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私は、しばらく父がいなかった。
中学三年生の時にいなくなった、のほうが正しいかもしれない。
小学生高学年まで、父が大好きだった。
大きくなったら父のような男性と結婚したいと本気で思っていた。
もっと幼い頃は、父と結婚する、と言っていたそうだ。
だけど、高校生になって、愛情から憎しみに変わった。
大学生の頃、憎しみから、無になった。
今は、思い出すこともほとんどない。
たまに思い出す。
だけど、もう、憎しみではなく、懐かしく思う気持ち。
血を分けてもらった父なのに。
そんな自分自身を非情だと思う。