第2章 「お昼の献立は卵炒飯」
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
こうして話はトントン拍子に纏まり、私達は日記のネタ作りも兼ねて、午後から堺銀座通り商店街へ繰り出す事になったんだ。
「家に帰る時間が勿体ないし、2人とも私ん家で食べて行きなよ。お母さんが出掛けているから、私が作るけどね。」
エプロンのリボンを背中で蝶々結びにすると、明花ちゃんは屈託のない笑顔を残してキッチンに消えていったんだ。
土居川小学校では家庭科クラブに入部しているので、明花ちゃんの料理の腕前はかなりの物なの。
5年生からは家庭科の授業でも調理実習が始まるけど、明花ちゃんは良い成績を取れそうだよ。
「サッサと作りたいから…卵炒飯と解き卵のスープで良いよね?」
「うん、良いと思うよ!材料が沢山あるもんね!」
完成させたモザイク画に目をやりながら、私はキッチンにいる明花ちゃんの後ろ姿に応じたんだ。
何せ、卵殻を確保する為に沢山卵を割ったからね。
ちゃんと食べないと罰が当たるよ。
「ん~っ、私は何でもいいや。」
そりゃそうだよね、乃紀ちゃん。
座布団を枕に寝っ転がって、漫画雑誌を読んでいるんだから。
今月掲載の「少女サイキッカーK」の最新話に夢中だからって、返事がすっかり上の空だもん。
多少のゲテモノを出されても、文句は言えないよ。
「あっ、塩が足りない!お母さん、買い置き何処に置いたっけ?仕方ないなぁ…この小袋の塩で間に合わせよう…」
何だか、キッチンから不穏な声が聞こえてくるけど、大丈夫かな?
私にまでゲテモノを出されたら、どうしよう?
漫画やアニメのドジっ子じゃあるまいし、食べたら悶絶する暗黒物質なんて生成していないよね…
「お待たせ、2人とも。少し塩味が薄いかも知れないけど、その時は醤油かソースで調整してね。」
こうして明花ちゃんが運んできたのは、食欲をそそる出来立てホヤホヤの卵炒飯と卵スープだったんだ。
これぞ家庭料理における、夏の日の正統派の昼食だよ。
炒飯や焼きそばを麦茶で食べると、「夏休みの昼下がり」って感じがするよね。
これで夏休み特番のお笑い番組や怪談特集をテレビで流し見すれば、もう完璧じゃない?
素麺やざるそばって手も、あるけどさぁ。
「いっ、頂きます…」
料理中の不穏な発言と本人の張った予防線を真に受けた私は、おっかなびっくりでスプーンを口に運んだんだ。
「あっ…美味しい!美味しいよ、明花ちゃん!」
だからこそ、意外な美味しさに思わず声を上げてしまったんだ。
ご飯は口の中でパラパラと解れるし、卵とネギにもシッカリ味がついている。
どうやら私の不安は杞憂だったみたいだね。
「明花ちゃんは塩加減を気にしてたけど…普通の味だよね、乃紀ちゃん?」
「えっ…?うん!私はこれで丁度良いと思うよ、千里ちゃん!むしろソースをかけてる明花ちゃんの方が、『塩辛くないかな?』って心配になる位。」
私と乃紀ちゃんが見守る前で、明花ちゃんは卓上ソースを自分の炒飯に振りかけ、念入りにかき混ぜていたんだ。
考えてみれば、私と乃紀ちゃんは生まれついての堺っ子だけど、明花ちゃんはお父さんの転勤で東京から引っ越してきた転校生だからね。
私達にとっては丁度良い関西風の薄味でも、明花ちゃんには物足りなく感じられるのかもなぁ…
こうして昼食を終えた私達は銀座通り商店街へ繰り出し、楽しい映画鑑賞の時を過ごしたんだ。