のスマホで 撮ってもらうことにした
おばさんたちのひそひそ話が耳に入ってきた
「あの子、東京でホストしてたらしいわよ」
「ホストって女に貢がせて、・・・」
すかさず藍子がその話をとりあげる
「そうなんですよ~カイ君はホストをしてました。でもそこでカイ君は大きなことを学んだんですよ。それは「聞く力」です、どんな人の悩みにも寄り添える「共感力」
だからこそ、悲しむ人に寄り添うと決めてこの葬儀の仕事をしているんですよ。
この終活講座も皆さんがもしもの時に心の備えがあれば、悲しみにパニックにならずに乗り越えられるかもと実体験から始めたんですよ。何しろ葬儀を通じてたくさんの悲しみを見てきたわけですから、おばあちゃん子ということもあって、年配者にも優しく寄り添ってくれるんですよ、若いのにねえ~
だから、どうかこの若いカイ君のファンになって支えてくれませんか」
この中傷をいい噂に変える啖呵をきった藍子の姿を見ていたカイ君と同級生は
その技に感嘆した「藍子さんてすごい人だな」
さて・・・10人のおばちゃんたちは変身フォトに魅了されひとときの非現実の
思い出の写真を胸に喜んで帰って行った。
「お疲れさまでした、それじゃサクッと反省会しま~す」藍子の号令でアンケートをみながら、旅館の一室で今日の反省点を色々議論した。
「どうだったカイ君?」
「藍子さんのサポートでなんとかいけました。ありがとうございます」
「はいはい、こちらこそ。ねえ楽しかった?」
「そんなゆとりなかったっす、でもみんなうれしそうでしたね」
「ほかの人はどうでした?で端からひとことづつ感想やご意見お願いします」
そういって藍子は皆の意見を聞いた
次に改善点などについて話が始まった
生活ファイルはオリジナルの名前を付けて、個別に販売もしたら?
友達にも上げたいって人いたし・・・・お昼はもうちょっと‥やっぱりお弁当にした方が・・・写真撮影は別料金じゃないと採算が合わない・・・これ別のイベントでできない?マルシェとか祭りとか・・・・日帰りでこのツアー作ったら市外からも人呼べるよね・・・・などなどいろいろなアイディアが飛び交った。
藍子はちょっと引いて皆を見ていた、カイ君や友達も自分の考えやアイディアを
考えるようになったなと安堵した
ひとまず無事にプロジェクトが動き出したと実感し、このチームでやっていける自信を感じた
「では、次は一度お弁当にしてみましょうか? そして細かな改善点は毎回出てくると思うのでその都度検証しなおして、より良くしていきましょう・一応2週間後、またこのカイ君の終活講座をします、その時は新聞やローカルケーブル局も呼びますので、皆さん気合を入れて頑張りましょう。
そうだ、次回からは参加費は2500円くらいにして、フォトのプリントアウトは2枚目から、あるいはカラーの場合は別料金ということで、ギャラもお支払いできるように
しますので、今しばらくはボランティアでしのいでいただけますか?よろしくです~」
と藍子の説得力のある話し方でその場が閉じられた。
翌日コラムという形でこの話はローカル新聞に掲載された「頑張る若者たち」というタイトルで・・・・




