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火星の雪  作者: 上泉護
41/42

巨艦の咆哮

「提督!爆発光源の中に巨大な艦影を確認!モニターに投影します」


立ち上がる炎の中に、巨大な戦艦がその姿を現していく・・・


美しさすら感じる艦底の稜線は、武骨な上甲板にならぶ砲座を引き立たせ、青みがかったガンメタル色の外観は、漆黒の宇宙空間に溶け込むかの様だ。


モニターに映し出された姿は、巨大戦艦武蔵の正面からの姿だった。

挿絵(By みてみん)


激しい衝撃と震動が収まると、立花が聞いた。

「全員無事か?」


そう言う彼の眼前には、南アメリカ艦隊が大きく展開している。


「南アメリカ艦隊の動きは?」


「現在はフォボス爆発の余波を受けない為に距離をとっていますが、この艦の存在に気づけば、必ず攻撃してくるでしょう・・全力で」と粟野。


「なんとか逃げ切れないか?」とアルフレッド。

「・・難しいな、残念ながら・・」立花が敵艦隊との距離を確認しながら言った。


「艦長!アメリカ艦隊が展開を再開しました!コードG、鶴翼です!」と管制官の林田。


「使用可能な兵装は?」と立花

鷹森が答えた。

「火器管制システム立ち上がりません!圧力伝達パイプ使用不能!」


嫌な沈黙が武蔵ブリッジを包む。


「あっ!?第一副砲座だけ手動で使用可能です・・」

艦橋から武蔵の巨大な船体の前面を見る事ができる。

第二艦橋で隠れる様に、主砲の半分程度の大きさの第一副砲座が見えた。


「あのでっかい主砲は使えないのか?」と皆でアルフレッドを囲む様に座り込むオーソンが言った。

「使えない様だ・・・」とアルフレッド


「誰かがあの副砲座まで行って、敵艦に照準を合わせ発砲しなければならない」と立花


粟野が立ち上がろうとするが、よろめいて壁に手をついた。

「くそっ!」

隊員達の全てが長時間の無重力空間滞在で、満足に歩く事すらできない。

それを見たオーソンが、


「よし、俺が行こう!」と言って立ち上がった。

立花は即座に言った。

「頼めるか?」それしか手がないのだ。


「あぁ、まかせとけ!」と言ったオーソンに


「俺も行く」とブロディ。

「そのエレベーターに乗って第二艦橋下で降りて真っすぐ行ったところに、第一副砲座と表示がある!その下にある、小さめのハッチを手で空けて入った場所だ」と艦長席の陰に隠れる様にあるエレベーターを指さし粟野が言った。


オーソンとブロディは副砲座に向け駆けだした。

艦長席に座るマリアと、オーソン、ブロディが目を合わせ(うなずきあう。

二人はエレベーターに飛び込んだ。


「南アメリカ艦隊、尚も展開を広げながら接近してきます!」

このままでは取り囲まれて集中砲火を受けてしまう。


挿絵(By みてみん)


息をきらせながらオーソンがブロディに言った。

「しかしでかい船だな!まだ副砲まで着かないのか?」


「もう、息が上がったのか?」とブロディ

「俺も怪我人なんだ、ちっとはいたわれ、お前こそついてきてくれと頼んだ覚えはないぞ」


「つれないな、俺もあのくそ野郎どもに一発お見舞いしてやりたいのさ」

「お前は駄目だ」といつになくオーソンが真剣な顔で言った。

「なんでだ?」

オーソンはまだ10代のブロディに、艦艇へ乗り込んでいる何百という人の命を奪う・・という覚悟も、責任も負わせられない・・

負わせる事は出来ないと思っていた。

知識も認識もなく、その覚悟すらできていない・・・

そうオーソンには見えるからだ。

「とにかくお前はだめだ」と繰り返した。

そんなオーソンの気持ちを、肌で感じたブロディは

「・・・解ったよ。今回はあんたにゆずるよ」と言った。


通路を駆けて行く二人は、ようやく第一副砲座にたどりついた。


(かが)まなくては入れない程小さな扉が、湾曲し分岐する正面の壁下側にあった。

「これか?」と巨体を縮め、手で小さな扉をオーソンが押す。

が開かない。

「どうやって開けるんだ?」

二人は押してみたり、引いてみたりしたがビクともしない。

ブロディが扉の右隅に指が4本ほど入る穴を見つけた。

「これか?」と指をいれて逆側に引っ張った。

すると扉一枚分、壁の中に入り込みスライドし開いた。

「よし」とオーソンが小さな入り口に巨体をねじ込みながら

「なんでこんなに小さな入り口なんだ?」とぼやいた。


「普段は使う必要がないからだろう?」そのオーソンを押し込みながらブロディ。

「いてて、腹がつかえとる」笑いながらブロディが、

「やはり今すぐダイエットだな」と言った。


円形の内部は中腰にならないと頭が天井にぶつかってしまうほど狭く、二人が入り込むとぎゅうぎゅう()めになった。

座ったオーソンの正面に、南アメリカ艦隊がモニターに映し出されている。

ブリッジから連絡が入った。


[オーソンさん、準備はいいですか?]と鷹森。


「あぁ、今席に着いた。どうすればいい?」


[正面のモニターに照準がある筈です。足のペダルで左右に、左のスティックで砲の上下動が出来ます。右手グリップのレバーを握りロックを外しながら発射桿を引くと、ニュートリノ弾が発射されます。照準の微調整をする場合はコンソールパネルの一番右のつまみで、オーバーライドテンションを変える事が出来ます」


「オーバーライドテンション?」


[砲座の稼働速度です]

オーソンは右のペダルを踏み込んだ。

すると砲座が時計回りで回転する。

今度は左を踏み込むと反時計回りに回転する。

スティックを引くと砲身(ほうしん)がもち上がり、押し込むと下がった。

その動きに合わせ正面の映像が動き、照準が位置を変える。


「よし、いけそうだ」オーソンがブリッジに言った。

[展開している南アメリカ艦隊の中央にひときわ大きい艦艇が見える筈だ]とかわって立花が言う。


「あぁ見える」

[それが旗艦テキサスだ。まず旗艦をたたく。照準開始してくれ]

「了解だ」

オーソンはおおまかな位置を決め、望遠の拡大を少しづつ大きくし、オーバーライドを落とし微調整していく。

スコープの真ん中にテキサスを捉えた。

「捉えた」とオーソン。


「南アメリカ艦隊、射撃体勢に入ります!」と管制官の林田。


アルフレッドは艦長席に座るマリアと目を合わせると、頷いた。

マリアも頷く。


立花が意を決して言った。

「撃て!」


「くらえ!」

とオーソンはレバーを握りロックを外し発射桿を思いっきり引いた。

まるで艦が爆発したような閃光と衝撃が武蔵を貫いた!



南アメリカ艦隊パウエル提督は、包囲し集中砲火を浴びせる指示を出し、フォボスが消滅した後に現れた巨大戦艦を見ていた。


「巨大戦艦の横幅はおよそ200m、全長は推定600m」とブリッジ要員の一人が報告する。


「日本はまたなんて巨大な戦艦を造ったんだ・・・しかしあの大砲を宇宙で撃とうというのか?もはや大艦巨砲の時代ではないというのに」


「今や高性能ミサイルの時代に、なんて旧時代的な発想だ」パウエルは馬鹿にした様に笑った。

「思い知らせてやる。全艦ハープーンミサイル発射!」


鶴翼に広がった全ての艦艇からミサイルが武蔵に発射された。


「敵巨大戦艦発光!艦砲のようです!」管制官が叫ぶ。


その直後、パウエルは信じられないもの見た。

テキサスのすぐ隣に布陣していた巡航戦艦コロラドに巨大な”穴”が突如として開いたのだ。


それは艦全体の3分の1にもあたる。

流出する空気や破片・・その直後、大爆発を起こした。


「コロラド轟沈!!」


「なんだ!なにが起こった!?」

電磁衝撃波が周辺の艦艇を襲う。


「何の武器だ?なにで攻撃された?」

南アメリカ艦隊は恐慌に襲われ、陣形が乱れる。


たった一発で戦艦が撃沈されるのか?信じられん・・・」



武蔵のブリッジでは

「ミサイル接近!着弾まで20秒!”ピン”火器管制システム立ち上がらない状態では打てません!」


「上げ角40、艦首をあげろ」立花がアルフレッドに言った。

アルフレッドが即座に艦首を持ちあがらせ、モーメントを消す。


南アメリカ艦隊に対し、舳先へさきをあげた武蔵の艦底にミサイルが着弾する!


武蔵の艦底で立て続けに爆発がおき、艦内をはげしい振動を襲う。

その姿は大きな炎の波を乗り越えるかの様に見えた。


「全弾命中!」

パウエル提督は気色をあらわし、

「よし!やったぞ!」と叫んだ。


爆煙が霧散する・・・

すると、そこには無傷の武蔵があった。


「ばっ馬鹿な!あの(ふね)は化け物か!?あれほどの攻撃にビクともしないなんて・・・」

パウエルは呆然となった。



武蔵の第一副砲座にも震動が伝わってきた。

震動が収まると、今度は体が浮くような感覚とともに照準が戻って行く。

副砲座の中でオーソンが叫んだ

「やった!撃沈したぞ!」

「隣の艦だったけどな」とブロディ


[圧縮レベルはどうなってますか?]と鷹森

パネルを確認すると、丸く表示された圧縮率のゲージが100近くに戻りつつある。


「もうじき撃てるぞ!」

[次は旗艦テキサスを頼む]と立花

「分かってるよ!」と照準を微調整するオーソン。

数値が100を表示し、丸いゲージが赤く点灯する!


「おかえしだ!」


オーソンは発射桿を引くと、再び武蔵を閃光と震動が貫いた。



テキサス艦長アトウェル中佐は敵戦艦の発光を確認すると、直感的に直撃を受けると本能的に察した。


その直後、すさまじい衝撃がテキサスを襲う!


・・・衝撃で朦朧とするアトウェル中佐は、霞む視界の中で我に返った。

テキサスのブリッジは様々な物が散乱し、火花散り煙があがっている。


そして見た・・・テキサスに大穴が空き、艦体が真っ二つに割れて行く姿を。


はっとして振り向いた彼の視線の先に、倒れ伏すパウエル提督の姿があった。


テキサスが大爆発を起こす。


南アメリカ艦隊は旗艦を失い、混乱状態に陥った。

逃げ惑う様に陣形が崩れ、武蔵から離れて行く。


その様子を見て立花が言った。

「戦う意思の無い者を、日本は攻撃しない」専守防衛・・集団的自衛権・・その相反する矛盾を日本は抱えている・・・

立花は国際社会という枠組みの中で、日本の立ち位置を改めて考えていた。

散開し逃げ去っていく南アメリカ艦隊は、武蔵から遠ざかって行く。


そんな立花の姿を見たアルフレッドは、立花という男・・日本という国が極力戦争を避けようとしている事に、あらためて気づかされた思いがした。


沈思する立花に、管制官の林田が

「一佐、渚稜線(しょうりょうせん)に国際宇宙ステーションを囲むAARF艦隊を確認。北アメリカ艦艇と戦闘中です!」


光学望遠鏡に映し出されたのは、無残にも壊滅しようとしている北アメリカ残存艦隊だった。


「北アメリカ艦隊を助けに行く。進路を国際宇宙ステーションに向けてくれ」とアルフレッドに向けて立花が言った。


北アメリカ出身のアルフレッドに否が応もない。

「オーソン、良くねらえ」とアルフレッドはオーソンに言った。


「わかってるよ!」とオーソンが応える。


火星の渚稜線から浮き上がる様に見えてきたAARF艦隊はほぼ無傷だった。

武蔵に気が付いたのか、壊滅状態のアメリカ艦艇をほったらかしに、単縦陣を引き始める。

武蔵から見ると、先頭の戦艦しか視認できなくなる。


立花が

「あれが奴らの必勝の陣形だ。国連艦隊の攻撃は全て無効にさせられた。何らかの防壁を先頭艦が持っているとしか思えない・・・」

振り返ったアルフレッドが立花を見て言った。


「このムサシの砲ならいける」立花は頷いた。


「オーソン、頼むぞ!」とアルフレッド。

「おぅ!」


AARFと武蔵の距離がどんどん近くなっていく。


照準を合わせたオーソンが、


「くらえっ!!」と発射桿を引いた。


武蔵の第一副砲が火を噴いた!!



その圧縮ニュートリノ弾は、先頭の戦艦を貫き、2番艦、3番艦を貫通し、そして4番艦を粉砕した!

AARF艦隊単縦陣の先頭で大爆発が起こり、5番艦が誘爆する!


「よっしゃぁ!」とオーソン

その後ろでブロディが

「すげぇ・・」と呟く。


なにが起こったのか解らないかの様に、AARF艦隊の動きが止まった。

副砲座の圧縮ゲージがみるみる溜まっていく。


数値が100を表示し、丸いゲージが赤く点灯する!


「もう一発だ!」とオーソンが発射桿を引く!


今度は先頭の8艦を串刺しにし、大爆発が起こる。


ようやく目の前で起きている事が理解できたのか、慌てふためくAARF艦艇が散開し、退避していく。


その様子を見ながら立花が

「たった2発で、13隻沈めたのか・・・」と改めて武蔵の火力に驚いていた。

それも主砲ではなく、副砲でだ。


振り返り見たアルフレッドは、艦長席に座り硬く口を引き結び、宇宙空間に目をやるマリアに気が付いた。

強い緊張状態であるのだろう・・・

操舵席から離れられないアルフレッドは、アリソンを見る。

それに気が付いたアリソンは、マリアの元へ行き声をかけた。


「マリア・・・」

アリソンに振り向いたマリアは緊張を解いて、ニコッと笑ったが何も言わなかった。

アリソンもそんなマリアの肩に優しく手をおいただけで、何も言わずマリアに微笑みかけた。


それだけで、二人の気持ちは通じたらしい・・・

二人ともふたたび宇宙空間へと目をやった。


とその時、中岡博士の声がブリッジに響き渡った。


「マリア・・・」と中岡博士が呼びかけ、


長い沈黙が続いたあと、滔々(とうとう)と話し始めた。


「我々科学者は未知の解明、新しいテクノロジーの発見を深い喜びと感じ、人生をかけてその謎解きをしている様なものだ・・・

偉大な先人達もまた、例外ではないだろう・・・

しかし時に、それは大いなる危険もはらんでしまうものでもある。

1930年代になされた核物理学上の発見もまたしかりだ。

危険なテクノロジーであるにも関わらず、国益という抽象的な言葉で、開発が止まる事無く続けられ、そして・・使用されてしまう。

日本はその唯一の被爆国でもある・・・


私が開発した物は、ブラックマターに由来する、膨張する宇宙のエネルギーを抽出するテクノロジーと言える。

この宇宙に有る限り、無限にエネルギーを得る事ができるが、その開発競争の行きつく先には、未曾有みぞうの破滅がもたらされる恐れがある事が解った。


もしこれが重力兵器という形にすりかわってしまうと、行きつく先は人工のブラックホールにたどり着く。

それは核をもしのぐ恐ろしい兵器だ。

地球はおろか、太陽系ですら破滅させる事となるだろう。


物理学上で革命的な発見をしてきた科学者達・・原子爆弾の父と言われたレオ・シラード・・・

その有益性のみに目が向けられて、その陰に潜む、”人間というあまりにも未成熟な生き物が持つ”という危険性を見過ごしてきたのではないか?と私は思っている。


人は未成熟であり、科学者もまたしかりである。

だからこそ、科学者は自らが生み出したテクノロジーに対する、後世までの一切の責任を負わなければならない。


私の元には世界からあらゆる手が伸びてきた・・・

そして、それを隠し通す事が不可能となってしまった。

だから、私と共にこの研究内容は永遠に消去する。

唯一武蔵だけ、そのテクノロジーを具現したものとして残すが、その武蔵のどこをあさっても、研究内容もテクノロジーの再現を可能とするものも見つける事は出来ない様になっている。


そして、無理に武蔵を解体しそれを暴こうとすれば、この艦は自爆する。」


「マリア・・・」と再び孫娘の名前を呼んだ。

「こんな事に巻き込んでしまって本当に申し訳ない・・・」

ブリッジにいた者達は、真剣に聞き入っている。


「だが解って欲しい。私が愛する祖国、日本の危機にこの武蔵はどうしても必要なのだ・・・

この戦争が終わり、武蔵が必要でなくなったならば・・・

マリア・・・武蔵を破壊して永遠にこのテクノロジーを抹殺して欲しい。

まだ未熟な人類には、扱いきれない危険な技術を・・・頼む・・・」とそこで中岡博士の声はとぎれた。


ブリッジを静寂が包む。


そして最初に立花が口を開いた。

「私に人事権はない・・が、当面君がこの武蔵の艦長だ。マリア

私は君の補佐をしながら、日本防衛の為、君の説得に尽力する事にする」立花はマリアを見て微笑んだ。


マリアも立花を見て微笑み頷いた。


と第一副砲座からオーソンが通信で

[どうする?もうやめとくか?]と聞いてきた。


AARF艦隊は散開し退却を始めている。

マリアが答えた。

「はい、終わりにして下さい。お疲れさまでした」


[了~解、ブリッジに戻る]とオーソンが言った。




火星進駐を諦めたAARF艦隊が、小惑星帯へと退却しているのを見届けた武蔵は、一路地球へと向かっていた。


「武蔵には開かずの扉があるんだよ。誰も見た事の無い場所があるんだ」

そう言うとマリアを連れて鷹森が歩いて行く。

その後ろを、立花、ビーン一家とオーソン、ブロディが続く。


「我々は開かずの扉とか天岩戸あまのいわととか呼んでるんだ」

「アマノイワトって?」とベティ。

「日本の昔話に出てくる開けられない岩の扉から取ったたとえさ、構造上ではそこがセントラルドームと呼ばれている事は解っているんだが・・・」


武蔵の艦橋を降り、艦橋の後ろにあるドームへの扉が7m程先に見えてきた。

「あの扉の内側がどうなっているのか、誰も知らないんだよ・・・

君の生体認証で開くんじゃないかと思ってね」


うながされたマリアは7m先の扉に向かってゆっくり歩いて行く。

すると通路側面の上側にある細いラインが緑色に光った。


鷹森は今までにない変化に緊張する。

マリアは扉の前まで歩いてきた。

扉の横にあるパネルが赤く明滅すると、しずかに扉が開き始めた。

開いた扉の前に広がる空間にマリアは息をのんだ。


「森・・・」


優しく木漏(こも)れ日が落ち、心地の良いそよ風が葉を揺らしている。


後ろから駆け寄ったベティがマリアの手を掴み歓声をあげた。


「森よ!森がある!」


挿絵(By みてみん)


ベティとペグとケイティが一緒に駆け込んで行った。


そよ風には乾燥した落葉の匂い、木々や草々の香りが溶け込んでいる。


あとから静かにマリアや大人達が入って行く。

彼らが見上げたその先には、高さが10m以上はあろうかという木々が立ち並び、森の奥は見通す事ができなかった。


「まさか・・戦艦の中に森があるなんて・・・」とアリソン


「ドーム全体がこの森になっていたのか・・・」と鷹森

小鳥のさえずりが聞こえ、羽虫すら飛んでいる。


「ここはひとつの生態系をなしている・・と言うのか?・・」とアルフレッド

「アースドーム・・って事か」と立花


飛び跳ねる様にはしゃいでいるベティとケイティの足元には、小さな小川まで流れている。


「今広大な宇宙空間の、戦艦の中にいるとは到底思えないな・・・」というアルフレッドの頬を優しく心地よい風がなぶった。


「この(ふね)は・・・いいな・・・」見上げる青空には流れゆく雲すら見える。



一行はしばしの間、はしゃぐ子供たちを見ながら、心が解放される様な心地よさを味わっていた。


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