カップラーメンは体に悪いが食べたくなる
私の名前は、聞越 瑠流。突然だが、私には、食べ物の言葉が分かる。
「なぁなぁ〜早く食べようぜ。あと一分なんて、今食べても変わらないだろ?」
今眼の前で喋っているのは、私が食べようとしていたカップヌードルだ。片手で持てるサイズで、カレー味。
「腹減ってるだろ? ちょっとくらい早くても、大丈夫だって。食べてる間に、煮えてくるだろ? それとも、伸びてる方が好きなのか?」
「分かった、分かった。食べるから」
「おう、早く食べろよ。もちろん、美味しく食べるよな? おれは、美味しいからな! 健康なんて気にすんなよ。BMIとか、健康診断に引っかかるとか、ダイエットとか、栄養が偏るとか、最近は面倒な事ばっかり言ってたが、やっぱり、おれの味が恋しくなったんだな!」
「違うって、お隣さんがカップラーメンいっぱい貰ったからって、お裾分け貰っただけ。」
「どうでもいいから、早く食べろ。もう、3分過ぎてるぞ。」
「え、もう!? 伸びちゃうじゃんか!? 早く言ってよ!」
「さっきから言ってるだろ」
カップラーメンが呆れた声で言う。私は蓋を剥がし切ると、味の源である黄味がかった茶色のソースを入れて、割り箸で混ぜる。
「割り箸で食べた方が美味しく感じるよな」
カップラーメンは上機嫌そうに話す。
「でも割り方下手だな、お前。箸を割る時は、横にして、上下に割くように割ると綺麗に割れるんだ。…ま、成功した試しはないけどな━━━おい、混ぜるのは、そこまでにしておけ。麺が伸びるだろ!?」
「はいはい」
私はそう言ってから、湯気のたつカップラーメンに箸をいれ、麺を十数ほど掬い、ズルズルとすする。
…少し火傷したが、安定に美味い。細い縮れ麺には、カレーのスパイスがこれでもかと絡んでいて、暑い夏こそ病みつきになる味、チープな味だ。この甘過ぎず、辛すぎずの塩梅は、神業だと思う。
そうして夢中になって食べていると、カップラーメンの抗議の声も聞こえなくなった。しばらくして、私は麺を食べきった。
「うっぷ…」
満足だ。
「まだ、満足するには早いぜ! シメがまだだろ? 日本人なら、白米だ! どうせ冷蔵庫に残ってんだろ?」
「いや、もう満腹だけど」
「白米にスパイスの効いたカレーのスープ、想像してみろよ? ゼッタイ相性抜群だし、美味いだろ? カップラーメンのカロリーは423カロリーだ。そして、茶碗半分の白米のカロリーは117カロリー、サイトにもよるが18〜29歳女性の一食の摂取カロリーは566カロリー、つまり茶碗半分を入れて食べると540カロリーだ。一食分の摂取カロリーは越えてないぜ!」
「…え?何が?」
私は、白米にスパイスの効いたカレーのスープ、想像してみろよ? と言われた所で、ゴチャゴチャした冷蔵庫から食べられそうな冷やご飯を探しており、話を聞いていなかった。そして、見つけてチンした白米を入れようとした時の事だった。
「……いや、大丈夫だ。」
「カロリーは、夜で調節するし大丈夫、大丈夫 ♫」
私は鼻歌混じりにお茶碗いっぱいに盛られた白米を投入した。カレーの汁が跳ねた。白いTシャツに飛び散った。
「ああああぁぁぁ━━━━ッッ!!?」
「だから、カレーを食べるときは、白い服は駄目だってあれ程言っただろ?」
「どうやったら、汚れが落ちるのっ!?」
「まずは、ぬるま湯で洗え」
「分かった!」
私はお風呂場に急いだ。
カップラーメンから、やれやれ、と呆れた声が聞こえた気がした。
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