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威厳って結構簡単に崩れてく

ルメトス魔法学園学園長、ルーシェリア・アストラシュ。



言わずとしれた王道ファンタジー種族の一つ、エルフ族の女性であり魔法士の頂点に君臨する【七天】と呼ばれる魔法士の一人であるらしい。


【七天】とは魔法士協会という組織が定めた全魔法士憧れの七名の魔法士。とんでもない力量をもち、全員がSランク以上の言葉通り一騎当千の猛者であるらしい。



以上セレスさんと学園長が何かひそひそ話しているときにアルシアから教えてもらったことより抜粋。




ただそのルーシェリアさんなのだが、エルフのイメージ通り容姿端麗、胸元絶壁、魔法特化と三拍子揃ったザ・エルフ。ただ鋭い目付きというわけでなく、なんかにっこにっこした優しそうなおねーさんというのがちょっと意外。ただその瞳の奥ではこちらを見抜こうときゅぴーん的な擬音が似合いそうな光が灯っているが。




「……なるほど。事情は分かりました。アルシアさん、よく頑張りましたね」


「ふえっ?は、はい!!」


「ふふ……誇っていいですよ。人型精霊の召喚は正に超一流の証。この方があなたのハンデを帳消しにし、あなたとのコンビが素晴らしきものになることを願います」


「な……なります!私とトレスさんとのコンビは、きっと!!



おぉ……なにこの人!教育者の鏡!!俺今本当に感動してる!エルフ学園長パターンですかあるある乙wwwwとか思ってた俺を殴って!




「さて……」



ふんす!と気合いをいれているアルシアを微笑ましそうに見ていたルーシェリアさんがこちらに向き直る。なんか姿勢を正されたのでこちらも背筋伸ばして応える。気分は軍の上官の前に立つ下士官。



「まずは自己紹介を──ルーシェリア・アストラシュと申します。この学園の学園長を勤めさせていただいております。以後お見知りおきを」



深々とお辞儀をされ、やはり戸惑ってしまう。元々小市民だし本当にそういうの慣れてないんだってば…………



「あーと、アルシアにも言ったんだがそんなに畏まらなくてもいいぞ?というかむず痒い」



そう言うとルーシェリアさんは何故か訝しげに顔を上げる。その顔にはありありと疑問が浮かんでいるのが分かった。


あーそうか。もしかしてあれか。

高位精霊って無駄にプライド高いし、まさに敬えーって態度なんだよな。神としての仕事中に一度だけ精霊界を訪れたことがあったのだけれど、そのとき俺のことを知らなかったらしい高位精霊にとんでもない上から態度でものを言われたことがある。その高位精霊は後で精霊王の側近にぶん殴られてたけど。



「確かに俺は高位精霊だが、そういう何て言うの?高圧的というか威圧的というか……そういうのは嫌いなんだよ。だからまぁ気楽に接してくれればいいって話」


「なるほど……そのような高位精霊様もいらっしゃるのですね。私が以前お会いした高位精霊様は……その、なんといいますか。少々短気な方でして」


「あー…………」



それは災難。けど高位精霊にあったことがあるのか……へぇ。長生きするエルフなだけある。



「…………それでは失礼を承知で一つだけ質問をよろしいでしょうか」


「んん?まぁ答えられることなら」


「では──────
















──────貴方様は、本当に高位精霊なのでしょうか?」













………………へぇ?





「どうしてそう思う?そしてもし高位精霊ではないのなら、俺は一体なんだと思う?」



俺の後ろであわあわしているアルシアを横目に不敵な笑みを浮かべてルーシェリアさんに質問を返す。




なんて格好つけてるが内心冷や汗だらだら。どーすんの?神ってバレてる?いやいやそんなまさか…………




「私は以前に高位精霊様にお会いしたことがあります。その時の高位精霊様と貴方様は明らかに────格が違う」



格。まさにその通りだ────高位精霊はあくまでも精霊。神とは存在格があまりにもかけ離れている。レベルも違えば────文字通り次元も違う。



「私はエルフです。精霊には縁があります────故にこそ高位精霊様にお会いする機会もあったわけですが。その幾多もの精霊を見てきた私の目が言っています──────貴方様は()()()()()ではない」



ごときとは…………精霊を敬うエルフとは思えない発言だ。だがもう彼女はわかっているのだろう、俺の正体を。







「貴方様は────神霊ではないのですか?」






部屋の隅でセレスさんがハッと息を飲むのが聞こえた。

アルシアが小声で「どーしよ、ばれちゃった!?」と言っているのが可愛い。

ルーシェリアさんの首筋を一筋の汗が垂れていった。





………………ま、いいか。答えに自力で辿り着いたなら答えてやるのが神ってもの。





「─────如何にも」




まぁ一種のパフォーマンスってことで。



ほんの少しだけ、神格を解放する。

ぎしりと空間が俺を基点に歪み、軋み、捻れ曲がる。

この部屋のわずか三名の人間は、この世界の管理者を。






神を目の当たりにした。






「我が真の格は神格。千年もの時、人を街を文明を外敵から守り抜き、その功績を称えられ讃えられて神の座へと誘われた。我は神霊。神の一柱。その真名を────」











「【不朽の千年城壁(フォートレス)】」







◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆








やっちまったぜ!テヘペロ☆




……やめよう。壮絶に気持ち悪い。



調子のって神格ほんの、ほんの、ほんの少しだけ解放したら三人ともぶっ倒れてしまった。


いやでもさ?下界の者が自ら答えに辿り着いたんだからきっちり対応して答えるのが神って思わない?そこで誤魔化すと色々威厳的なのが……




「……………うぅ」


「こ、ここは……」


「確か私は……」


「…………起きたか」



三人も目を覚ましたようだし、とりあえず謝っとくか…………



「……すまん。ちょっと調子のった」


「い、いえ……大丈夫ですよ、トレスさん」


「…………あれが、神」


「凄まじき威圧感……」



約二名恍惚としているのは何故でしょうか……やだ。俺の神格って魅了効果とかあるの?ねぇよ。



「…………はっ!失礼。少々取り乱してしまいました」


「本当にすまんな、ルーシェリアさん」


「いえ!大変お見苦しいところをお見せしてしまいました!!」



……あーもう。



「堅苦しくなりすぎるの禁止。神の命令な」


「…………………………分かりました」



葛藤が長ぇ…………



二人が渋々ながらも頷いたのを確認したら、脇道にそれまくって脱線どころか市街地に突っ込んでる話を本題に戻さないと。俺らは元々使い魔登録をするために来たんだよ。今の今まで忘れてたけど



「そ、そうでした。使い魔登録ですね。ではアルシアさん、こちらの書類にサインを」


「は、はい!」


「………………書き終えましたか?では次に契約印を確認します。アルシアさん、フォートレス様、契約印をお見せください。同型のそれを我々が確認し、確認のサインをすれば登録完了です」



見せるのか、胸元を…………まぁしゃあない。男だし何を恥じらう必要がある。堂々としていればいいのさ、堂々と…………って



「……?アルシア?どうかしたか?」


「そ、その…………」



俺は胸元をはだけさせて確認体勢になっているというのにアルシアは顔を赤くしたまま動いていない。どうした?



ルーシェリアさんとセレスさんは俺の胸元に紋章があるのを確認すると何故か苦笑いを浮かべていた。なんやねん。



「フォートレス様……契約印とは確かにこの人と契約を交わしたという証明となり、そしてなにより契約者との絆を示すのです。その契約印の紋章は…………使い魔と契約者、どちらも大体同じ体の位置に現れるのですよ。使い魔が狼型で、紋章が契約者の右手に現れれば狼型の右前足に現れれるように。今回の場合フォートレス様が人型なので、完全に同じ位置にあると思われます……」



ほほぅ。つまり?アルシアちゃんの手のひらに包めるくらいの大きさのマシュマロの谷間に紋章があるということでそれはつまりご褒美ですか?



「……フォートレス様。鼻血が」


「おっと」



何故だろう。三人からの目線から感じる尊敬パラメータが下がった気がする。



「……フォートレス様の形は確認しました。アルシアさんのも確認するので、別室に一旦行きましょうか」



なん……だと……



セレスさんとアルシアは連れだって学園長室の中にある扉を開けて別の部屋へ行ってしまった。

そんな馬鹿な…………!!この世には神も仏もいないのか……!!



「……フォートレス様。血涙を流しながら拳を握りしめるのもよろしいのですが、少々お話をさせていただいてもよろしいでしょうか」


「あっはい」




なんだかさっき神格を解放したときに与えた神の威厳がボロボロと崩れていっているような気がしないでもない。

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