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棺に眠る愛

作者: 森下冬子

叔母がなくなって4日目


告別式があって。


まあ家族葬ってやつだ。


昨日は通夜だったし、葬儀と関係あるのかないのか、ずっと私は具合が悪くて持ってきてもらった薩摩の焼酎やら薬やら飲んでばっかだった。


従兄妹が辛そうで、私もとてもシラフではいられなかった。


おばさんには正月には毎年会っていた。


この間も、会ったばかりだった。


でも正直、私はこのおばさんのことをよく知らない。

実家が鹿児島の方だってのは今日初めて知った。


おばさんは再婚で子どもが二人いるが従兄の兄貴の方は私と血が繋がっていない。

これも最近知ったことだ。


おじさんも再婚だ、前の奥さんは身体が弱く私が生まれる前に亡くなってしまった。



おばさんは病気だった。


昔から心を病んでいた。


そこが私と似ていて、少し気にかけている自分がいたのだ。



それでも一年ぐらい前から少し回復を見せていたのだ。


けれど今年に入ってからだろうか、病院に入院した。


私が以前入院を進められ結局行かなかった病院だった。


それからまた少しだけ回復したので、退院し家に戻ってきていた。


体の自由を奪われ、限られた範囲の中で限られたことしかできずにいた。


私もおばさんの不自由さはよくわかった。

本当に痛いほど分かる。


相当に不自由な思いをしたと思う。



おばさんが亡くなったと第一報を聞いた時は信じられなかった。


不慮の事故だった。


急すぎる出来事で頭の整理ができずにいた。



固まったのだ。



ただ眠るように逝ったと聞いた。

それが唯一の救いかもしれない。


おばさんの家系はみんな頭が良かった。

医者とか、博士とか、そういう家だった。


正直、従兄妹も頭がよくて昔は正月に会うのが憂鬱だった。


私が唯一劣等生だからだ。


いや、そんな話は今はどうでもいいことなのだが・・・。


最後に棺に眠るおばさんをみて本当に死んでしまったのかと思うくらい、まるで眠っているようで、もう一度名前を呼べば目を覚ますのではないかと思うくらいに自然だった。



まだ逝くには早いと思った。



火葬場で最後の別れの時



初めておじさんが声をあげて泣いた。



二人で歩いた道を語るには残された時間はあまりにも短すぎた。




初めてであった場所。


初めて触れたあなたの手。


時の風を感じて。


自分たちは今ここに生きているんだと。


日常という名の幸せを嚙み締めた。




そんな日々にさようならを言う日が誰にでもいつかは来るのだ。




できたら、できたら、私はさようならじゃなく。


彼女にありがとうと言いたい。



終わることのない愛と夢を、そして未来をありがとう。



あなたのことはみんな忘れませんから。


あなたがここにいたことを忘れませんから。



お疲れさまでした、どうか安らかに。



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― 新着の感想 ―
[良い点] その気持ちわかります。しんみりときました。
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