戦闘
昼下がりの雪原に爆炎と雪煙が巻き上がった。
それをBRが突き抜けて滑走してくる。
バイザー越しにそれを認めたブロディが
「そうは簡単に当たらないか・・・」とつぶやいた。
発射の反動で浮いていたローバーの片輪が”ドンッ”と雪面に着く。
蛇行するローバーの中では
「ブロディ!撃つ時は撃つって言え!」とアルフレッドが怒っていた。
シートベルトを外したアリソンが、よろめきながら荷台の扉を開けBRに叫んだ。
「ブロディ!撃つ時は言いなさい!」激しい風がアリソンの髪をなびかせる。
「悪い!」と、ブロディは無線マイクのスイッチを入れた。
引き下ろしていた照準器のグリップをたたみ上に押し上げると、砲身がたたまれ折れ曲がる。
”ブンッ!と空気を切り裂き弾が飛来した。
ブロディはアリソンをかばう様に、BRを操作すると
「中へ戻るんだ!」と言った。
アリソンが中に戻る姿に落ちるBRの影を見て、ブロディはBRが背に盾を背負っていた事を思い出した。
パネル上のBR略図の盾をタッチする。
BRが左手を持ち上げ頭の後ろで盾を掴む。
背の固定ピンが外れ、盾がフリーになると自動で左手に持ち替えた。
それをローバーの荷台に立てる様に左手で固定し、BRの前面にかざす。
その盾に砲身を乗せるように重機関銃を構えた。
正面のスクリーンに、BRを自動で追う照準がブレている。
トリガーを引いた。
激しい振動と炸裂音がし、飛び出した無数の弾丸が追ってくるBRの周りに着弾し飛びぬける。
アルフレッドに言われてセットした金属のリングが高速で回転し、残弾が減っていく。
2機のBRは右に左にと旋回しながらその狙いを外そうとする為、なかなか近づけないでいる。
ブロディはBRの動きに合わせながら、ローバーの揺れを読んだ。
照準を親指のスティックで微調整しながらトリガーを引く。
火花を散らし、数発が命中した。
「くそっ!奴め!」フリーマン隊長は毒づいた。
あのBRに乗っている奴は、殴り合ったあの青年だと信じて疑っていない。
「奴は素人じゃないのか?それになんだあのランドローバーとカーネリーは?仲間がいたのか?」
そんなフリーマンに通信が入った。
[大気圏に突入した。じきお前たちの上空に到着する。作戦を引き継ぐ。]冷たくなんの感情もない、機械の様な声で事後報告された。
フリーマンは焦りながら
「待ってくれ!もう少しなんだ!」と言う。
[もう待てない。貴殿らは身の処し方を考えておくんだな]通信が切れた。
「くっ!」フリーマンはもう一機のBRに呼びかけた。
「フォード、あいつらが降りてくる!作戦はめちゃくちゃにされてしまう!急ぎ障害を排除して目標を確保するぞ!」
「D小隊がですか!?」その声には怯えの響きがあった。
「そうだ!引っ掻き回された挙句、我らの面目は丸潰れだ!」
「しかしあのD小隊ですよ!」
「そうだ!凄腕だが奴らの頭はいかれている!人殺しを楽しんでする輩だ!」
「マリア・ウィンフィールドを死なせてしまう!」
彼らが目を覚ました時、丁寧に手当てがされていて、それをしたのは間違いなくあの少女だったと思っている。
彼等も人の子であり、情もあり感謝の念もある。
なんとか人がましい扱いをしてやりたいと思っていた。
「とにかくあのBRを黙らせろ!」
水源まで掘削するドリルのパイプを持つオーソンのカーネリーには目もくれず、ランドローバー荷台のBRに攻撃を集中する。
アルフレッドが必死に飛来する弾丸を避けようと操作するローバーの荷台で、ブロディは自分に攻撃が集中している事に気が付いた。
「おやっさん!先に行ってくれ!」マイク越しにアルフレッドへ呼びかけた。
「だからアルフレッドでいい!駄目だやめろ!」そのアルフレッドの制止も聞かず、ブロディのBRは高速で走行するランドローバーの荷台から飛び降りた。
「ブロディ!」アルフレッドとマリアはほぼ同時に叫んだ。
重心を落としながら雪原を滑る様にバランスをとり、態勢を立て直しBSBで滑走するブロディのBRを見て、フリーマンがフォードに呼びかけた。
「あいつを素人と思うな!熟練したパイロットだと思え!」
「了解!」
ブロディのBRを挟み込む様に、重機関銃を乱射しながら切迫するBRを見ながら、ブロディは歪んだ笑みを浮かべていた。
忘れていた・・・彼の腹の中に燻っているどす黒い何かが、むっくりと起き上がり凶暴な獣が目を覚ましたかの様だ・・・
「へっ・・性分なんだな・・・」とブロディはつぶやいた。
急旋回しローバーから離れながら、雪を蹴散らし高速で移動する。
あの短い時間であっという間にBRの操作をマスターしてしまったブロディのBRは、後ろ向きにBRを滑走させながら機関銃を的確に撃ちまくる。
逆走するブロディのBRは、前面に盾を構え、身を屈める様に小さくなりながら右に左にと蛇行し弾丸を避ける。
盾に数発当たり、”ガンッガンッ”と音と共に振動が伝わってくる。
「へっ・へへ・・」ブロディは不敵に笑っていた。
ブロディのBRが急速に方向転換しながら、フォードの前面に滑り込む!
逆走する背面の岩を避けながら、正確に機銃を斉射した。
フォードのBRの右膝に何発か命中し、片足が吹っ飛ぶ。
BRは転倒し雪煙をあげながら、視界から遠ざかっていく。
「フォード!」フリーマンが呼びかけるとすぐに返信があった。
「無事です!が、作戦遂行を断念せざるを得ない状態です!」
その間にもブロディの放つ弾丸が正確にフリーマンのBRに降り注ぐ。それを旋回蛇行し回避しながら、
「解った、アルファ03に回収してもらえ!」と指示する。
「了解!」
くそっ・・・あいつ何者なんだ?・・・フリーマンは改めてあの青年を思う。
身体能力が高いのは知っていたが、まさかここまでBRを乗りこなせようとは・・・
そのBRが突然フリーマンのBRに突っ込んできた。
速い!
フリーマンの掃射する弾丸を盾で防ぎながら距離を詰める。
金属と金属がぶつかり合う激しい音と共に体当たりした!
とっさに盾をかざしたフリーマンのBRとブロディのBRがはじけるように離れる。
瞬時に態勢を立て直し、再び距離を詰めると右ストレートをフリーマンのBRにお見舞いする。
それをぎりぎりのところでフリーマンは避けた。
それを追う様に左足を前に踏み込みながら、左ボディをブロディは叩きつける。
ボディをへこませ浮き上がったフリーマンのBRは、態勢を直しながら避ける様にバックステップする。
コクピット内で前後左右に振られながら、フリーマンは毒づいた。
「くそっ!BRで殴り合いの喧嘩をしようっていうのか?!」
重機関銃の照準を合わせるどころの騒ぎではない。
BRの姿勢を正す事で精一杯のフリーマンはなんとか距離を開けようと、BSBを逆走させる!
それを追いかけるブロディの繰り出す膝が、フリーマンのBRの上体を跳ね上げた。
倒れかかりながらバランスを取ろうと前に出した左腕がちょうどBRに向いた。
瞬時にフリーマンは左腕のハーケンスピアを至近距離で打ち込んだ!
なんと!それをブロディは体を開いて躱す。
ブロディのBRの胴を、火花を散らしこすれながらスピアがかすめる!
「なんて反射神経だ!」と驚くフリーマンのBRの左腕をとり、振り回す様に投げ飛ばした。
転がされたフリーマンのBRが仰向けに倒れこみ、起き上がろうと腕をついた時、
ブロディのBRの左足が押さえつける様にその胸を踏みつけた。
銃口がBRに向いている。
炸裂音と共に至近距離からBRの下腹部へ、重機関銃が撃ち込まれる。
コクピットのフリーマンは、配線から火花が散りスクリーンがダウンしていく中で、死を覚悟した。
しかし暫くすると炸裂音は止み、暗闇のコクピットでBRが走り去るBSBの音が遠ざかっていった。
緊急脱出用にBRがダウンしても油圧で背部ハッチがスライドできる様になっている。
足元の赤いレバーを引くと、機体を持ち上げながらハッチが開いた。
フリーマンは機外に出てBRの上に上ると、遠ざかっていくBRの背を見ながらため息をついた。
「死ぬなよ・・・」不思議な事に・・・あの青年に共感にも似た同情がわいてきていた。
すいません。
仕事が忙しくなってきてしまったので、しばらく休止します。
年末頃には再開できると思います。
本当に申し訳ありません。




