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異世界魔法少女物語  作者: サッキー
第1章 無力な力で
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終わりからの物語(ストーリー)



私達はキュリアシーズ、世界から魔法を行使する力を与えられた世界を守る魔法少女。

この物語(ストーリー)は偶然と必然と、運命と黎明。

それらが紡がれた物語。

私達(キュリアシーズ)の始まりで、始まり。








そう、最初は楽しかったんだ。

悪い侵略者を[浄化]して

そうやって[魔物]を本来の姿に戻して。

・・・たまに[浄化]出来ずにどうしても倒さなきゃいけない時もあった。

嫌だったし悲しかったし悔しかった。

私は今でも罪悪感に苛まれてる、たぶん一生抱えていくと思う。でもまさか、一生どころじゃない事が待ち受けているとはこの時は思っていなかった。



それが長く、長く続く私逹の異世界魔法少女物語(いせかいまほうしょうじょストーリー)、最初の始まりは。




私が魔法少女になってから八ヶ月後だった。












見上げた空は薄く暗雲が覆い太陽の光を遮断している、そのせいで薄ら寒くまるで寒空だ。今は真夏だというのに。


「っていうか寒っ・・・」

剥き出しの肩を抱えて日南(ひな)ちゃんが呟く。


「どうなってるの・・・?」

「分からない・・・」

散々私達が[浄化]してきたからだろうか、[浄化]すら効かない強化された[魔物]が現れて大ピンチ!

圧倒的な力に私達だけでなく、変身さえ出来れば圧倒的な力を持っていた西菜ちゃんですら大苦戦、変身解除寸前にまで追い込まれたけれどミリューの思いが生んだクリスタルティアラの力でパワーアップ!

強化された[魔物]を浄化した直後だった。

急激に空模様が変化し始め真っ青で雲一つなかったのに急に暗い雲が覆い始めたのだ。

私達が不安に駆られた時、[奴]は現れた。

空間をねっとりと侵すようにじめじめと侵食して、

「ふひは、ふふふ、ぐひふふふは・・・」


気付けば闇に等しいほど暗く空を覆い、地上を真闇のベールが支配している。

肺から吐き出したいような吐き気と、

腸が捻れるような痛みが襲ってきて、

まるで焼けるような頭痛が襲ってきて、

ただ、ただ苦しい、逃れようとしても逃れられない。


「なんですかあれ・・・」

喉の奥から絞り出すような声で日南ちゃんが呟く。

私はそれを聞きながら身体が締め付けられるかのような苦痛を感じて。でも必死に我慢してた。

「・・・そんな、まだ復活しないはずなのに何でりゅん・・・?」

その隣でなかば呆然と呟きながらミリューは身体を震わせていた。


ミリュー・・・彼女が私達、魔法少女キュリアシーズの中心、私達を[覚醒]させて今に至るんだ。

元々は私達とは違う世界、いわゆる異世界の生き物なんだけど、ある日[魔物]に襲われてほとんどの者が奴隷にされたらしい。他の次元を支配するための駒として。

ミリュー逹の世界は聞いた限りでは、私達と見た目が違う(人間が二足歩行の小動物に変わっている)のと電力の代わりに魔力を使っている以外はほとんど変わらない。

ただし文化に関してはまるで別物で、さらにミリューの世界をでは一つの伝説があったの。


そう、キュリアシーズと呼ばれる魔法少女。

どんな存在も浄化し。世界を救う者。

何万年も前から伝わる伝説の存在。

それに私は選ばれたの。

もちろん私だけじゃない。

私も含めて四人、私達の世界で最初に選ばれた魔法少女が私、黒神(くろかみ) 紀子(のりこ)

そして二人目が撫子(なでしこ) 日南(ひな)

次に金糸雀(かなりあ) 西菜(せいな)

最後に若菜(わかな) (あずま)

何で私達が選ばれたのか、本当に偶然だったわ・・・

でもその話は今は関係ないしどうでもいい。




と、思っていた。

でもミリューすら知らないキュリアシーズの秘密があるとはこの時は思ってもいなかったの。







「「長かった、そう、長かった」」


奇妙なエコーが響く、上空を覆い地上を闇のベールで支配する存在が歓喜の声を挙げていた。


「「我は魔王セヴェク!」」


暗闇の雲が徐々に濃く、暗く、圧縮され、巨大な異形へとその形を変えていく。


その変異をただ震えて見ているしかない自分に不甲斐なさを感じながら、どうしても体が動かない。

しょせん、自分は中学二年生でしかないんだと思い知らされる・・・

魔法少女キュリアシーズとしてめちゃくちゃ頑張ったけど、頑張ったけど、頑張ったんだけど、頑張ったの・・・。


「だぁから!何だってんのよぉ!」

私が絶望してる中、東さんが叫んで睨んでくる。

「ふざけるんじゃないってのよ、アレがなんなのか知らないけど!」

左手を私に、右手を日南ちゃんの肩にガシッと載せて

「やれや!やんなきゃ死ぬんだろ?」

そんな勇ましい東さんの言葉に私は別の事を考えていた・・・


(・・・震えてる・・・)

私の右肩を掴んでいた東さんの手は震えていた、怖くて、怖くて、泣きそうだったのに。




「「素晴らしい、想定以上だ・・・」」

その声色は僅かに尊敬の念を帯びていて、なのに同時に侮蔑も込められて発せられる。

それを発するモノは自身がただ一色の闇色でありながら、真闇のベールに包まれているのにハッキリとその姿を顕在させていた。


本来頭が有るべき場所には飛び出た角があり、根本の両端に鼻らしきものが生えていた。胴体は逞しいものの両椀から足が延びていて、足の代わりなのか腕がついている。

そして角に、足に、腕に口がありそれらが言葉を紡いでいた。

奇妙なエコーはそれらがほとんど同時に言葉を発していたからだと気づく。



あまりの異形さに全員が絶句した。直前まで震えながらも勇ましく皆を鼓舞していた東でさえ表情が凍りつき、言葉が出ない。



「「んん?・・・なるほど、足りないか」」



それぞれの口から発せられる言葉はまるで呪詛のように聞き手の精神を蝕み精神を磨耗させ砕いていく。

「い、いやぁあ、ああぁ」

凍りついていた精神がひび割れる寸前に誰かの悲鳴が上がった。


「「終わらせようではないか、この未来を」」


その言葉に、彼女達の意識は遠のく。


・・・完全に意識が失くなる前に、紀子にだけは




「泣かないで」








聞いたこともない声を、でも懐かしい声が聴こえた。












妙に生臭いというか草っぽい匂いがする・・・あと土の匂い。

あとたまに堅いものに当たる、痛い、寝てたいのに邪魔だううーん・・・目、開けたくない・・・左肩痛い


んんん・・・


開けたくもなかったが、このまま放っておくのも良くない気がして嫌々ながら目を開けた。

雲ひとつ無い青天だった。



(じゃあこのまま寝ようかな・・・・・・・・)






ん!?

「え、いや待って!」

私は慌てて起きて周囲を見回す。

「!?西菜さん!?東さん!?日南ちゃん!?ミリュー!!

返事はない。辺りを見渡すと・・・草原だ、たぶん雑草?が生い茂る草原で辺りに人は見当たらない。

ど、どうなってるの?

(訳がわからない、ちょっとまって混乱してる整理整理、と、とりあえずこんな隠れられもしない場所は不味いわよね、よし私冷静!)

よくよく考えなくても全然冷静じゃなかったけども運が良かったんだろう、状況を整理するまでは何事も起こらなかった。

魔法少女への変身はまだそのままで特に問題は為さそう、というか・・・妙に力が溢れている?クリスタルティアラの力という感じでもない・・・

「どういうことなんだろう・・・」

何もかもが分からない、魔王セヴェクの力なのだろうか?状況的にそうとしか考えられない。

直前の言葉はなんだったっけ?未来を終らせよう?




「意味が分からない・・・ん、あれ?」

その後に何か誰かの声が聴こえたような気がするが思い出せない。大事な意味があったはずなのに。

「んんんんん!」

バシッと頬を叩いて気持ちを切り替える、今は皆のことが優先!

最初は混乱していたけれど見当たらない皆を探さなくちゃ!



魔法少女としての身体能力を活かして思った以上に広かった草原を突破し、森林を抜け、また草原に辟易し、

「広くなーい?!」

魔法少女に変身すると普通の人間の100倍以上の身体能力を発揮する、単純な足の早さだけでも凄まじく地球上の生物では敵うものがない。なのにどこまでも草原か森林だ。すでに一時間は経っている。

「ここ、どこなの・・・」

流石に一時間も走り回って疲れ・・・

「・・・あれ、え?」

おかしい、魔法少女への変身はマナに依存している。

マナとは魔法の源でいわゆるエネルギーだ、ミリューの話では地球のマナは低い方で節約しても変身時間は30分だったはず。

そういえば妙に力が溢れてたことにもっと疑問を持つべきだった。

「ここ・・・地球、じゃ、ない?」

思い至るべきだった、そもそもミリューも魔王たちも別の世界のものたちだ。

ぞわっとした。

私はどこかで地球ならどこに飛ばされてもどうにかなると思っていた、違う、ここは異世界だ!

広さも分からない、そもそも地理も分からない、日本ですらよく分かってないけど・・・


「一人・・っき、り?」

呆然と辺りを見渡して、地平線まで続く草原に愕然とした。

そういえばこれまで植物以外の生命を見かけていない・・・

「あ、あ、あぁ」

気づきなくなかった事実に、足から力が抜けていく。




「泣かないで」




「っ!?」

聞き覚えがある、誰?!



「泣かないで」



聞き覚えがあるのに誰だか分からない、でも何故かホッとして気持ちが晴れていく・・・

「きゃぁぁあぁああ!!」

「っえ?!」

突然の悲鳴に辺りを見渡しても草原が地平線まで続いているだけ。どういうことなのか幻聴なのかと思ったけども。

悲鳴に指向性がある!確実に正面から聞こえる!

私は全力で走り、同時に魔法を発動させる。

[氷連(アイスロード)]!やぁあああああ!」


[氷連(アイスロード)

自分の足にスケートのような氷の靴を生み出して履かせて、進む先を凍りつかせ続けてその道を滑る魔法。

魔法少女の身体能力と魔法の相乗効果でその速度はマッハを越える。

その際の衝撃とかは凍らせた空気で頑張って受け止めるという脳筋魔法である。そのせいでソニックブームより遥かに周囲に被害をもたらしている。

地球においては滅多に使わない上に距離もほんの短距離な為にそれほど問題にはならなかった。



「やぁあああああ!」

物凄い勢いで凍らせた瞬間に砕けた空気を撒き散らしながら(氷になった時点で彼女には害にはならない)悲鳴が聴こえた方向へ走っていく。



「見えたっ」



いつまでも続くかと思われた草原の中に柵が見え、その奥に木製の家屋が見えた、かなりの大きさで二階建てだ。その周囲を人影が囲んでいた。遠くからでも人影は異様で普通とは思えない。

その時に紀子は気づく。

地球で使ったときには気づかなかったことだ。

「ど、どうやって止まればいいの、ののの!!」


慌ててブレーキを掛けるもそれすら滑る、魔法少女の身体能力ゆえのスピードが普通の止め方では通じなく、挙げ句に脳筋なソニックブームの防ぎ方のせいで周囲に氷の破片がばら蒔かれ、ようやく止まったときには柵を囲んでいた人影は破片に切り裂かれ、家屋はズタボロであった。


「・・・・・え?・・・」

あまりの被害に紀子は絶句した。



めっちゃ直してます、すでに最初とは別物になってます

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