第6話 金糸雀 西菜 その1
私はフィクションが好き。
アニメとか漫画とか小説とか映画とかドラマとかゲームとか全部好き。
だから魔法瓶少女になれるとミリューに言われて即座に受けた。
それから8ヶ月、ただただ苦しくて怪我も何度も負って、
何度も魔法少女を辞めようと思った。
でもその度に紀子ちゃん、撫子さん、若葉さんの必死に、がむしゃらに、泣きわめきながら進んでいく姿に支えられて私は魔法少女のままでいた。
フィクションは時にバッドエンドもある、現実は特にバッドエンドが多い。
そう、あくまで今は現実で・・・だから、だからこそハッピーエンドに・・・
「んんぅ・・・」
微睡みの中、何となく睡眠を貪っているのだと理解した、このままでいれば夢の続きをみれる気がする。
空を飛んでいる、電柱を蹴って手を羽ばたかせ鳥のように滑空していって、飛んでいく。
そんな夢を、見た。それが夢だと気付き、もう一度その夢に浸りたいと開きかけた瞼を閉じ・・・
現実を思い出す。
まずい!
慌てながら自身の現場を確かめ
「ベット・・・?」
道理で半分寝ながらもすやすやと心地よく微睡んでいたのだと理解した。
木製のベットに私は寝かされていたらしい、ふかふかとはいえないものの、寝るに十分過ぎるほどの布団が敷かれていてた。
周囲を見渡すとアンティーク調の家具が細々と置かれ、しかし所々違和感を感じる意匠が施されている。私の知識だと仏壇のような、でもそれとも違う不可思議な意匠が所々部屋の壁に飾られていた。
ともあれ、気付けばこんな部屋のベットに寝かされていた事実に愕然として・・・しかし我ながらそれほど動揺はしていないことにホッとする。
冷静でいるとまでは思わない、ただ少なくとも現場をある程度は理解は出来ている、はず。
とりあえず、まずは・・・
まずは・・・
結局、混乱している事に気付く。
どうしたらいいのか、何をするべきなのか全く思い浮かばずキョロキョロと周囲を見渡すばかりで焦りが募っていく。
冷静になろうと数分ぐらい頭の中で格闘しているとガチャと音が鳴り慌てて鳴った方に顔を向けた。どうして今まで気付かなかったのだろう、部屋には扉が当然ながら存在していた。真っ先に気づくべきだったのに。
扉はゆっくりと開いていく、妙にゆったりと開くのでまだ混乱が続いていて理解が追い付いていないのかと錯覚した。
・・・いや、明らかに扉が開くのが遅い、それどころかもう開いている本人が見えてしかるべきなのに一向に姿が見えない。
ま、まさか幽霊の仕業・・・と、期待半分怖さ半分で見守っていると
「・・・・ハァ、ハァ・・・お、重い・・・りゅん・・・」
何だか聞き覚えのある声と語尾。
もしかして・・・
「ミリュー!?」
思わず大声でが出た。
「西菜りゅん!!良かった起きたりゅんね!」