再来の湖
エイトが言った言葉を、その意味を、改めて考えるハルキ。
とりあえず毎日ギスギスで特に僕には当たりが強いエイトさん…
多分ティアさんは僕の陰に隠れてたから彼のことよく知らないのか普通に話しかけてるけど…
「朝ごはん出来ましたよ」
「おう、ありがと」
なんでティアさんにはギスギス態度取らねぇんだよ!?あぁん!?
まぁー素っ気ないのは相変わらずのエイトさん。
とりあえず僕の休息と言えば、闘技大会に出る4人が特訓に行く時間だけで、ティアさんと二人でいる時間がとてつもなく幸せで落ち着くことに今更気づいた。
まぁ、闘技大会の特訓が終われば、エイトさんはエイトさんの用があるらしく、僕らは僕らでダンジョンに潜って、ティアさんが待っててくれるってのが日常なんだけどね!
とある日ティアさんと二人の時にまたあの湖へ行った。
沈黙が続くが心地よい。
「あの時…私を守るって言ってくれましたよね?」
「はい!覚えててくれたんですね!」
「もちろん!私すごく嬉しくて…でも、ハルキさんがいつもダンジョンから帰ってくる時怪我をしてるのを見ると心配で、でもみんなのことはちゃんと守ってて…」
「まぁー、僕自分のヒール出来ないですからね笑ポンコツヒーラーってやつですよ。でも待ってくれる人がいるから、みんなを、そして自分自身も守って帰らなきゃって」
目を見開くティアさん
あれ?おかしなこと言ったっけ?
「私は弱いから…。まだあの事件以来ダンジョンに潜ることが怖くて…。ダンジョンの中で、ハルキさんの治療をすぐにはできません。ですが、エミさんから魔力が上がったとお聞きしました。もしかしたら今なら使えるかもしれません。」
「と言うと?」
「ハルキさんはほんとに優しい人です。だから死んで欲しくない!だから、私ができる限り自己治癒の魔法教えます!!!」
「え!?いいんですか!?てかできるんですかね?」
「あなたは色んな苦難を乗り越えたじゃないですか。信じましょ!まずは自分を」
「お願いします!!!!」
彼女は優しく微笑んだ、でもやっぱりなんか寂しそうだ。まるでこれが私に出来る最後のことみたいな感じで。
彼女の心に、手が届きそうで届かない。
無力感
エイトさんの言葉を思い出す。
人を守るためには、それなりの覚悟と、実力が必要なこと。出来もしないことをしようとするなんて、確かにおこがましい。
あの時は冷静じゃなかった。だから今言えるけど、もし、僕が目の前で死んで、ティアさんだけ生き残ってしまったら…。
多分ティアさんは自分を疫病神と責め続けるだろう。
それでは、ティアさんを守ったことにはならない。ただの自己満足だ。
自己犠牲が全て正しいわけじゃないとわかった。
必ず2人とも生き残れる。そんな実力をつけないと、悲しみの連鎖は途切れない。
僕も、ティアさんも生きてこそ助けたということになるんだ。
こうやって、フェルリン祭に向けて闘技大会組の特訓中の間に僕ら2人で自己治癒魔法の特訓をすることになった。
「なんか重いなー!最近この話!!」
「しゃーねじゃん!!!」
「でも君にしては成長したね」
「????」
「まーポンコツなのに変わりないけどね!!」
「こらぁぁぁぁ」