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火星の雪  作者: 上泉護
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艦隊決戦 後編

準惑星ケレスはAARF艦隊からは反対方向に位置し、

現宙航速度をゼロにし反転するには質量の大きい艦ほど時間がかかる。


AARF艦隊から追撃し殲滅する為の、BRの大部隊が発艦した。

艦同士がこすれそうな至近距離の為、国連側からもその様子が見てとれる。

国連側も急ぎBRを発艦させるが、多くの航宙母艦が撃沈されていて、その数はAARF側の比ではなかった。


直線上で対峙した双方の艦隊は、国連軍が加速をし、AARF軍が減速を行っている為、相対速度を維持したまま艦艇同士がすり抜けていく。


なりふり構わぬ国連軍艦艇から無秩序に電磁パルスのピンが打たれ、双方の艦艇の頭上と艦底にオーロラの様な輝きが発生する。

その都度BRの動きが一時的に鈍くなり、そして回復するを繰り返した。


この電磁パルスのピンのおかげで誘導ミサイルが撃てず、撃ったとしても相手に向かって真っすぐ進むのみのミサイルしか撃てない。

その様な時の為のミサイル砲座で、砲術士の腕の見せ所でもあった。


国連宇宙艦隊の後方に位置する艦艇に、BR群が襲い掛かった。

国連の航宙母艦から発艦したBRが迎撃行動にはいる。


北アメリカのBRが腰だめに構えた機銃から、すり抜けざまにAARFのBRへ撃ち込んだ!

発射の反動で逆方向へはじかれる様に移動しながらBRを撃墜する。


BRのパイロット達はよほどの腕の持ち主でなければ、機銃を腰だめに構える。

そうしなければ、発射の反動で不規則な回転運動が生じ操縦が困難になるからである。


機銃など兵装の発射の反動を利用し操縦できるようなパイロットは、ほんの一部の一流もしくは凄腕のパイロット達だけだった。


発艦直後すぐ戦闘に入れたのはその一部の凄腕パイロット達だけで、多くの国連BRが撃墜され、虚空へと消えていく。


だがその凄腕パイロット達も、その物量差は埋める事が出来ず、集中砲火を浴び撃墜された。


制宙権争いをしていたイタリアの、優美でどこか洗練されたデザインのBRが撃墜されたのを皮切りに、艦艇への攻撃が始まった。


艦隊の後方に位置していた日本艦隊にもBR群が襲い掛かり、3発の対艦ミサイルを撃ち込まれた駆逐艦オウシュウが撃沈された。

全ての艦艇が対宙砲で必死に応戦するが、BRの撃ちだす対艦ミサイルに次々と破壊されていく。



「僚艦が次々と撃沈されていきます!」悲痛な管制官の声がブリッジに響く。


「第二陣のBR群およそ100機!接近してきます!」


「シーホース(対宙多弾頭ミサイル)、BR群中央に向け発射!」

立花艦長がすかさず命令する。


シーホースミサイルがBR群の中央で弾頭が分離、細かいミサイルを撒き散らし多くのBRを撃墜せしめた。

散開したBR達の追撃速度が落ち、AARF艦隊が後方に遠ざかって行く。


するとAARF側は追撃が容易な加速の鈍い国連艦艇に狙いを変更した。

エンジンに被弾し遅れている艦へBRの波状攻撃が始まる。


ここで味方を守る為、立花が減速を指示したら国連宇宙艦隊は壊滅するだろう。

立花は、反転、迎撃・・・という言葉を噛み殺した。


遅れ気味のイギリスの重巡洋艦ドーセット艦長エイトキンから指向性の通信が届いた。


「我、AARF艦隊の足止めを決行す。健闘を祈る」

立花は少しずつ離れていく味方艦に、手を合わせたくなる気持ちを抑えた。


ドーセット甲板上の対宙機銃からあらゆる方向へ弾が撃ちだされ、AARFのBRを撃墜していく。

へリントンミサイルを至近距離から敵艦に撃ち込み、爆発による火炎や破片を自艦に浴びるも、それをものともせず、お構いなしに敵艦にミサイルを連射する!

敵大型戦艦を撃沈した。


ドーセットはよく戦い、BRの波状攻撃にもよく耐え長時間に渡り持ちこたえたが、その物量差は埋めがたく、BRの攻撃により艦首からの爆発が艦尾まで続き・・・轟沈した。


だがドーセットの善戦で国連艦隊とAARF艦隊との距離が広がり、追撃を諦めたのか、群がってきていたBR群は母艦に戻る為、相対速度を大きくしていった。


緊張を解くことなく、その様子を見ながら立花は考えていた。


これほどの物量をいつの間にAARFは揃えたのか?

そもそも独裁政権国家で経済の発展はあまりみこめない・・・

そのからくりはなんなのか?・・・


とその時、ドイツの巡航戦艦ザールランド艦長アルベルツから短距離通信が入った。

「立花提督代行。今後の計画について聞きたい。どうするつもりだ?」

「それについて協議する為、艦長会議を開きたい。このまま密集隊形を維持したまま、ヒトマルマルマル時にマツシマに集まって欲しい」

「了解した」通信が切れた。

立花は通信士に向かって

「各艦にその旨通達してくれ」と言った。

「了解」と言う通信士の声は重く暗かった。


カッターが重巡洋艦マツシマに集まった。

集まった各国代表の艦長は15人。

それぞれイギリス・フランス・ドイツなどのヨーロッパ諸国・アメリカ・オーストラリア・日本、アジア諸国他数か国だった。

それぞれの国の多くの艦が撃沈されている。


北アメリカ宙軍ノースカロライナ艦長マーフィーが強硬に主張した。

「このまま引き下がるのか?反転し、あいつらに一泡吹かせてやろう!」

「自殺行為だ!我々が全滅してしまったら、本当に制宙権はあいつらのものだぞ!」

アルベルツ艦長が反論する。

「制宙権を失ったら地球をくれてやるも同義なんだぞ!」ヨハンセン艦長も反対した。

「だからここで叩くのさ、我々なら出来る!」マーフィーは譲らない。

「できない!あいつらはミサイルを無効にするなんらかの技術を持っている!」とアルベルツ艦長。

「たまたまだ!今度は成功する!」興奮気味のマーフィー艦長は強硬だった。

「ステルスミサイルはロングレンジからの精密射撃が可能なものだった。が、10隻の艦からそれぞれ3発づつ、30発のステルスミサイルが敵先頭艦に届かなかったんだ。敵艦との相対速度は時速1000kmを超えていた。従来の迎撃システムではあり得ない事だ!」

コネリー艦長は黙ったままだったが、なにか言いたそうだった。


「これからどうするんだ?立花一佐」とヨハンセン艦長が聞いた。

腕を組み黙って聞いていた立花だったが、

「AARF艦隊はほぼ無傷であるのに対し、我々は5分の1に減ってしまった。

このまま大規模な艦隊戦をしても勝てる見込みは無いに等しい・・・

しかし少なくなってしまった利点もある。

補給は少なく済み小回りが利く。それに対し大艦隊であるAARF軍は大量の補給物資を必要とし、我々を長く追跡する事は難しいだろう」


と横から副長が割って入った。

「申し訳ありません。敵艦隊に動きがありました。艦隊進路を変更し火星に向かっている様です」


「追撃をあきらめたのか?」アルベルツ艦長

「当然だ。あいつらだって馬鹿じゃない。このままでは我々に追いつくのは不可能な事ぐらい解るさ」とコネリー艦長。


火星には各国の領土が存在する。固定目標に変更されたのだ。

「このままでは火星が占領されてしまう。デモインには北アメリカの駐留軍がいる。なんとかしなければならない」軽巡洋艦ネブラスカ艦長スティンガーが発言した。


「我がイギリス領にも駐留軍がいる。優先させる訳にはいかない」とコネリー艦長。


立花に視線が集まった。

日本にも守るべき最重要拠点がある。

フォボスである。

起死回生の軍事技術研究機関として、最高機密とされていた。

それぞれの国が、自国領土を守りたいのは当然の事で、選択肢はなかった。

立花はそれが愚かな戦略で有る事は解りながらも、苦渋の選択をせざるを得なかった。


「各国の艦艇はそれぞれの防衛拠点に赴き、それぞれの戦略で戦われたい。防衛に成功し余力がある場合随時連携し事に当たろう」空しいがそれしかなかった。


各艦長は頷いた。そこにいた全員が同じ気持ちだった。

「健闘を祈ります」立花が敬礼すると、全員が敬礼を返した。


国連軍はそれぞれの領土を守る為、(たもとを分かつ道を選んだ。

もっとも被害の大きい北アメリカ軍は、デモインの防衛に、日本はフォボスの防衛にと、それぞれの国の艦艇がそれぞれの拠点防衛へと向かう。

本来なら大兵力で各個撃破が望ましいが、AARFも所詮、独裁政権国家の寄せ集めである。

領土切り取りにやっきになり、大艦隊が崩れ火星軌道で分裂する筈だ。

そうなる事だけを頼りに、国連宇宙艦隊もまた


火星へ・・と進路をとった。


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