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■夏祭りの後で:街の外の人々■

領外からの祭りへの出店は毎年毎年審査が厳しいが、今年は取り分け厳しかった。


「あんだけ大盛況だったから、来年はもっと審査が厳しくなるかもなぁ。だがよぅ、今年は大儲けできたし来年も店が出せるように祈るべ」


懐をポンと叩いて、歯抜けジィが笑う。ジィも俺も長年辺境領の夏祭りに出店しているが、今年のレッテンの集客動員数は過去最高だったと思う。


「俺も、来年も出店出来るように願うよ。可愛いお客さんと知り合えた事だしなぁ」


医薬品の作り手と巡り会えたのは僥倖だが、後からお嬢さん方の噂を聞いて『あの二人』と知った。


王都から放り出された、可哀想な被害者達。田舎の商人の俺達ですら二人の境遇は知っている。あんなに溌剌としたお嬢さん方だとは夢にも思わなかったけど。



今年の審査が厳しかったのは、恐らくあのお嬢さん方の為なんじゃなかろうか。



街の人々は領外からの客や商人にこぞってあのお嬢さん方の事を自慢たっぷり得意気に話していたが、お嬢さん方の激しい愛されっぷりに聞いているこちらの頬が緩んじまった。



こんだけ領民に溺愛されてるお嬢さん方なんだから、王都から余計な嘴が突っ込まれて放置したら、領民が怒りそうだもんな。

入領審査や出店審査が厳しいだけなら、領民が「あの二人の為?そんなの贔屓だ!」なんて言う事もないし、逆に辺境伯様の好感度が上がるだけなんだろうなぁ…。



審査がより厳しくなったとしても来年もまた是非、出店したい。あのお嬢さん方の新しい話が聞けるのが今から楽しみだし、医薬品作りのお嬢さんの為に今度は秘蔵の薬種を持って来ようじゃないか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


店仕舞いにはちょいとばかり早かったけど、育ち盛りのお嬢さん方へオマケと称して無料であげちまった所で黒字にゃ変わりない。


後からエルディオン様が弟君とお出でになって、品切れですよと言った時の落胆ぶりには申し訳無かったがね。


「あのウッカリ二人組の事だから、大分前の説明なんてすっかりさっぱり忘れてるだろうからなぁ。あんたのパン、あいつらに食わせてやりたかったぜ」


大貴族の坊ちゃま、この辺境伯領地の未来の領主様からの光栄なお言葉に思わず身震いしちまったよ。


「二人組ですか…?最後に来たお客さんが、ちょうど可愛いお嬢さん二人組でしたよ」


「ん?もしかして、サラサラ頭とふわふわ頭か?」


「その説明は失礼ですよ。プラチナの髪で濃緑の瞳のお嬢さんと、焦茶の髪で水色の瞳の僕と同じくらいの背丈年頃のお嬢さんでしたか?」


弟君には申し訳無いのだけど、エルディオン様の失礼な説明だけで通じてるんだけどねぇ。

そうですよ、と答えたらエルディオン様が食べさせてやりたいと言っていた相手だったようで一件落着、めでたしめでたし。


「色気より食い気だからな、あいつら。花だ宝石だなんて贈ってみろ、薬や細工物の材料をありがとう!ぐらいのことは言いかねんからな」


「失礼ですってば、もう。…でも、何故でしょう、妙に説得力があるのですが……」


おやぁ、もしかして、もしかするのかねぇ。ご兄弟の会話のこそばゆさについにやけちまいそうだよ、危ない危ない。


ヴィーテンへ戻るのに良い土産話が出来たし、向こうのヴィーテンでも有名な噂のお嬢さん方とも会えて良かったよ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


姉ちゃんの嫁ぎ先がレッテンだから、今年は泊まり掛けで3日間も夏祭りを満喫できた。去年までは中日にしか来れなかったから浮かれてはしゃぎ過ぎたかもしれない。


約束通りに姉ちゃんの店の手伝いもしたら、姉ちゃんの旦那さんのかーちゃんが内緒で小遣いくれた。すげぇ良い人!


最終日の夜、周りがご機嫌で歌って踊ってる中で俺はただひたすら立ち尽くしてた。



だってよ、目の前で男達の誘いも、超絶美形イケメン極上貴公子エルディオン様直々のお誘いも、その弟様のお誘いも、ぜーんぶバッサリとお断りしてんだぜ。


領主様のお孫様だぞ!?楽しい夏祭り気分が一気に吹き飛んじまったよ。騎士が駆けつけてきてあの二人が連行されちまうの、見たくないなぁ……


………………あれ?まさか、そんな。え、良いのか??



綺麗なプラチナの子と、可愛い焦げ茶の子が罰せられてしまうかとヒヤヒヤしていたけどそんな事にはならなかった。



姉ちゃん達が『そろそろ帰るわよ』って言って迎えに来たから、帰る道すがらにさっきの事を話したら姉ちゃん達は大爆笑していた。


それと、エルディオン様の誘いを断ったり、気安く話すのはあの二人に限っては暗黙の了解で全くお咎め無しなんだそうだ。平民なんだろ、贔屓か?って聞いたら『功労賞みたいなもんだよ』だってさ。


夏祭りの前に、開拓地が魔物の群に襲われた時、あの二人がエルディオン様の助けに応じて大活躍した事への『功労賞』なんだとか。魔物の群の話は聞いてるし、奇跡的に死者が出なかったとも聞いてる。でも、その奇跡をあの二人が引き寄せてたなんて…すげぇ二人組なんだな…。


贔屓か?なんて聞いたのが恥ずかしいと姉ちゃんに言ったら、黙って頭を撫でてきた。



「…あの二人らしいわね~、その現場が見たかったわ!!エルディオン様のお誘い自体が奇跡だけど、それを断るなんて流石あの二人だわ!見たかったわ、ホント見たかったわぁ」


「俺も見たかったなぁ、それ。またあの二人の伝説が増えたのか、良かったねぇ生でその瞬間を目撃できたなんて。羨ましいよ」


村でも二人組の噂は聞いた事があるけど、あの二人がその二人組だったんだ。へぇ。なんか納得だ。


でも、想像してた二人組とだいぶ違ったなぁ。健気で儚い感じなのかと思ってたけど、図太くて逞しい元気な二人組にしか見えなかったや。



来年は俺も誘ってみようかな。一人だけ断られたら辛いけど、あれだけズラーッと一斉に断られてたら目立たないしダメージ無さそうだし。


それに、来年は踊ってくれるかもしれないしな。

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