不法侵入も時には必要です
「おおっ!! 懐かしいクエストを……新規の人、頑張れよ」
「巡回の兵士達もいるから注意しなさいね。捕まった時の事はしらないけど」
ルパソは二人を担ぎながら移動してる姿は、人が多くても否応なしに目立つ。けど、プレイヤーは邪魔する事なく、応援の言葉やアドバイスを投げてくれる。
「サンキュー!! 応援ありがとう。孤高の盗賊ルパソをよろしく」
ルパソは自身のアピールするため名前を叫んでるけど、正義の盗賊から孤高の盗賊に変わってるぞ。そこは悩み中なのか……
「商店街に来てしまったな。あの人達は懐かしいと言ってたから、クエストの一つで間違いないみたいだけど……」
ルパソもそう思って行動してるはず。プレイヤー達は巡回中の兵士達にも気を付けろとアドバイスをしてたのに、ルパソを通り過ぎる兵士もいたりする。ルパソ自体、それに気付いてなかったんだけど……
「ここまで来れば大丈夫だろ。痺れさせて悪かったな。もう効果は消えたんじゃないか?」
ルパソがたどり着いたのは宿屋。予め準備をしていたみたいだ。部屋に入るとポイと子供をベッドに下ろし、ドアを閉めた。勿論、その間に俺は不法侵入。これは【求】のゲーム内だから許されるはず……こういうのは時にも必要……のはず。
「俺の名前はルパソ。二人を助けたのは野盗のアジトを教えて欲しいからなんだ。この商店街で【盗む】を何度もしたら野盗団と間違えられてな……宿屋以外立入禁止になってしまったんだよ」
ルパソは黒頭巾を外し、素顔を晒した。男なのは声で分かってたけど、種族はエルフ。耳が長いのが特徴だ。イメージ的に【魔法使い】や【狩人】が選ぶと思ったけど、何故盗賊を選んだ?
「それは当然だろ? 出禁になっただけで済んだのがおかしいぐらいだし。全然正義の盗賊でもないし」
「うぐっ……ストレートに言ってくるNPC……子供だな。これはクエストを発生するために必要な事なんだ。勝手に専用イベが発生しただけなんだけど……」
全くの正論。子供は帽子を外さず、助けた恩人に言葉のナイフを突き刺した。
「言っておくけど、コイツは仲間じゃないから。逃げるのを邪魔してきた奴なんだけど……逃がしてやれよ」
子供はポイが逃げるのを邪魔したのにも関わらず、ルパソから逃がそうとしてやるとは優しいところもあるみたいだ。
「……別の毒は何かないの?」
その気持ちを踏みにじるみたいに、ルパソに毒を要求するのはどうなんだ? 俺が一緒にいる事を知ってるから、何処に行く必要もない事は確かなんだけど……
「毒になるのは嫌だろ!! 何だよお前……で、アンタは野盗のアジトを見つけて、仲間になりたいわけ? 俺は他の奴とは違って……」
他の奴? 他にも盗みを働いてる子供がいるなら、盗賊の専用イベはそっちなのでは? どのタイミングで声を掛けたらいいんだろう……
「仲間になりたいわけじゃないって!! 壊滅させる必要があるんだよ。そうすれば誤解を解いて、ギルドにも入れるようになるし、買い物は出来るようになるんだ」
「誤解ではないと思うんだけど……で、そいつはアンタの仲間なの? わざと俺から物を盗ませるように仕組んだとか……売れない物ばかり持たせてさ」
まぁ……俺に一度ぶつかったわけだし【空気のような存在】は効果がない。怒るわけでもなく、無言で立ち尽くしてるから不気味で仕方ないよな。
「そいつ? ここには俺と君達しか……」
ルパソは後ろを振り返り、俺の方を見ても気付かない。ここが声を掛けるタイミングか……
「います。勝手に入って、スミマセン」
「うおっ!! その怪しいマスクは……兵士達が送り込んだアサシンか!? それとも野盗が子供を助けるために」
新規プレイヤーともあって、ガスマスクで驚いてくれてるのは少し嬉しい感じはあるけど、ちゃんと説明しなければ。
「名前は表示されてないけど、プレイヤーです。子供が言ってたように、持ち物を盗まれて……クエストが発生したんですよ。ちなみに、この女の子も一緒に行動してるわけで……」




