変化 「事の顛末、終幕」【挿絵あり】
へん−か 「いいもわるいもかわること。騒動の顛末、そして終幕」
「静流さん! なんで挨拶もなしに黙って行っちゃったんですか? わたしを捨てるなんてヒドイっ!」
ルカが何だかとても微妙な言い回しで、涙目でシズルに詰め寄っている。
そのあまりの勢いに、さしものシズルもたじたじになって返答に窮している。
シズルたちが転移で城から邸へ帰ってから三日後、つい先日辞したばかりの城のミゼンから、フロトポロスへ向かうという先触れが入った。
すわ、何事かあったのかと即座に了承の旨の返事をし、邸の転移の間で待ち構えていた一同の前に現れたのは、涙目でぷるぷる震えているルカと、気まずそうな顔を明後日の方向に向けているデュオだった。
ルカは転移が完了するとすぐさま転移陣を飛び出して、その場にいたシズルに詰め寄って冒頭の発言となったのだった。
「いや、捨てるもなにもそんなつもりでは。とりあえずごめん」
「やっぱりわたしのこと嫌いだったんですね」
「そんなことないよ。わあい、困ったなこれはどうしよう」
話の内容だけ聞けばまるで痴話喧嘩だった。
「で、何故お前がここにいる」
一緒にこちら側に連れてこられた、同じ故郷を持つふたりの娘の痴話喧嘩を眺めながら、ジークハルトがごく普通にデュオに話しかけた。
泰然自若に構え冷静に落ち着き払って、ただ疑問に思ったことをそのまま口にしただけという、嫌悪も何も感じさせない無関心に近い態度が、かえってジークハルトのデュオに対する怒りの大きさを示すようだった。
「そんなに嫌わないでくださいよ辺境伯、しっかり反省しましたから。それに今回はちゃんと先触れを出したでしょう?」
「ミゼン殿がな」
「俺の名を出したら門前払いを喰らうじゃないですか」
「自覚はあるんだな」
ジークハルトとは対照的に、感情を隠しきれないシルベスタが、吐き捨てるように言った。デュオは苦笑してこの度の転移の経緯を説明した。
「そりゃあほんの数日前の出来事ですからね。今回はルカに泣きつかれた陛下が困り果てて、それでミゼンが俺に丸投げしたんですよ。それに王妃様からの預かりものもありましたしね」
「姉上の?」
「なんでも、忘れ物だそうですよ、シズルの」
デュオはそういうと、肩を竦めてシズルとルカに視線を向けた。
「ほんっとうにごめんね瑠花ちゃん。実は瑠花ちゃんのこと、すっかり忘れてたんだ」
「静流さん?!」
シズルはルカに正直に謝った。
ジークハルトやシルベスタの前ではもういい、とは言ったもののデュオとの一件で、あの時はとにかく早く辺境へ帰りたくて仕方がなかったのだ。
「シズルワルクナイ」
信じられない、といった表情でさらにシズルに詰め寄るルカに、ザカリが即座にそう告げて、いつものようにシズルに後ろから抱きついた。
「・・・使い魔だからって、ちょっと馴れ馴れしいんじゃないの? ザカリ」
「シズルザカリ、イッショ。ルカチガウ」
なぜかシズルを取り合うような状態で睨み合ってる、ルカとザカリを前にテッセラが面白そうに言った。
「うわあ、女の子には大人気だねぇシズ、いひゃい!」
バシレウス招待の夕餉からひとり逃げ出した裏切り者が、また懲りずに口から災いを吐き出したのでシズルはその口を抓って封じた。
「君は本当に懲りる、ということを知らないね。そういえばテッセラ君、お城ではよくもひとりで逃げたね? 今度あんなことをしたら、ザカリに絶交させるからね」
「ええっ?! なにそれ」
「うわぁ、大人げないぞシズル」
「全くだ。大人げ無い奴だな」
呆れた声のシルベスタとジークハルトを、ぎっと睨んでシズルが叫んだ。
「黙らっしゃい! あの場で私が、どれだけ心を抉られたと思ってるんですか! へらへらしてちっとも助けてくれなかった人たちが何をいってるんですっ。それにジークハルト様、お姉さまのあれは血筋なんですか? あんなにおっとりとした感じなのに、なんという隠れ腹黒で凶悪な天然ぶり! 詐欺ですよあんなの」
「なんてことを言うんだ、お前はっ! 姉上は俺とは似ても似つかない嫋やかな貴婦人だ。王家にふさわしい気品もあり心も広く慈愛にあふれた素晴らしい女性だぞ。お前の目は節穴か!」
「魔物で」
すからと言いかけたシズルに、ジークハルトが拳を握りしめ、ぐっと構えた。
慌てて口を閉じ、拳骨を回避したシズルだったが、何のてらいもなくオルタンシアを褒め称え、自慢げに答えるジークハルトを見て一瞬悩んだ末、自分の中にあるジークハルトの項目に「シスコン」と新たに付け加えた。
「そして何故おこさま魔導士がここに?」
シズルがようやくデュオの存在を認識した。
「それは俺のことかよ」
「おこさまが嫌ならひよこ、ぴーちゃんとでも呼びましょうか?」
「もう好きに呼んでくれ。悪かったよシズル、本当にすまなかった」
「いいですよもう。怒るのはお腹が空くので好きじゃないし、そもそも面倒くさいことは嫌いです」
デュオは意外そうな顔をして黙りこんだ。
もっと詰られ罵倒され怒りをぶつけられ、殴られるか骨の一本でも折られるかもしれないと覚悟していたのだ。
あんな、心を抉るような酷い仕打ちをしたというのに、なんて事はないようにさらりと流されデュオは拍子抜けしてしまった。
と同時に、今眼鏡越しでもわかる、大きく広がる絹布のような魔物の魔素は、薄く緋色が混ざった銀色で、ゆらゆら揺れながら光を放っている。しかしそれは中心になるに従って色濃くなりやがて何もかも呑み込む闇黒になる。しかしその闇が時折雷光のように鋭く眩しく光を放つのだ。
初めて出会った時と変わらない美しくも恐ろしい、この世界の人間が持つ魔素とは異なる魔物の混ざったシズルの本質を、デュオはぼんやり見つめていた。
「お前はいつもそれだな」
心底面倒くさそうにいうシズルに、ジークハルトは呆れた声を出した。
「いいじゃないですか、雇用面接の時に争い事は好まない、ってお話ししたでしょう?」
無抵抗主義じゃないとも言っていたが、ジークハルトは黙っておくことにした。
「そうだシズル、忘れ物を預かってきたんだ」
しばらくぼんやりしていたデュオが、突然思い出したように言った。
「? 忘れ物、ですか? 特に何も忘れて帰ったものは無いですが」
「王妃様がこれはお前の忘れ物だって言ってたぞ」
デュオはそう言って、ベルトに付けた小物入れからごそごそ何かを取り出して圧縮を解除した。
そこに現れた四角い箱の形状を見て、シズルがぐっと眉間に皺を寄せた。
「それ、ぴーちゃんに差し上げますよ」
「・・・俺の呼び名はそれに固定されたんだな」
「凄いですよねー。元は何だったか知りませんけど、痴漢からひとでなしになって、そのあとエロ魔導士からひよこですよ? 変態の回数もここまでいくと、蛙や蝶々なんか目じゃないですよね。次に何に変態するのか、ちょっと楽しみになってきました」
若干棒読みだが、シズルはデュオのことを初めて凄いと褒め・・・てない。全然褒めてないし虫けら扱いだが、ひとでなしやエロ魔導士の称号よりはマシかもしれない。
「そりゃどうも」
デュオは抗議するのを諦めた。
「ねぇ、それ何が入ってるの? 王妃様からでしょ?」
「俺も中身は知らねぇよ。で、実際のところこれは何なんだ?」
テッセラに興味津々に尋ねられて、我儘で自分勝手な魔導士が、シズルの許可なく箱の蓋を開けた。
「ぎゃあ! なんてことをしやがるんですかっぴーちゃん、このおこさま魔導士!」
デュオがさっと箱から取り出したのは、あの心を抉られた夕餉の時に、オルタンシアによって着せられたあのドレスだった。
ひらり、とドレスに添えられていたカードが転移の間の床に落ちた。
それを素早く拾い上げたテッセラが、頼みもしないのにその場で読み上げた。
「えっと、『これはあなたに差し上げます。是非素敵な殿方を見つけてください。補填は自分でやってね』だって。『補填』ってなに?」
シズルは初めて床に膝を突いて、敗北感を噛み締めた。
敵わない。そして天然とは恐ろしい。
若干、いやかなり確信犯の匂いもするが、こちらでもあちらでも、一番敵わないのは『お母さん』だとシズルは改めて痛感した。
「じゃあ静流さんわたし、戻りますね」
打ちのめされたシズルが漸く復活した後、直接別れの挨拶ができてすっきりしたのか、ルカが晴れやかな顔で言った。
今回の別れは前回のような決別ではない、ことが済んでお互いが自分の住処へ帰る、日常によくある別れだ。
「うん。またね。あと、これ」
そういって、シズルはルカに白い生地に魔法の銀糸の刺繍の入った、小さな
匂袋を渡した。
邸に帰ってからふと思いつき、なるべく早めに渡そうと作っておいた特性の品だ。中には花びらや香粉ではなく、刺繍と同じ銀糸で束ねたザカリの毛が入っている。
「御守り。これを持ってれば、今度また瑠花ちゃんに何かあったらすぐ駆けつけられるからね」
そういってシズルはにっこり笑ったあと、くるりとデュオを振り向いて念を押した。
「ちゃんとお城まで連れ帰ってくださいよ」
「約束する」
真面目な顔でそう答えたデュオは、少し考え込んだあとシズルを呼んだ。
「シズル」
名前を呼ばれて思わず身構えたシズルだったが、デュオはその菫色の瞳で暫くそのまま視線を寄越していたが、
「またな」
そういうと今度は何もせずに帰城のための呪文を唱えた後、笑顔を残しルカと共にふっと消えた。
ふたりを見送った後、ジークハルトが溜息と共に正直な感想を述べた。
「やれやれ、もう魔導士は懲り懲りだ」
「全くだ」
「えっと、ぼくも魔導士なんだけど」
溜息と共にぼやく、ジークハルトとシルベスタのふたりに対してテッセラが口を尖らせると、それに応えて、すかさずシズルとザカリがこう言った。
「テッセラ君は、」
「イイマドウシ」
「そうそれ!」
魔物たちが顔を見合わせて嬉しそうに笑った。
なんだよそれ、と言いながら人間たちも魔物と一緒に声をあげて笑った。
あれから城内は蜂の巣を突ついたような騒ぎだった。
物病みで長く姿が見えなかったエデル国国王バシレウスが、寛解したといきなり現れ公務に復帰すると宣言した。
と同時に名代を務めていた王太子ルーデリックが、バシレウスに『禁足』を命じられ、王城の離宮の奥の間の一室で、事実上の軟禁状態になってしまった。
隠されていたルーデリックと魔導士たちの、召喚術に関することの大まかな流れも明らかになり、公にされた異世界人の処遇についても、あちこちで議論がなされている。
城内で秘匿扱いを受けていた異世界人の只人ルカは、王妃オルタンシアの預かりとなり改めてこの世界のことを学ぶこととなった。そしてその対価として異世界の様々な話を『予言の魔女』に聴かせているという。
魔導士同士の喧嘩で損傷を受けた転移の間のひとつは、バシレウスと一緒に姿を現した、城内ではあまりその姿を見ることのない、魔導士の最高位である『0』によって、瞬きするほどの間に破壊の爪痕もわからないほど完璧な復旧がなされ、その強い魔力に『魔導士0』は、周囲から再び畏敬の念を注がれることとなった。その後ミゼンは自分の庵に至る庭の入り口の、鳥居のような高さのある扉のない門の前に、シズルに話していた通り、『侵入注意』の高札を建てた。
ただし、それは高札というにはあまりにも低すぎて、雑草だらけの雑木林の中に埋もれてしまい、実際に注意喚起の役目を果たしているのかどうかはわからない。
人は変化をする生き物だ。
まず体が変化する。嬰児から幼児へ子供へ大人へ老人へ。
心も同じように変化するのだが、何かの理由で途中でつっかえて止まってしまう人もいる。
ずっと止まったままの人もいれば、そのつっかえた『何か』の正体に気づき、それを乗り越え、あるいは破壊してまた変化の道を進んでいく人もいる。
『番号持ち』と呼ばれる魔導士たちにも、それぞれに変化があったようだ。
『五番目』ペンテは相変わらず、人目を避けるように城内をこそこそ移動していたが、出没する場所を温室から調理場へ変えた。相変わらず盗み食いをしてはいたが、その時は得意な『眩惑』を遠慮なく使って自分が嫌いな貴族になりすまし、堂々と自分の好物を作らせてそれを腹の中に収めるようになった。調理場に現れる貴族を周囲の者は訝ったが、しかし果たしてそれがなりすましなのか、本物なのかは誰にも判別できなかった。
ペンテは漸く、自由で自分勝手な魔導士の仲間入りを果たしていた。
転移の間でシズルに介抱され脅しつけられ、気を失っていた『三番目』トリアは、あの後目覚めたもののずっとぼんやり惚けたままだった。周囲の取り巻きの魔導士たちがどんな甘言を耳元で囁いても、トリアの好きな美しいもので周囲を埋められても、全く興味を示さなくなってしまった。それはデュオに対しても同じで、妄執に近かった恋慕の情も、まるでどこかに置き忘れてしまったかのように、デュオを見かけてもちらりと一瞥するだけで、以前のように視線で追うようなこともなくなってしまった。
ただ、鮮やかな緋衣草の花を見ては、時々溜息を吐くようになった。
『二番目』デュオは、ルカをオルタンシアに無事送り届けた後またふらりと城から姿を消してしまった。トリアの防御魔法の銀糸刺繍の施されたドレスを激しく損傷させたことでトリアを無理矢理襲ったと勘違いされ、城を出る直前、トリアの取り巻きの魔導士数十人に一度に囲まれ闇討ちされたが、例の『反作用の盾』でことごとく全てを蹴散らして、魔導士同士の『喧嘩』の連勝記録を更新した。
城を出た今でも、時折ミゼンとは魔導通信は交わしているようで、今度はセラスではない、自分が『心から望むもの』を追いかけることにしたようだ。
そんな中、ただひとり『一番目』ヘイスだけは濃紺の特注ローブをはためかせ、精力的に新しい足場固めに奔走しているようだった。
そして『四番目』テッセラは、破壊に関するような魔術の全てを封印し、魔導士の誰もが喉から手が出るほど欲しがる番号を返上しようとした。が、生家の脅しにも近い懇願にあい名前の返上だけは思い留まったものの、辺境の地に行ったまま二度と城に戻ることはなかった。
もうひとりの異世界人は。
シズルは、正式にフロトポロス領民となったほかは、あいもかわらず同僚と一緒に領主の護衛官を勤めながら、魔物のザカリと一緒に、この異世界で得た新しい居場所の辺境のお邸で、今までと変わらない賑やかで平和な生活を送っている。
・・・はず、多分。
魔導士は甘くない・了
_____________「砂糖のかけらは甘くない」終幕
《あとがき》
「砂糖のかけらは甘くない」(聖女召喚騒動) はこれにて終幕。この後のお話はまた、近いうちにお目にかかれたらと思っています。
拙作を最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。
【このお話の主な登場人物】
シズル
本名 守山静流 二十四歳。異世界からの招聘者。肩までの黒髪をひとつ結びにしている。元は黒い目だったが、ザカリの『かけら』を取り込み、半分魔物の『混ざりもの』となってからはザカリと同じ緋い目になった。スレンダーといえば聞こえはいいが凹凸のない貧相な体型。毒舌で体術が得意な有言実行型の漢らしい女性。魔力のない只人だったが魔術を渇望するあまり、虚仮の一念で『異能』を開眼。現在着々とチート街道を爆進中。
ジークハルト・アフティ・フロトポロス
苦労人の辺境伯。二十七歳。貴族には珍しい黒髪つんつんの短髪。碧い目。上背があり、がっしりしていて拳骨と鷲掴みが得意技(シズル限定)。魔法の国の住人なのでちゃんと魔術も使えるが剣術馬鹿。脳筋に見せかけて策士。四人姉弟の三男坊。歳の離れた姉がエデル国王妃。シスコン。
シルベスタ・エシ・メントル
ジークハルトの側近兼護衛騎士。乳姉妹でもある。二十七歳。金髪緑眼ですらりとしていて、物腰柔らかな男前。元々ジークハルトに振り回され気味だったが、シズルやザカリと出会ってさらに振り回され、心配性に拍車がかかりおかん属性になる。『ライク』が『ラブ』になるかどうかはわからない。
ザカリ
魔狼。狼の魔物だが獅子ほどの大きさがある。でもまだ子供。辺境のエイシカ村にあるアウレーの森で、虐待されていたところをジークハルトたちに保護される。シズルに懐き、追いかけて伯爵邸に来た時、当時まだ只人だったシズルに代わって自らの魔力を使って使い魔契約を結ぶ。人型に変身でき、その時の姿はシズルと同じ緋い目、背中までのたてがみのような銀髪を持つ美青年になる。元裸族。今はテッセラの『装着の組紐』のお陰できちんと着衣している。ザカリの意味は『砂糖』。
(邸の人々)
アディス・ナヴァルホス
ナイスミドルの警備兵兵団長。シズルを餌付けし頭を撫でるのが趣味。
アフセン老医伯
白髪白髭の好々爺。伯爵位を持つ魔法医。
コニス
新米兵士。邸に来たばかりのシズルに絡んで肩を外された人。
領兵の皆さん
シズルの強さを気に入って、時々手合わせを強請ったりする、脳筋集団。
魔導士
伯爵領のお抱え魔導士のひとり。雑魚。シズルに絡んで顔面に正拳突きを食らった上にラリアットをかまされ、さらに踏みつけられた人。
女中たち
いつも恋愛妄想を爆発させている、『萌え』が大好きな姦しい乙女たち。
ガストロ
料理人。この人も密かにシズルに餌付けしている。
(魔導士たち「番号持ち」)
ミゼン
0。海の青の左目と森の緑の右目を持つ、銀色の長髪の痩躯の魔導士。年齢不詳。『在るもので無いもの』『始まりで終わり』という太古に存在した『原初の0』の姿を模倣した魔導士ミゼンを代々受け継ぐもの。『0』になるべく選ばれたものは、ある日突然魔導士ミゼンの姿になる。ミゼンになると名前だけでなく、以前の容姿も捨てることになるので、どの時代のミゼンも同じ姿をしている。いつも影のように王の側に控えている。物静かな賢人に見えるが意外とお茶目。
ヘイス
一番目。城の一般魔導士を束ねる、濃紺の特注ローブを纏う策略家。公爵家の後ろ盾で一番目の名を獲得したらしい。ルーデリックに甘言を用いて聖女召喚を企んだ首謀者。
デュオ
二番目。番号持ち唯一の平民魔導士。灰色の髪をおしゃれのためではなく、単に不精の長髪でそれを三つ編みにしている。人の持つ魔素の揺らぎが見える特別な菫色の目を持つ。見えすぎるので普段はお手製の特殊眼鏡を着用している。魔導士嫌いの自由人。番号持ちになる前は、同じく名前が変わる前のミゼンと魔道探求の旅をしていた。本当は番号持ち(ミゼンを除き)の中で一番魔力が強い、オールマイティー型の器用者。シズルに様々な蔑称で呼ばれる転職の人。シズルの異能の秘密を調べたがっている。『心から望むもの』にこれから振り回される予定。
トリア
三番目。女性魔導士。金髪薄青の目の妖艶な美女で、普段は魔導士のローブの代わりに深紅のドレスに防御の銀糸の刺繍が入ったものを着ている。デュオに愛憎入り混じった感情を持っていた。今は『緋色』の虜。
テッセラ
四番目。魔導士最年少。茶色の髪と目の平凡だが生意気そうな少年。元子爵家長男。魔導士輩出で家の格式を上げるため幼少期より親元から離され魔導士になるため育てられた。一度シズルによって攻撃魔法を封じられ、それを解除してもらうため伯爵邸に住み着いた。ザカリの『装着の組紐』の開発者。それを通じてザカリと仲良くなった。
ペンテ
五番目。小太りの気弱な元男爵の魔導士。人の噂集めが趣味の変わり者。ストレス解消のため王族専用の温室で果物を盗み食いをしている。噂収集のために隠密行動が得意で認識阻害の魔術が得意。デュオの強さに憧れている。
(王家の人々)
バシレウス
エデル国国王。燃えるような赤い髪をしたお大柄な壮年男性。病いに臥せっていたが、実は不必要な異世界人の招聘のせいで揺らいだ世界を保つために魔力を吸い取られていた。物腰柔らかだが曲者な賢王。ジークハルトの義兄。
オルタンシア
王妃。ジークハルトの実姉。予言の魔女と呼ばれる十番目に次ぐ魔力の持ち主。黒髪碧い目はジークハルトと同じだが、小柄で温厚な少女のような女性。変化に富む面白いものが好き。凶悪な天然。
ルーデリック
王太子。まだ十代。多分ルカの一個上。赤毛でややタレ目の優男。チャラい恋愛脳のザ・王子様。父親にコンプレックスを持っていたため、ヘイスにあっさり唆され聖女召喚術を行使してしまった。現れたルカに一目惚れし、暴走が始まる。父王に無許可の異世界召喚がばれ、ただ今禁足中。
(そのほかの人(?)々)
ルカ
本名 篠宮瑠花 十七歳。栗色天然パーマの可愛らしい癒し系の女子高生。シズルと同時に聖女召喚術で異世界から招聘された。ルカも魔力のない只人だったが、ルカに一目惚れしたルーデリックのごり押しで聖女と信じ込まされていた。のちにそのことで危機に陥るが、シズルに助け出されて現実に目覚める。今のところ好きの比重がシズル>ルーデリック。
カマリエラ
元公爵令嬢の魔導士。王太子妃の座を狙って、ルーデリックに気に入られているルカを排斥しようとした。多分もう登場しないが、ルカの転移陣逆走事件の中心にいた人。
原初の0
本名不詳。太古に起こった人の感情によって引き起こされた魔力の暴走による大災害を防いだとされる人物。『魔導士ミゼン』がその姿を模倣している。魔力の暴走を防ぐため感情を排除し、呪文を唱えなければれば魔力が使えないような『魔法の理』を創った人。それを世界に広め遵守させるために肉体を捨て、魔素の一部となったとされる。肉体を捨て神に近い存在となったようだが、人としての本質が捨てられず、面倒くさい存在になりつつある。
ティポタ
正体不明。神さまっぽいが神様ではない。人間、魔物を問わず世界に在るもの全てが好き。いたずら好きで一度デュオに捕まっている。
テオス
この世界における唯一神。何もしない。本当に何もしない。




