第七話 この物語はフィクションです。特定の団体(中略)とは一切関係ありません
火曜日の五限は、現代文の授業なのだが。
担当の先生は老紳士。なんでも実家がお寺で、お坊さんの資格を持っているのだとか。
穏やかな人柄で、授業中騒がない限りは何も注意しない。
通りの良い低音だから、女子には結構人気なんだけれど。
いくら良い声でも抑揚なく小説を読み上げられてしまうと、もうね。
よりにもよってこの日は四限が体育で、いい汗かいたところに昼飯を詰め込んで。
そこからの五限に「読経」を聞かされるものだから。
うららかな陽射しに、爽やかな風。
もう我慢できない……おやすみなさい。
目が覚めた。
一度寝てしまうと、頭がスッキリするのは良いんだけど。
いた。
30cmサイズの、尼さん「風」の人物が。
(この物語はフィクションです。特定の団体とは一切関係ありません)
「判定尼と申します」
あ、こりゃどうも。えーと。
「ユウタさん、セーフです」
はい?
「律蔵に曰く……」
いや、漢文は分かりません。日本語でお願いします。
「噛み砕いて言いますね。釈尊のお言葉によると、ち○こが勃起する原因には5つあります。欲望、大便意、小便意、風に吹かれた時、虫に刺された時」
何ば言うちょるかあんたー!
「欲望による勃起はいけないと思います! 勃起に限らず不意に起こる、しかししばしば起こりがちでもある、『これはえっちぃのかえっちくないのか』という事象、そしてその判定を司る妖怪、それが私なのです」
で、その。
「俺がセーフ判定をいただいた事象というのは?」
「授業中に昼寝をし目が覚めた時……男性は勃起します!それはもうギンギンのバッキバキに! でもセーフ!生理現象だからです」
あ、はあ。
確かに授業中あるあるですね。
現にいま、机の底板に当たって痛い思いをしておりますが。
尼さん「風」の女性に勃起を見抜かれ判定されるって、羞恥プレーにしてもレベル高すぎません?
「今の勃起はアウトです!」
あっはい。了解です。
「それから……あちらの女子、アウトです!」
判定尼が、「独鈷によく似た」イカツイ武器を振り向けた。
見れば、真野わるさと出会った時、お互いにおたおたしたクラスメート……佐藤香里で。
真っ赤になって目を逸らされた。
「ユウタさんの股間をガン見していました!だからアウト!」
「あっちの女子もアウトです!BL本読んでます!」
「あっちも!先生の美声にジュワ~です!」
だから妖怪ども!もう少し包め!
それとさ、やけに女子に厳しくない?
「女の敵は女なんだよ。覚えとけ童貞!」
どこから出てきた、妖怪「ち○毛散らし」!
「教科書に挟まってたんだよ!いちいち名前を呼ぶな!おーっと、個体名のほうを呼んだら許さねえからな?ファスナーに噛ませるぞ?」
すんませんっしたー!あれマジ痛いんで勘弁してください!
あれ?
「でもさ、『挟まってた』んじゃなくて、お前が『挟み込む』んじゃないの?」
「うるさい!何だよ!『そばにいたいから挟んだんだろ?』とか、そんな都合の良いこと考えてんじゃねーぞ!」
「ほんと分かりやすいよね。処女のくせに口ばっか!」
へえ……そうなの……いや、そうじゃなくて。リモ子?
「何でお前まで?」
「六限の教科書を隠したんだよ!ユウタのそばにいたいから!」
リモ子は素直だなあ……って、そうじゃない。
六限の先生は厳しいんだよ!全然嬉しくないんですけど!