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建物と飛行機をつなぐ固定橋は、まだ春先ということもあり、空気がひんやりしていた。
緩やかな下り道。
下り坂のはずなのに、なぜか踏みとどまる。
後悔、するかな?
そう思いながらも、機内へ進む。
残り数名が乗り込むと、ドアが閉まる。
機内アナウンスが流れた後、ゆっくり飛行機は動き出す。
滑走路まで着くと、一旦停止。
座席は空港が見える方の窓際にした。
屋上で手を振っている人が見える。
あぁ。
家族だ。
それと、他にも見覚えがある人がいた。
端っこで控えめにいて、だけど、大きく手を振っている。
間違いない。
7年間、想っていた人。
「ユキさん……」
さっきは我慢できていた涙腺は、その姿を捉えると一気に緩んだ。
ダメだ…止まらない。
私も彼も目がいい。
私が見えているのだろうか。
じっとこちらを見ている。
表情までは見えないけれど、彼は、顔を拭うような仕草をしていた。
泣いてる。
付き合って7年間。
私は彼の涙を一度も見たことがなかった。
大きく両手を振りながら、彼は今、きっと泣いている。
私はいつか言った。
「飛行機からはね、小さく手を振っても見えないの。だから、手を振る時は恥ずかしがらずに肩から振らなきゃいけないんだよ」
彼は、今、そうしてくれている。
もう、涙を止める方法が分からなかった。