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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

―フラット―

わたしの秘密は床下にある

作者: 天界音楽

 美しい女だった。

 簡素な衣を身にまとい、長い亜麻色の髪を風に揺らしていた。


 シロツメクサの花冠を戴き、蠱惑的こわくてきにわたしに笑いかける。

 

 白樺の林。

 春の午後。


 裸足で緑踏む女がいた。


 手招きすれば笑って逃げた。


 追いかける。

 追いかける。


 ついに腕に捕らえれば、女はわたしを引っ張り、共に野草の褥に倒れこんだ。


 嬉しそうにわたしに口づける女。

 この女は妖精ニンフだろう。

 では、この口づけは祝福か、呪いか。


 わたしは陽の光の下に彼女を暴き立てた。

 円やかな乳房とくびれた腰、へその下の茂みは淡く、閉じられた脚によって秘密を守っている。


 女はわたしの手をその小ぶりな果実へと導いた。

 

 妖精ニンフは人間との間に子どもをもうけるために里へ下りてくると言う。

 交わりが終わればそのまま二度と戻ってこない。


 そうはいくものか。

 

 わたしは妖精ニンフの首を締め上げた。

 苦悶の声がかすかに聞こえ、ぱたりと白い腕が落ちた。


 恨めしげな双眼がわたしを見上げる。


 ああ、


 ああ、この女も違ったか。


 わたしは今日も妖精ニンフを探す。

 わたしの秘密は床下に葬った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ギリシャ神話のような美しさと殺人のコントラストがすさまじかった。
2017/11/04 07:06 退会済み
管理
[一言] 床下の秘密? ははっ。死体しか思いつかねー。 と思いながら読んでいたら…… うはぁああ! 当たったぁああ。 文章は、緑の中で真っ白なレースがたなびいているような幻想的な世界を脳内に描き出…
[一言] こんばんは。ギリシャ神話好きの檸檬 絵郎です。 「ニンフ」に誘われて読みにまいりました。 甘美な描写が続くかと思うと、最後には……驚きでした。 牧歌的で神秘的なお話かと思ったら……。 お…
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