第3話 金糸雀 西菜とミリュー
「やめて!」
叫んだことに全く気付かず、私は体を起こした。
「・・・は・・っ・・・・」
どれくらいの時間が経ったのか分からない。
漸く、絞り出すように出した声が
「夢なんて、大っ嫌い!」
だった。
どれくらいの時間が経ったのだろう、目覚めてから数時間は経ったはず。
ようやく現実に思いを馳せて周囲を見渡す。
「・・・え?」
どれだけ、たかがあの夢に固執してたの、私?
これにずっと気づいてなかったの・・・
愕然としながら、見渡す先に見えたその建造物に声を失った。
周囲そのものはまばらに木々が繁る草原だったけど・・彼方には、正確に八方をまるで雲梯が掛かった雲のように天まで届く程の建築物が囲んでいた。
見渡す限り僅かな木々以外は地平線までその建造物以外は見当たらず、ここが日本とは思えない。
「何?・・・どうなってるの?」
今まで、数えきれないほど現実とは思えない事に遭遇してきた。異なる世界から来た「妖精」それとも違う別世界から来た「侵略者」。
だからこそ分かる。ここは、異世界だと。
あの時、私は、たぶん私達は飛ばされたのだ、何処とも知れない異世界に。
「・・・・」
何も浮かばない。どうしよう・・・
私はいつもこう、中途半端に理解して、でも解決は見出だせない。
突然起きた出来事に嘆き、自身の無力と、孤独感から自身を見失いかけた寸前、
「見つけたりゅん----!」
全力で駆けよってくるミリューの叫び声と姿が見えた。それと同時に涙が溢れてきて・・・
「ミリュー!良かった!」
ポロポロと涙を落としながら抱き止めて、私はそのまま膝を崩して危うくミリューを潰しかけそうになった。
「やっぱり、ここは異世界であってるんですか?」
「断言は出来ないりゅん、でも少なくても西菜達の地球ではないのは確かりゅん」
ミリューと再会して落ち着いた私は早速事態の確認に入った、私の確信はただの妄想じゃないのか。
むしろ妄想であって欲しかったのが本心。
「どういうことなんですか?」
「これは何の根拠も証拠もないりゅん、でも」
そう言って口をつぐんで黙ったまま。
私はただ黙ってその続きを待っていた、それしか、私には出来なかった。
「僕たち妖精が、西菜達の世界とは違う異世界の存在なのは知ってりゅん?」
どれくらいの時間が経ったのかミリューが口を開いて問いかけてきた。
「・・・うん、紀子ちゃんから聞いた」
「僕たちが[魔物]の奴隷として他の世界へ侵略するための兵士になってることもりゅん?」
「うん・・・」
知っているというか聞いた、ミリュー達の種族の悲惨な現状。彼女たちは元々は自分達から見ればいわゆる異世界の種族で、突如現れた[魔王]に支配され、一部は異世界を侵略するための兵士にされている。
私も詳しくはないんだけれど異世界というものは無数に存在していて、とにかく[魔王]は全ての異世界を支配したいらしいの。
ともあれ、異世界、というものが存在しているのは確か。
「僕は[魔王]の侵略で[魔物]に変えられたことがあったりゅん」
唐突に、ミリューが告白した。
「えぇ!?」
「・・・黙っていてごめんりゅん。
でも何でこんな話をしたのか」
彼女は口をずっとつぐんで。
しばらくして思いの丈を語ってくれた。