22 生きようよ、もう一度
空気は刺すように冷たく、息を吸うたびに肺の奥まで凍りつくような感覚が広がる。
風は容赦なく頬を打ち、鞭のように肌をなぞっていく。
4月だというのに、まるで冬のような寒さだった。
「彩芽、寒くない?」
凍てつく空気が流れ、心まで締めつけられるようだった。
「大丈夫だよ」
彩芽はそっと微笑んだ。
「幽霊のこの姿だと、寒さとか感じないから」
「ああ、そっか」
それでも彩芽は目を伏せ、白く染まった吐息が空に溶けていくのを見つめていた。
「でもね、寒さを感じられないのは、ちょっと寂しいよ」
「どうして?」
「寒いと、誰かのぬくもりが恋しくなるから」
ふっと寂しげに笑ったその顔が、胸に刺さった。
どうにかしてあげたくて、彩芽の手に触れた。
じんと冷たくて、涙がこぼれた。
「どうしたの?」
何もかも平気な顔で受け流す彩芽を思うと、涙が止まらず、苦しかった。
腕を取って、そっと抱きしめた。
「え?」
戸惑いの声を上げたあと、落ち着いたように腰に手を回してきた。
温かかった。
彩芽はこのぬくもりすら感じることができない。
それが本当に、悲しくて寂しいことだった。
そして、彩芽の鼓動を感じた気がした。
いや、幽霊なのだから、きっと俺の幻聴だろう。
それでも、ただただ彩芽を救いたいと思った。
彩芽に何もしてあげられていないことが、やるせなかった。
「ねぇ、生きようよ」
涙ながらに絞り出した言葉だった。た。




