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防御極振りと攻撃極振りの異世界譚(仮)  作者: 柴犬
プロローグ こうして二人は邂逅する
2/8

神だって社畜ることはある

────天界。第三神殿【アルナ】執務室にて────






「主神様。きっとこの書類の山は俺を殺そうとしています。神格解放して燃やし尽くしてもいいですか?いいですよね」


「ふざけないでください、トレス。馬鹿なことを言って口を動かす前に手を動かしなさい。手を」




俺は何をしているんだろう。



心の底からそう思った。俺は何をしているんだろう。





ぐるり、と周りを見渡してみた。



まず目の前にはずっと起動しっぱなしのノートパソコン。画面には文字列が延々と続き、黒い文字とブルーライトが目に痛い。


全方位、机の上とか床とか空中とか明らかに物理法則を無視したところに、明確に物理法則をスルーした高さで書類が積み重ねられている。


机のノートパソコンの横には何十本もの栄養ドリンクの空き缶が散乱し、カップヌードルやゼリー系栄養補給のパックのごみが机の周りの落ちている。


鏡を覗けば隈、ボサボサの髪、じょじょりしている髭。不機嫌そうな目。完璧なまでに超過労働者です本当にry)。




まぁ結論を言うと。社畜っています。




「ってなんでじゃーい!!」


「……うるさいですよ、トレス」


「いやでもですよ主神様!!聞いてください俺の波乱万丈人生!!

テンプレの如く女の子を助けてトラックに引かれたかと思いきや、建設されて100年たった城壁の付喪神になってそこから追加で900年中の人とか建物を守り続けて内乱起こってあーもう終わりかなと思ったら1000年守り続けた功績として神にしてあげますって言われて神になって天界に住んで終わりのない書類仕事を続けている!!

ってどう考えても最後のだけ浮いてますよね!?」


「……長いです。知ってます。誰が転生させて神に引き上げたと思ってるんですか。この問答も何回目ですか。後うるさいです。頭に響くので黙っていてください」


「あっはい」



あ、やばい。普段は温厚な主神様もキレかけてる。だって書類の山の向こうからなんかオーラが見えるもの。禍々しい、おおよそ神が出しちゃいけないようなオーラが。



「なぜ私のところにだけ……他の仕事をしない主神格に回せばいいじゃないですか……」



…………うん。そっとしておこう。




かたかたかたかた……たーん、というキーボードの音とすっ、ぺら……と書類を移動させる音が執務室に響く。

この執務室には俺と主神様の二人だけしかいない。そもそもこの場所は主神様──守護神アルナが仕事をする場所であって俺のような下級の神がいて良い場所ではないのだが…………あまりの仕事の多さにこの部屋に報告に来た俺が引き留められ、手伝うことになったのだ。







…………それが体感5日前の出来事。


それから今の今までこの部屋に缶詰め。神は死ぬことはないといえ、前々世は人間であった俺にしてみれば気分的に死にそう。いや本当に。







本当に数奇な人生だ、と溜息混じりに思う。いや今は神生か。



この俺が今いるこの世界は異世界【アストレイト】の神が住まう天界と呼ばれる場所。その景観は…………古代ローマのような印象を受ける意匠を施された()()()()が建ち並ぶ都市だ。


始めてこの天界を訪れたとき──アストレイトの時間換算で言うと大体200年前──にこの高層ビル群を見たときは神も近代化しているのか、と思った。パソコンだってあるしタブレットのようなものだってある。色々細かい所やそれを扱うのが者が超越存在でなければ普通の現代世界と変わらない。





人間として地球の日本で18歳まで生き。トラックに轢かれ。


異世界に転生して城壁の付喪神として都市を守り抜き。内乱により守ってきた都市は滅びて。


そして神として天界に召された。




こんなふざけているとも言われてもしょうがない経過をたどり、俺は今ここにいる。




「それで最終的に書類仕事してるんだから、面白いよなぁ……原点回帰ってやつ?」


「……トレス」


「分かってますって。働きますよ……マジでなんで神になってまで社畜に………」




さっきから負のオーラを撒き散らしているのは我が主神様。

俺を転生させ、そしてその功績から神として取り立てた張本人。【守護神アルナ】。


アストレイトの神は主神格が六柱と最高神一柱の計七柱が中枢となる。そして主神格にはそれぞれの担当する概念に該当する下級神を部下として従えており、それらを全て含めて【アストレイトの神々】だ。もっとも人が主に信仰するのは主神格七柱の神々なのだが。



【最高神 オーレイド】


【戦神 ガイス】


【守護神 アルナ】


【魔法神 サイスト】


【自然神 キュレム】


【時空神 テイガン】


【生命神 フォレス】



この七柱は正に真の神。俺なんか目の前で神格解放されれば一瞬で蒸発する。


ただ、色々な神話でもある通り神というのは欠点もあるわけで。




「もう無理です……これもそれも他の主神が仕事をしないから……!!」



……ぶっちゃけまともに働いているのは我が主神様と自然神、生命神くらい。他は少しはやる神もいるらしいが、結構な量を下級神に任せ、そのとばっちりがこちらにも流れていているのだ。








…………………つーかもう本当に限界。そろそろぶっ倒れる。あーあ都合よく誰が俺を召喚とかしてくれないかな……そうすればサボれるのに………



と、心の中で呟いた瞬間。






「…………あ?」


「…………え?」




俺の足元に、眩く輝く召喚魔法陣が展開した。



「きゃっほう!!ナイスだぜ知らない誰か!!これでサボれる!!」


「馬鹿な……!!神を召喚しようとしているのですか!?そんなこと不可能です!!」



光を見て異常に気づいたのか主神様が書類の山を越えてこちらに慌てて近づいてくる。長い綺麗な銀髪やら整いまくった顔立ちとか戦乙女のような格好とか出るとこはでて締まるところは締まった素敵なボディとか久しぶりにみたなぁ………じゃなくて。



「いえ、主神様。どうやらこの魔法陣は【城壁神としての俺】ではなく【城壁の精霊としての俺】を呼び出そうとしているみたいですね」


「神格を制限して召喚……ということですか」


「みたいですね。……つーか見る限り俺を召喚しようとしたつもりはなく偶然の産物みたいですよ?召喚者は土属性の精霊を呼び出したかったようですけど、依り代として用意した石が【千年城壁】の欠片みたいで。なまじ魔力量が飛び抜けているだけに不完全ながらも成功したようですねぇ。

まぁそれでも魔力が足りないので生命力も必要ですが……そこらへんは能力を制限して節約してあげますか」


「これは…………召喚者は馬鹿なんでしょうか。(ゲート)を開く先が天界になっています。精霊界へのゲートを正常に開いていれば城壁の欠片もそこまで干渉せずに大地の精霊がちゃんと召喚されていたのに」


「天界へ開いた(ゲート)。依り代の城壁の欠片。飛び抜けた魔力量。精霊ではなく神になっていた俺。偶然が重なりあった挙げ句の神格制限召喚か。まぁ楽しそうなんで行ってきますね、主神様」


「え?えぇ…………いえちょっと待ちなさい!!貴方仕事はどうするつもりですか!!??まさかほっぽりだして……!!??」


「今盾の神に念話送って来るように言っときました!!さぁ行こうか久しぶりの下界へ!!さようなら社畜!!こんにちは休暇!!」


「こ、この卑怯者ーー!!!!」





光へ包まれる直前に見た主神様の涙目に不覚にもキュンときてしまったどうも俺です。


さぁて、ファーストコンタクトは大事だよな!!ここはおちゃらけるか……その後で魔王みたいな感じで偉そうに!!よしこれで行こう!!


いよいよ200年振りの下界だぜ!!仕事から一時的にも解放されたこともあるしテンションあがるわ!!




光が薄れていき、魔力が自分に流れ込んでくるのを感じる。

擬似的な肉体が構築されていき、一気に視界が開けた。





「いぇーーーい!!!!呼ばれて飛びでて俺ですよっと!!

くっくっくっ!!末席とはいえ神の一柱を呼び出すとは中々やるな!!その蛮勇と誇りと知識に免じて話だけでも聞いてやろう────ってなんだ!?俺を呼び出したと思わしき少女がぶっ倒れてるんだけど!?メディック!!メディーーーークッ!!」




目の前でぶっ倒れている美少女を見て動揺しながら俺は思う。





────なんだか面白そうな奴に呼び出された、と。







◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆







これは、とある二人の物語。



片や型破りな魔力量を持ちながら重大な欠陥を抱える少女。


片や神となりながらもその能力を大幅に制限された絶対守護の力をもつ元人間、元城壁、現神の少年。



二人がおりなす、異世界の物語である。

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