誘拐
不穏な空気が街に流れてた
次の日、いつも通りロウさんとツルギさんと3人でダンジョンに行こうとしていたとき、不穏な空気が流れていた。
「なんか女の子が拐われたらしいよ」
「ショートカットだったけ?」
「ほら、あの、オッドアイの…」
オッドアイ…
ショートカットの女の子
ま、まさか!?
「おい、どこ行くんだよ!」
僕はロウさんの言葉に耳もくれず走る
「はぁ、はぁ、あの、すみません!!オッドアイってもしかして左目が黄色で右目が赤の女の子ですか?」
「そうだけど…どうしたんだい?」
ティアさんだ!!ティアさんに違いない!
いや、ティアさんじゃなくても人が拐われたら助けに行くべきだ!
僕はダンジョンへダッシュする
できる限り早く、全力でダッシュする
「ちょっ、お前急にどうしたんだよ!?」
慌てながらも着いてくるロウさん
「きっと何か事情があるんだよ、街の様子も変だし…」
ちょっといつもより、真剣なツルギさん
ティアさん…!!!
僕は頭がいっぱいだった。
もっと情報を集めればよかったと後悔するのはあとの話だが
どこだ、どこだ!!!ティアさん無事でいてくれ!
焦ってる僕をロウさんがとめた
「何やってんだ、事情を説明しろ」
「ティアさん!!ティアさんが拐われたらしいんだ!多分特徴的にティアさんだと思う…」
んーと悩んでる様子のツルギさん
「でも居場所がつきとめられなければなーダンジョン広いし…」
「魔道士とかいねーからな、地道に潰すしかねぇーだろ」
「でも!それじゃ間に合わないかもしれない!!」
僕は焦る。こんな僕にあんなにも優しくしてくれた人だ。彼女のおかげで何度命を救われたか。
そんな時女の人の声がした
«5階層まで行って…ほらそこに細道が見えるでしょ…そこを…»
声と共に流れるダンジョンの映像
暗い細道が見える。多分隠し通路。
「あの!?今女の人の声しませんでしたか!?」
「いや」
「何も無いけど?」
キョトンとする2人
僕にしか聞こえないし見えてないんだ。でも今はこの人の言うことを信じるしかほかがない…。
「僕について来てください!!!」
2人は目を合わす、でも僕の真剣さに押されたのか2人とも「分かった」と一言だけ言ってついてきてくれた。
5階層、あとはこの細道を…
「ぼっとすんな!!!」
カキーン
鋭い音がする
「うわっ!?」
黒ずくめでフードをかぶった人がいた
「クックック、てめぇやるなぁー?」
「楽勝」
ロウさんはニヤリと笑う
「おい、獲物が現れたぞ!」
その声とともに20人ほどの黒ずくめの人達がでてきた
怪しげな雰囲気、足がすくむ、その不気味なオーラに
「ハルキ!こいつらキルディラー(暗殺者)だ!」
「き、キルディラー?」
「あーもう、お前後下がってろ邪魔だ!」
ロウさんがいつもより真剣だ
カキンキンキンー
ズザザザーーー
「こいつらは暗殺のプロだ!俺とロウがおさえるから、ハルキは先にいけ!」
「で、でも!!」
いくら強いふたりでも相手は大人数。しかも強いらしいし。大切な2人が傷つくところを見たくない…でも…でも…
「大丈夫だよ、俺らに任せりゃー死なねー」
僕の不安げな顔から察したのか心強い言葉をロウさんがくれた。
ロウさんは20人の攻撃を捌いている
ツルギさんもロウさんのアシストをしている
そうだ、悩んでる暇なんてない、ティアさんを助けるんだ!
2人を信じるんだ!
「僕、行きます!お願いします!」
「おうよ!」
「おう」
僕は2人が作ってくれた敵の隙を抜いて細道へ入っていった。
近づくほど不穏な空気と血の匂いがする
ティアさん…無事でいてくれ…
僕は足をはやめた、走れ、走れ!!!
細道の奥に開いた扉がそこから見えたのは
血だらけの床で…
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ガシャン…
グチャ
人が死ぬのを始めて目の前にした
そこには銀色の鎧をまとった大きな騎士がいた。
多分死んだのは、黒ずくめの格好だったから…
ガクガクとする足
「いやーーーーー!!!」
ティアさんの声だ!?生きてる!!!!動け!早く動け!あんだけ助けてもらっただろ!?
「ティアさん!!!!!」
僕は拘束されたティアさんの目の前に飛び出した
ゆっくり振り下ろされる銀色の剣
あぁ、死ぬのだろう、目をつぶった
せめてティアさんだけでも…
カキンー
目を開けると、さっきまで誰もいなかったはずの部屋に1人の少年が立っていた。
どうやら片手剣で、さっきの騎士の剣を吹き飛ばしたらしい。
「自分も守れないくせに、他人を守るなんて無理だ、僕がいなかったら死んでたぞ」
そう言い彼はたたかっていく
軽い身のこなし、隙もない、まさに完璧な立ち回り
あっさりと倒してしまった。
「あ、ありがとう」
「あのさー、さっきも言ったけど君ヒーラーでしょ?戦えもしないくせに1人で来んな」
「で、でも!人が困ってたら助けるのは当たり前じゃないか!それに君…本当は最初から居たんでしよ?なんで助けなかったんだよ!!あの黒ずくめの人も助かったかもしれないじゃないか!?」
「偽善者め、そういうのが一番嫌いだ」
少年は言う
「でも人の命はみんな等しい、大事にするべきだ」
「僕はギルドから依頼され、キルディラーの尾行をしてた。人を傷つけるやつの報いだあれは助ける価値はない」
「でもっ!!!」
「そんなんじゃ大切なものを失うぞ」
そう言って少年は去っていった。
は!?そういえばティアさんは!?
拘束をとく
「無事ですか!?」
「うぅ…」
安心したのかポロポロと泣き出したティアさん。
抱きしめたいところだけど、そういうわけもいかなかったので、頭を撫でた。
「怖かったですよね。良かった無事で」
「うぅ…ありがとう」
僕は安心したのか恐怖から開放されたからなのか足に力が入らなくなり、ティアさんの隣に座った。
あの少年あんだけの実力があるのに…
広がるのは血まみれの床と肉の塊
地獄絵図だった。
「やるねboy!!」
「僕は何もしてないですよ…でもあの少年一体誰だったんだろ…」
「ふふふ、神のみぞ知るってやつだね!」
「え!?しってんの!?」
「さぁー?」
「この適当ロコめ!!」