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第四話 満(まん)を持しての椿(ちん)事出来



 インスタントコーヒーでも飲もうかと思い、戸棚を開けたところ。

 いた。

 マイマグのうしろに、横向きで体育座りをしている現代妖怪が。



 今回はその……黒髪ストレートのセミロング、スッキリ小顔に輝く瞳、そのいでたちはどこまでも清楚……要は、典型的な美少女。見るだけでも、なんかちょっと得したような気分になれた。


 ひょっとしたら、これが噂の「座敷わらし」か?……などと思いつつ。

 上機嫌でダバダッとコーヒーの粉をマグに入れたところで、気づいた。


 Oh……


 いつか必ず来るとは思っていたんだよ。

 妖怪リモコン隠しが登場した時点で。


 お前が妖怪・「ち○毛散らし」か! 

  

 「んだよクソァ!そこは気づかず鼻の下伸ばしてお湯を注いで、口ん中からペッペッてするのが様式美だろうがクソァ!」


 さては貴様!清楚系を装ったビッチだな!

 ……いや、ビッチっていうか、ヤンキー?

 

 「ったりめえだろ?黒髪ストレートのセミロング、白ブラウスにアースカラーのフレアロンスカなんてビッチしかいねえよ!ほーれ、見たいか童貞!」


 ガバッと脚を開いている。

 有り難み、まるでないなあ。

 ……黒か……


 「見せパンに釣られてやがる。1000円な?」


 うるせえ!一万円とか無茶な要求をしないところがまた微妙に相場観を知ってるっつうか、こなれた感じでイヤなんだよ!



 余計な異物ちぢれげを排除したインスタントコーヒーの香りが鼻をくすぐる。

 おかげで少し落ち着くことができた。



 ……それにしても、だ。


 「ち○毛を運んでは予想外のところにばらまく妖怪だろ?自分の存在理由に疑いを持たないわけ?」


 「ま○毛を運ぶよりはマシだろ。考えてみろよ。お前だったらち○毛とま○毛、どっちを運びたい?運ぶ側も運ばれる側も、異性のほうが良いだろ?」


 ちょ!おま!

 もう少しこう、表現を包めよ!慎みってものはないのか!


 「童貞はこれだから。女に幻想を持ち過ぎだって。そういうわけで、ま○毛散らしはウチの従兄弟だから」


 「へ、へえ……やっぱいるのか、ま○毛散らし」


 「うっわキモっ!何キョドってんだよ!いるに決まってんだろ?ああ、ただ絶対数はち○毛散らしより少ないぜ?女子はほら、男よりは無駄毛を処理するから」


 生々しいなあ。勘弁してくれよ。

 あ、そうそう。


 「名前は?」

 

 「う、うるせーよ」


 「いいじゃん、名前ぐらい。まさか……」


 真っ赤に頬を染め、俯いてぼそぼそと。

 しかし俺の耳は、確かにその響きを捉えていた。

 「ち○子」


 

 君はラッキースケベなんかいらない。いや、それは嘘です。だけど……

 その顔が最高のご褒美です!!



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