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20 まだこの時間に留まっていたい

 灰色の空が広がる高校の屋上で、俺はただじっと空を見上げていた。


 彩芽と最後に会ってから、もう4日が過ぎた。


 どうすればいいのか、答えが見つからない。


 頭のいい奴なら、きっと正解を知っているのだろうか。


 分からないでいてほしいな。


 勉強ができる奴も、同じように悩んでいてほしい。


 報われないのが馬鹿な奴だけなんて、せめて感情の世界では通用しないでほしい。


 冷たい雨がしとしとと降る中、俺は傘もささずに濡れた道を歩いていた。


 寒さが身に染みる。


 凍えるような空気に、涙がこぼれそうな感情が込み上げてくる。


 雨が降っている今日は——彩芽に会える日だ。


 鬼ごっこ、だったっけ。


 そんな遊び、最後にしたのは小学生の頃。


 というか、彩芽以外の誰かと遊ぶことすら、それ以来だ。


 それでも、会いたい気持ちと、会って何になるのかという疑問が交錯して、心に溝ができる。


 楽しみだけど、怖い。


 それでも、楽しもう。


 彩芽はそれを望んでいる。


 深く息を吸い込んで、覚悟を決めて公園へと足を踏み入れた。


「やっほ、蓮」


 東屋の椅子に座って、彩芽が手を振っている。


「うん」


 隣に座ろうとした瞬間、「タッチ」。


 俺をからかうようにちらちらと見ながら、彩芽は一目散に駆け出した。


「え、ちょっと」


 滑り台の上から手を振り、「こっちだよ」と叫ぶ。


 張り詰めていた神経が、雨水のように木々の根元へ染み込んでいく。


 肩の力が抜けて、自然と笑みがこぼれた。


「待ってよ」


 滑り台へ向かって走り出す。


 車窓に跳ね返る雨粒のように、鮮明な滴が視界に映る。


 踏み出した地面に波紋が広がり、水滴が身体に跳ねる。


 まるで、すべての雨が自分に降り注いでいるような感覚。


 髪も制服もびしょ濡れになりながら、二人で思いっきり走り回る。


「タッチ」


 振り返った彩芽の顔に、ぱっと笑顔が咲いた。


 世界が一瞬で鮮やかに彩られる。


「待て」


 わざと悔しがるような仕草で、俺を追いかけてくる。


 楽しい。


 ああ、失いたくない。


 ずっと、このままでいたい。


 大粒の雨に打たれながら、俺たちは全力で駆け回った。


 現実の重さから逃れるために。


 せめてこの瞬間だけでも、脳を騙すために。

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