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東へ進め!町へ、街へ

翌日に納品を控え、そちらの支度は既に昨夜に終えた二人。


「では、町へ」


「遊びに行こー!!」


と、いうことで昼前に町へ向かってトコトコと歩き出したものの。街を出る前に荷馬車の老夫婦に拾われた。


「ありがとー、えへへ。楽しちゃった!」


「構わんよ、どうせ町へ帰るとこだったからついでだ」


街に住む娘夫婦に野菜を届けがてら買い物に来ていた帰り、見覚えのある少女達が歩いていたので声をかけた老夫婦。

町へ遊びに行くと聞いて、行き先が一緒なのだから是非と荷馬車へ乗せてくれたのだ。


リュールとエルダが丸薬集めの礼を言うと、老夫婦が揃って『とんでもない!こっちこそお礼を言わなければ』と答えた。はて?と首を傾げればその訳を語ってくれた。



先日、ルゴール伯自らが町へ赴いて町の人々に直々にお礼の言葉を述べた。

平民ばかりの町の人々にすれば、大貴族様で雲の上の人である領主様からの礼の言葉に畏まりつつも感激した。


「その上、丸薬の代金だと仰って金貨を沢山頂いてしまったよ。町長さん、びっくりしてひっくり返っちまった」


金貨の使い道は細々としたものから、大掛かりな事まで様々らしいがどれも「町のみんな」へ還元されると聞いて少女達が笑顔になった。



町へ着いて老夫婦にお礼を言っていると、見知った顔が少女達に気付いてわらわらと集まってきた。



熱烈な歓待の言葉に、分かりやすく照れる少女達を見て町の人々がニコニコと明るく笑っている。

この少女達は時の人となっても、街の有名人となっても、町に居た頃と変わらない。それが町の人々にとって非常に好ましく、より一層の親しみを覚える。



「ミルタさーん!坊やも!久しぶり~!」


通りの向こうに、お目当ての人を見つけてエルダがピョンピョン跳ねながら叫んだ。あちらも気づいたようで、坊やが駆け寄ってくる。


「こんにちは、ミルタさん。かなり遅くなってしまって申し訳ございませんが、美顔軟膏ですわ。それと、材料のお礼もありますの」


往来での立ち話もなんだから、とミルタの家に招かれてお茶を飲みながら美顔軟膏を手渡す。

リュールがミルタに効果的な使い方や注意点を説明している間、エルダは坊やと遊んでいた。




「ミルタさん、凄く喜んでくれてたね!」


「えぇ、私まで嬉しくなってしまいましたわ。それに、エルダのお土産も坊やがとっても気に入ってくれましたわね」


エルダが坊やにお土産に渡したのは、小さな卓上箒。ミルタのお手伝い用に渡したそれを坊やは一目で気に入った。

自分用の道具、と聞いて幼子の目が輝いていた。オマケの小さな雑巾とセットでお手伝いにも熱が入りそうだ。


「女の子みたいで嫌がられたらどうしようかと思ったけど、あんなに喜んで貰えて良かったよー。ミルタも喜んでくれたし…あっ!今度はお祝いにまた何か考えなきゃね!」


そうね!!と、リュールが力強く頷く。

ミルタのお腹が、ふっくらしていたのだ。


普段は父親と畑へ行く坊やがミルタの『お手伝い』の道具を貰って大喜びした最大の理由もそこにある。ミルタのお腹には坊やの弟か妹がいるのだ。立派なお兄ちゃんを目指して小さな彼は母のお手伝いに精進しているそうだ。




少女達はのんびりと歩いて街へ帰るつもりが、町の人々がこぞって『ぜひ送るよ!』『いや私が』『なんのワシが』と立候補してくれた。歩いて帰ると言ってみたが、それは女性陣から揃って却下された。


「こんな可愛いお嬢ちゃん達が歩いていたら、襲ってくださいって言ってるようなものじゃないか!!」


「明るい内なら大丈夫、なんて呑気にも程があるよ!夏祭り間近で浮かれたアホどもがいるんだからね!」


「お嬢ちゃん達の武勇伝は聞いてるけど、年頃なんだから用心に用心したって足りないくらいだよ?良くも悪くもお嬢ちゃん達には警戒心てものがとことん足りないんだから」


親切心からの注意のはずが少しずつ話がズレて、酔っ払い撃退や猪を仕留める、魔王リュールや女狐エルダだの話がおかしくなってきた所に、町長さんが街に行くから乗ってお行きなさいと声をかけてきた。


町の人々から見送りに『また来てね』と暖かな言葉を受けて街へと帰れば、街の人々からは『お帰り』と声をかけられる。



少女達は繋いだ手を上機嫌に揺らして家へと入って行く。

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