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理由は、1つだけ。
ギャンブルだった。
最初は気にならなかった。
それほど大きい金額ではなかったのもあったし、何より学生時代はサークルとバスケに明け暮れているようだったから、それほどの頻度でもなかったようだ。
それ以外の時間はすべて私と一緒にいる時間にしてくれていた。
だけど、社会人になり、私と勤務時間のすれ違いで一緒にいられる時間が少なくなると、ギャンブルをする頻度が増えていった。
必死に仕事しか見えていなかった私は、それに気がつかなかったけれど、ある日事件が起きたのだ。
結婚を決めて、結婚式までの一年は同棲した。
半年程度経ったある日、結婚資金として二人で一緒に貯めていた貯金に手をかけられてしまった。
普段私たちは喧嘩しなかった。
この時だけは今までになく私は怒った。
ユキさんはずっと謝ってくれた。
バカだった、二度としないと言ってくれた。
それを信用した。
結婚式まで2ヶ月となったあの日。
通帳から知らない金額が減っているのを見た瞬間は今でも覚えている。
指先が冷え切っていく感覚。
目の前が真っ暗になるような……。
「絶望」
その言葉がピッタリだった。
今まで見てきた未来が一気に崩れ去っていく。
ダメだ。
人は変わらない。
ずっとこんなことはあるのだろう。
私は許せるのだろうか?
お金が減ったことが問題なのではない。
大事な約束を破られたことが許せなかった。
その日私は、彼に別れを告げた。