諸刃の剣
俺はまた…
ーツルギsideー
カキンカキンー
はぁ、はぁ、はぁ…
2人とも呼吸が上がってたが見事にキルディラーを倒した。
「流石に時間かかったな」
「いや、相手と人数考えれば早い方だよ」
俺がロウみたいに戦えれば…
「おい!ぼっとすんな!ツルギ!らしくねーぞ、早く行くんだあいつ一人だと心配だ!」
「お、おう!!そうだな!急がないと!」
2人は急いで走る。
「血なまぐさい匂いする…」
ロウはよく鼻が利くけど普通の俺にも血なまぐさい匂いと嫌な雰囲気を感じる。
お願いだ…ハルキ、無事でいてくれ!!!
扉の前に来た時、俺は絶望した。盾を落としてしてしまった。
ガタンッ…
ロウは何を考えてるか分からない。
俺が考える暇がないのかもしれない。
頭が真っ白だった。今目の前の光景と真逆に…。
「なんだよこれ…一面血だらけじゃないか…ハルキ、ハルキは?ティアさんは?」
守れなかったのか?また。
また守れなかったのか?
俺が強ければ剣を使えればもっと早くついたはず
そしたらこんな光景…
俺は思い出した。
俺の一家は剣士だった。
でもそんな中で俺だけ適正がタンクだった。
それでも剣士になりたくて父親に教わっていた。
カキーンーカキーン
「おうおう!その調子だツルギ!」
「はい!お父さん!」
適性がタンクだった時落ち込んだ。確かに落ち込んだけど、でも、笑って必死に訓練をした。
頑張れば、努力すれば報われると信じて。
俺の家族はいつもにこやかで、みんな剣士なのに1人だけタンクの適正だった俺でも優しく厳しく教えてくれるお父さんだった。
母は、休憩の時に俺が好きな紅茶をいれてくれて手作りのお菓子も用意して笑って「頑張ってるね」と応援してくれてた。
俺は長男で、妹と弟がいるがいつも「お兄ちゃんかっこいい!!いつかそんなふうになりたい!」
キラキラした目で見てくれてた。
ほんとに笑顔が絶えない家族で幸せいっぱいだった。
「お兄ちゃん!!遊んで!!」
「しゃーねーなー笑」
追いかけっこや、枝で戦いごっこしたり、おんぶだっこを迫られるので同時にしたり、ほんとに俺はこの笑顔の絶えない家族を兄として守りたいと思った。
だいぶん大剣を使えるようになり、ダンジョンに潜ることになった。
その時妹と弟が駆け寄って
「はい!手作りのお守り!」
嬉しくて涙が出そうになったが笑って言った。
「これがあれば兄ちゃん最強だな!!」
嬉しそうにする2人。
ほんとに恵まれてる。
とある日、いつも通りダンジョンに潜っていると、聞き覚えのする声がした。
「「お兄ちゃん!!忘れ物!」」
「ケン!ルツ!」
俺の妹と弟だ。
「危ないからダンジョンに勝手に入ったらダメだろ…」
「だってお兄ちゃん私たちが作ったお守り忘れてったんだもん!」
「僕たちが危なくなっても、お兄ちゃんが助けてくれるでしょ?」
ケラケラと笑う妹と弟
「おう!!俺が守る!笑」
この時は自信いっぱいだった。
その時
ウオォォォォ
すごい雄叫びが聞こえた
タルタロスだ
中型の肉質はそんなに固くはないが大剣を持った二足歩行の牛だった。
確かもう1個階層が低いところで頻繁に出るモンスターだったはず。なぜここに!?
「ケン!ツル!後ろに隠れてろ!!」
大きな一振が来た
2人を守るためには下がれない
カキンーーーーーバキッ…
一瞬だった、俺の剣が折れるのは
やばい二発目が来る
頭が回らない
「「お兄ちゃん!!!!」」
グサッ
ビシャッ
え…嘘だろ
俺は血だらけだった。
俺の血ではない。兄弟達の血だった。
「お、お兄ちゃん大丈夫?」
ケンが言う
「おに、いちゃ、ん…こ…れ……」
お守りだった…。
妹がお守りを渡してきた
そんなことどうでもよかった。
早く2人を助けなきゃ、止血しなきゃ。流れていく血液。どこもかしこも血だらけで…でも、でも…そう思ってても、もう分かっていた助からないことも
「ごめんな兄ちゃん守れなくて…」
俺一人生き残ってしまった。
何故かと言うと、妹と弟がやられたあとすぐ、強いギルドがたまたま遭遇し倒してくれたからだ。
なんで俺、守れなかったんだよ…
そう、俺は諸刃の剣だった。
剣は力の入れ方角度ですぐ折れる。
甘かった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
俺は一人で泣いた。大事なふたりを抱いて冷たくなっていくふたりを抱いて
多分覚えてないだけかもしれないがこの時初めて泣いたと思う。あんだけ笑顔の絶えない優しい家族だったんだから。
俺は、他の人の言うことを聞かないで
「大切な兄弟なんで…せめて最後に家に連れて帰りたいんです。」
そう言って血だらけでも、2人を大事に抱えながら家に連れて帰った。
お父さん、お母さんに怒られる覚悟で連れて帰った。
「ただいま…」
真っ先にお父さんが来て、殴られる覚悟をしてグッと歯を食いしばり下を向いた。
ぽん…
頭に大きくてごつくてでも優しくて暖かい手の感触がする。
後ろからそっと抱きしめられたみんなを包むように。
多分母親だろう。
僕はてっきり殴られたり、罵倒されたり、それを覚悟してた。
下を向いてたから2人の表情は見えない。
でも、そこは静かな空間で誰も何も言わなかった。
ほんとに優しい家族だ。その優しさが余計に苦しかった。大切な人を守れない弱さがとても悔しくて。
それからというもののやっぱり、兄弟が死んでからあの時の賑やかさや笑顔は消えた。
でも、相変わらず親は優しく接してくれた。
笑ってもくれた。でも、それが俺のために笑ってること感じるからこそ余計辛かった。
夜中たまたま起きた時、父親と母親が泣いてるのを聞いたことがあるからだ。
本当は責められてもおかしくないのに、それでも俺の親は俺の前ではいつも通りでいてくれた。
それが偽りの笑顔だとしても、彼らなりの愛情だと思うから、俺も笑顔でいた。
そこから俺は親にもう誰も死なせないよう1人で特訓するから家を出てタンクになることを言った。
家を出てから、修練もいっぱいした。
タンクトップ3にも入り、最近は盾で人を守るのもいいなと思ってたが…
「ハルキ…また俺は…」
守るって、決めたのにな…
もう誰も死なせないって
俺は地獄絵図のような光景を見て絶望して自分を責めることしか出来なかった。
「いやー、ロコだよ!ツルギの好きな物の話するよ!え?関係ないって?いいじゃーん一息に!
ツルギはねー紅茶が大好き!ストレートのアールグレイが特に!ロイヤルミルクティーも好きみたいだよ!これはふふふツルギファンには必須な情報だね!」