2 現実と知恵とあと何か・・・
「これ、おいしいっすね」 カイ君がハンバーグをほおばる
「でしょ、じゃ 毎週おいでよ、私も一人で食事するより楽しいからさ
何なら、友達も連れておいでよ、今度」
「いいんすか、じゃ今度は何しよっかな、唐揚げとか」
「子供か」 アハハ 久しぶりに笑い声がこの部屋に聞こえたような気がする
カイ君も人懐っこさですっかり友達のように接してくれるので気が楽だ
「さてと、こないだの話だけど・・・」
「選挙でしたっけ? オレやっぱりやですよ、はずくて立候補なんて、」
「まあまあ、すぐにはハードル高いよね。それはわかる、織り込み済みよ」
「じゃ、何をすれば・・・・」
「まずは自分の住んでいるこの町のこと一回見渡してみよっか」
「この町?」
「そう、この町に足りないものとか欲しいものとかある?」
「ほしいものはそうだな・・・プールとか・・・・」
「うん、プールほしいよね、私も、それにこの町移住してから思うんだけど、郷土資料館みたいのも無いよね。あと図書館が古くて貧弱、本も少ないし」
「遊ぶとこないしな・・・」
「でも、よく考えると、色々恵まれてるのよ、海辺の町だし、山にはみかん畑、温泉もあるじゃない?」
「オレにとったは当たり前だから、いいも悪いもわかんないけど、確かに東京に行って、帰りたいとは思ったかな、温泉とかおいしい魚とか・・・」
「そう、そうなのよ、あなたが東京に行って一番に得たものはそれなのよ」
「それって?」
「東京との違い、地元のホっとするところ、それが分かっただけでも100点なのよ」
「そうなんすか?」
「実は私も若い時、東京なんて窮屈で嫌だったんだけど、外国で暮らしてみて、なんて日本て素晴らしいんだって再認識したんだ、だからまずそれに気づくことが第一歩なんだよ」
「そっか」
「でも、帰って来たらきたで、故郷は疲弊して貧弱になっていたと感じたでしょ」
「うん」
「だから、今、この町に足りないのは何か?これあったらと思うところは何か?」
「なるほどね」
「じゃ、それを踏まえて、問題点やあったらいいものはなんだろうか?」
「学校が廃校になること、町に元気がなくなること、寂れていくこと、若い女の子がいないこと?・・・・」
「そうそう、その調子、ね、色々考えればあるでしょ?」
「でも、それが解決できる? どこの町も同じ悩みあるけど解決してるようには見えないけど・・・」
「問題解決能力が低いだけだよ、私なら今言った問題解決できるよ」
「どうやって?」
「クイズだと思えばいいのよ、社会問題は何らかの形でどうにかなっていくもんなんだ、歴史をみても国と国との戦争だってどうにか終結していくし、世界中に広まった感染症だって、人間は克服してきたんだから、こんな小さなコミュニティの問題だって、あるのよ、答えが・」
「じゃ、たとえば? 元気のない町をどう元気にするの?」
「町の活性化なんて実は簡単なのよ」
「簡単って?」
「たとえばね、図書館が古くて蔵書も少ないって問題、廃校になった学校を結び付ければどうなる?」
「廃校を図書館にする?」
「そうそう、それよ、ほらもう解決した!」
「でも、蔵書は?買う予算ないよ」
「じゃ、なかったらどうする、ある所から持ってくる、あるいはもらってくる、集めてくるっていうのは?買う費用を集めるには寄付の他に?あなたの社長が昔やっていたことは?‥‥思い出して」
「捨てる本をもらう?不要品をバザーに出して資金を稼ぐ」
「そうそう、いいねえ。そのアイディア、もう一段階すすめて、それを常時廃校舎の中でやったらどうだろう、人が集まり、賑わいが生まれ、モノがリサイクルされてゴミが減る」
食後のお茶とケーキをテーブルに出す藍子、さっそくぱくつくカイ君
「具体的にはこういうのはどうかな、廃校舎の2階は図書館、やコミュニティ会議場、
一階はカフェや地元の野菜や特産品を並べて、皆が不要品を持ち寄ってバザーも開く、もちろんあか抜けたおしゃれにレイアウトして・・・。
例えば1メートル立法のキューブのスペースを作って箱でもいいんだけど、そのスペースを貸し出して、不要品だけでなく、手づくり品や骨とう品を売ったりする場所とチャンスを作り出すの。これが少しだけど活性化の第一歩。
「道の駅」ならぬ「町の駅」みたいにすれば住民も観光客も寄ってくれるんじゃないかしら、そこに都会の女子が喜ぶものやイベントを加えれば女の子もくるかもよ」
「え~どんな?」
「それはあなたが詳しいんじゃない?ホストの経験から女の子が喜ぶものとかさ」
「女が喜ぶものね~、なんだっけな~ 優しさかな みんな寂しかったから」
「えっ どうやって優しさあげたの?」
「どうやって? 話したりとか・・聞いたりとか・・」
「じゃ、そこにホストクラブ作っちゃったら?」
「学校に? なにそれ?」
「昼間のホストクラブ」
「はあ~どうやって?」
「町の駅・昼間のホストクラブ。うん、中々いいアイディアかも、これは取材が来るわね、で、一躍有名になって、人が押し寄せ活気が蘇る」
「何、言ってんすか」
「そういうことよ」
「そういうことって?」
「一見変に見えることもヒントになるって事、柔軟な発想が必要だってことよ」
「ホストの服なんて捨てちゃったし・・・」
「バカね、昔のホストの再現をしろってことじゃないのよ」
「じゃどうするの?」
「ふふふ、それを考えなさいってこと、私も考えるから次回迄の宿題ね」
「はあ?」
「そういえば知ってる? 東京の金持ち社長が100人に100万円くれるってプロジェクト。君の夢叶えてあげるとかで、応募してみよっか、ダメもとでさ、受かったらニュースになるし、100人にプレセントだから当たるかもよ。 住所と生年月日、メモに書いといて応募しとくから・・・」
「100万か~一度稼いだことがあったな~」
「ああホストの時?すごいじゃない」
「でもなんか、罪悪感みたいなもので喜べなかった」
「アンタほんといい子だね、よしよし、次は唐揚げにオムライスでお子様ランチにしてあげよ」
「えっ、お子様ランチ~あの~旗立てないでくださいね」
お茶を継ぎ足してお菓子を出す
「ねえ、チャンスの神様って知ってる?」
「チャンスの神様?」
「そう、どんな格好してると思う?」
「え~、そうだな仙人みたいな感じかな?」
「あのね、チャンスの神様って頭は禿げてるのよ、つるっぱげ、でもね額にちょっとだけ前髪があるの」
「ふ~ん」
「でね、その神様とすれ違う時ね、あっこの人チャンスの神様だって気が付くの、だって、変なヘアスタイルしてるから・・・」
「はあ」
「でもね、ちょっと待って思っても後ろが禿げてるから、つかむ髪がないわけだから、つまり、取り付く島もないわけ、だからそのまま神様は立ち去ってしまうの」
「だから?」
「だから、そんな人が近づいてきたら「チャンスの神様だ」って気づいた時に、その額のちょっとだけある前髪を掴まないといけないのよ」
「むずいっすね」
「わかった?このオチ?」
「オチ?」
「そう、時の前髪を掴めってことなのよ」
「あっ、そうか、時の神様ね・・・」
「でも、ほんとはそんなわかりやすいヘアスタイルしてないからね」
「じいさんでもないんでしょ」
「そうそう」
「もしかして…僕の前にいる人ですか?」
「ふふふ、そうかもね、でもそうじゃないかも・・いつ現れるか楽しみだわね」




