プロローグ
よろしくお願いします。
耳鳴りがしそうな程に静かなその空間は、どこまでも暗闇が広がっている。彼等が逢うのは、いつもそのような空間だった。
いや否。
その空間でしか逢えないのだ。
暗闇の中、二人の姿だけが灯りに包まれていた。
「本当に良いのかい…?」
漆黒のローブに身を包んだその青年は、静寂を破り沈痛な面持ちで問いかける。
「ああ。その為に準備をずっとしてきたからね。」
答えた青年は、整った顔を僅かに歪め、どこか悲痛な…それでいて覚悟を決めた瞳をしていた。
「…ありがとう。」
目を閉じ、頭を下げる。
酷いお願いをしたとわかっている。無関係な少女を、自分の願いの為危険に巻き込もうとしているのだ。
でも、それでも。
どうしても力を借りたかった。そして、この目の前の優しい青年に、ひどく辛い決断をさせてしまったのだ。
「お礼はまだ早いよ。まだ何も始まってない。そもそも成功するかもわからないしね。」
そうして、顔を上げて、と声かける。
「大丈夫。俺の大事なあの子は、きっと君の期待に応えるよ。とてもまっすぐで、優しくて、あたたかい子だから。」
だから…と、顔を上げた青年の目をまっすぐ見て言った。
「あの子を守ってくれ。それが条件だ。」
「約束する。……ありがとう、シュウ。」