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東へ進め!夏祭り④爆弾発言

真っ赤な頬で息を弾ませて帰宅するなり、ドタバタと母達を出迎える準備に取り掛かる少女達。


「やっぱり、スープくらいは作ってもバチは当たらないと思うの!」


「そうね!あ、せっかくだものよく熟れたピュアチも冷やしておきましょうか。お母様達、きっと喜びますわ!」


キャッキャと楽しげな二人は、晩御飯の支度を済ませてそわそわと落ち着かない。家族達にお土産を用意しようと作業スペースをあさったり、手紙を書き散らしたりと忙しない。



「こんばんわ」



控え目なノックとほぼ同時に玄関を開ければ、顔見知りの侍女と騎士が私服姿でニコニコ。その背後には母達が平民風の旅装で微笑んでいる。


「では、明日の朝にまた伺いますので」


母達を送ってくれた侍女と騎士にせめてお茶でもと声をかけたが、二人はモジモジしながらこれからデートだとゴニョゴニョ言うので笑顔で見送った。



「ここが、リューちゃんとエルちゃんのお家なのね」


「素敵な雰囲気の良い家ですわね…」



母達は、感慨深そうに室内を見渡して呟いた。



「お屋敷じゃないけど、狭くても小さくても私達の『お城』なんだよ~」


エルダが得意顔で言えば、エルダの母は愛娘のフワフワの髪を慈しむように撫でる。

男爵家といえど、貴族の娘として生まれ育った愛娘が平民としての暮らしぶりを胸を張って誇れる事を喜ぶ母。


「リューちゃんもエルちゃんも、本当に幸せそうね。元気そうだし、安心したわ~。ところで、このご馳走の山は何かしら?」


ウキウキとテーブルの上の食事を眺めるリュールの母。母達と娘達の、楽しい晩御飯が始まった。




「コルセットをしてなくて、本当に良かったわ…」



リュールの母が、ポッコリと膨れた腹をさする。その傍らではエルダの母も苦笑いしている。愛娘達の稚い勧めを断れる筈がなく、結構な量を食べてしまった。


「そういえば、お母様達は普段はコルセットをしておられましたわね!すっかり失念しておりましたわ」


「平民暮らしでコルセットなんて無用だもんねぇ」


娘達の羨ましい発言に、母達は揃って溜息をつく。窮屈でもコルセットが必要なお年頃のご夫人方なのだ。



食後の薬茶を飲みながら、四方山話は尽きない。



他愛ない話の流れで『ああそういえば』とリュールの母が思い出した事を口にする。



「2人とも、此処レッテンにはギルドがあるのは知ってるわよね?どうにもお金に困った時にはコレを持ってギルドマスターを尋ねてご覧なさい」



リュールの母が手渡したのはネックレス。



「あら……………え?」


受け取って、飾りを見たリュールが固まる。エルダが覗き込んで『えええええ』と驚愕もあらわに、ネックレスとリュールの母を交互に何度も見る。



「うふふ~。ビックリした?それね、本物よ。お母さん、こう見えて凄腕の《魔物ハンター》さんだったのよ~」



ドヤ顔でえっへん、と胸を張るリュールの母。


ネックレスの飾りは平べったい銀のプレートに国とギルドの名、その裏には数字とともに【魔物ハンター:イフリーナ】と彫刻が入っている。



ギルド公認の魔物ハンターの中でも、ほんの一握りの者にしか与えられないという【ギルドプレート】に刻まれているのは、リュールの母の名で間違いない。



「結婚前に稼いだお金、少しは残ってると思うの。いざという時には使っても良いわよ~。でも、無駄遣いはダメよ」



ギルドプレートの特典やら何やらを考えれば、無駄遣いがどうこうというレベルでは無いと思うエルダの母。

娘達ならばギルドプレートの悪用方法・・・・は知っていても自分達が悪用するという発想には繋がらないだろうから問題無いだろうと、口は挟まずに見守っている。



「お気持ちだけで結構ですわ、お母様。それこそ、領地や家の為にお母様が持っていてくださいな。私達、平民にしてはちょっとお金持ちなんですの。ね、エルダ」


「うん!ちょっと待ってて、持ってくるね!」



ネックレスを返した少女達が、机に並べたお金の山。『ちょっと』どころではない大金に母達が度肝を抜かれる。


少女達の話を聞きながらら几帳面に記入された収支帳を読むエルダの母は感嘆の吐息を漏らす。リュールの母は娘達の経済感覚がしっかりしているとご満悦で、安心してネックレスを己の胸元へとしまった。



「それにしても。お母様が魔物ハンターだったなんて…お母様、もしかして魔法が使えますの?」


「え、まさか。幾ら私が優秀で凄腕ハンターで優しくて賢くてしっかり者でも魔法までは使えないわよ~」



図々しい単語はスルーして、魔法が使えないのにギルドプレートが与えられるほどの魔物ハンターとはどういう事かと尋ねるが『趣味で魔物狩りしてたら、くれたのよ~』という返事しか返ってこなかった。



「貴女達なら魔法が使えても不思議ではないわね」



エルダの髪を弄り終えて、今度はリュールのサラサラの髪を弄びながらエルダの母が笑って言った。


「うん、使えるよー」


冷やしたピュアチを皿に盛りながら、エルダがごく自然に肯定する。リュールも頭を動かさないようにしながら、学園で魔力に目覚めた事などを簡潔に補足した。



「「あら、まぁ」」



娘達の爆弾発言に、母達が見事なハモりで返した。



リュールの母は呑気に凄いわ!とニコニコ。エルダの母は娘達がこれまで魔力を秘匿していた事実を褒める。



魔力という稀有な力を宿しながらもそれを秘匿せざるを得ないと判断するような境遇だった事、家族にすら告げずに居たのは少女達なりの配慮だろうとは聞かなくても分かる母達だった。

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