昔話を聞いてくれ
「MAPを確認してみると……名前は表示されてないけど、小さな建物……これが村って事だよな」
【MAP】は大まかな情報で、【原初の森】や【イチバン】は表示されてるけど、【イチバン山道】は何もなし。集家が村なのかは行ってみたいと分からない。【イチバン】から次の街である【カント】までの中間地点っぽいから、間違いないと思うんだけど……
【カント】は街というより、城が表示されてる。城下町ってところか? そこから本格的に始まるというイメージが沸いてくる。その先の【MAP】も表示されてない。クエストの報酬が電子マネーに交換出来そうだし。それは爺さんのクエストを終えてからの話だな。
「それにしても、プレイヤー達が増えてきたな。今は……20時くらいか?」
【イチバン】の中も、外に出てもプレイヤー達が目に入ってくる。仕事終わりの大人とか、学生達も増えて、一番賑やかになる時間かもしれない。こんな時間に帰宅出来たのなんて……今は仕事を辞めて、現在ニート中の俺が文句を言っても仕方がないか。
今回は【イチバン山道】の舗装された道を進んでいく。魔物が出現してもすぐに分かるし、他のプレイヤー達が倒してくれる。林の中を進んでいくのも、【ウルフ(山)】集団に追いかけられるのも面倒臭い。
【空気のような存在】で他プレイヤー達に見られずに進む……というのは今の状態では無理。ポイは歩き疲れたのか、俺の背中をよじ登り、肩車する形になってしまった。
俺の姿が見えない状態だと、ポイが空中に浮きながら移動してる事になる。容姿もそうだけど、これが目立たないのがおかしい。そのせいで注目の的だ。半裸男同様、ポイに近付くプレイヤーが俺とぶつかり、【空気のような存在】が周囲に発動しなくなるし……勿論、そのプレイヤーは逃げ出したけど。
「あの二人って……名前が表示されてないけど、プレイヤーだよな?」
「子連れおお◯み?」
「あれは……オンリーワン職業の人形使いじゃないか?」
「どっちがプレイヤー?」
「明らかに大きい方が人形だろ……あのプレイヤー、子供の姿だなんてセンスあるな」
違った意味で目立ってるぞ。親子じゃないし、オンリーワン職業でも【人形使い】じゃない。しかも、ガスマスクのせいか、俺が人形と勘違いされてるみたいだし……
「邪魔。どっか行け」
話し掛けてくるプレイヤーに対して、俺が声を出さなくても、ポイが追い払ってくれるのも大きい。まぁ……反発するプレイヤーがいなかったから良かったけど。
「はぁ……流石に追いかけてくるプレイヤーはいないか」
興味本位でストーカーみたいについてくるプレイヤーがいるんじゃないか? と思ったけど、そうでもないらしい。先々に行けば、目立った姿のプレイヤーは何人でもいるって事か?
それに加えて、他のプレイヤーとルートが違った事もある。舗装された道は【カント】に続いてるようで、村はその道を外れないと駄目。看板も建てられてない。【MAP】で名前も表示されてないから、気付かないプレイヤーが多いのかもしれない。周囲にそれらしき物も見当たらないし……
「クエストをきちんとクリアした者だけが教えて貰えるのかも……」
まぁ……俺の場合、【MAP】に???の毒があるから、探しているうちに村を見つける可能性もあったかも。ここよりも少し先ぐらいに表示されていたんだけど……
「あそこ。毒の匂い。微かにする」
ポイが指差した場所には何もない……と思ったけど、先に進むと巨大な窪地があり、そこに小さな木の家が五つ。これを村と呼んでいいのか分からないけど、【MAP】にある建物はここなんだろうな。
「毒の臭い? いや……魔物に襲われてるわけじゃなさそうだけど」
村に騒ぎが起きてる様子もないし、外に出ているNPCもいる。墓のような物の前に座り、酒を飲んでいる。酒場にいた爺さんだ。
「ん……お嬢ちゃん? こんな場所まで……っと、アンタもいたのか。今、孫と一緒に飲んでんだ。邪魔しないでくれ。ワシが【カント】に向かわなければ、あんな蛇に」
爺さんは後悔の言葉を呟いてるけど、依頼をしてくれないぞ。と思いきや、文字が表示された。
【孫の仇討ち】……発生条件【イチバン】の酒場でのクエストクリア
【ガナナーガ】の戦闘
発生条件が追加されてる。【ガナナーガ】? 戦闘と書いてるから魔物だよな。こいつを倒す事で強さを証明するわけか。それとも仇か? 『【カント】に向かわなければ……』という情報も手に入ったわけなんだけど、これもクエストで良くないか?
「なんだ? お嬢ちゃんは孫に挨拶してくれるのか? アイツは【カント】の兵士を目指してたんだ」
ポイは肩車から下りて、墓の匂いを嗅いでいる。ここから毒の匂いが……毒持ちの魔物に爺さんの孫はやられた……というか、名前が【ガナガナ蛇】に似てないか? 蛇だし、毒持ちの可能性も……???の毒は【ガナナーガ】だろ。
「行く」
爺さんは孫との昔話を語ろうとしてるのに、ポイは墓から離れてしまった。臭いだけで、毒がない事が分かったのかも。爺さんは何とも言えない顔をして、墓の方へ向き直した。
爺さんの姿がいたたまれず……よし!! 【ガナナーガ】を探しに行こう。条件を満たしてから、休憩を取る事に決めた。




