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東へ進め!毒蛇にょろり、お財布ホカホカ

魔物騒ぎの後、移動制限が解除されると再び森へ。


「おい、あんたら正気か?娘二人だけで森へ行くなんて親はどうした?見かけない顔だがどこの娘達だ?」


森へ向かう道中、町の男数名の一行にギョッとされた。


矢継ぎ早の質問に、ニコニコと自分達の身上を包み隠さず説明すると酷く同情された結果、一緒に森へ向かう事に。



「うわぁ!?…チクショウ!!」



森の中で少しばらけて採取中、男の叫び声に皆が何事かと集まる。リュールとエルダも駆け寄ると、うずくまる青年とその傍らに斬り殺された毒蛇。


「縛って毒を吸い出したが…この蛇の毒は強い……」


壮年の男性が絞り出すような声で『皆で神に祈ろう』と集まった人びとに告げる。


「そうですわね、ですがこの蛇の持つ毒性を薬で中和する事は可能ですわ。その上で現れる症状には対症療法で様子を見ながら数日間安静にすれば問題ないですの」


「何!?しかし、薬…街ならあるかもしれん。早馬を…」


微かな光明に縋るように男達が頷きあう。『一番足が早いのは誰か』と言い出したのでリュールは首を傾げつつ、紙包みを毒蛇に咬まれた青年に差し出した。


「宜しければ、どうぞ 。噛まずにお飲みくださいませ」


青年が丸薬を飲み下し、それを男達がポカンと眺める。

因みに、エルダは健気にも一人で獣や魔物はいないかと見張り役に徹している。


「あ、ありがとう!!なんとお礼を言えば良いのか…。貴重な薬なのに、会ったばかりの倅に躊躇いなく使ってくれるなんてよぅ…」


壮年の男性は、咬まれた青年の父親らしい。髭もじゃの強面を涙と鼻水でグチャグチャにしている。


「お礼なんて、水臭いですわ。私とエルダをご一緒させて頂いておりますもの、もうお仲間でしょう?それに、このお薬ならまた作れますからお気になさらないでくださいな」


貰い泣きしていた男達が目を丸くするのを見て、リュールが慌てて『私、ちゃんと医療ギルドの医薬品ライセンスを持っておりますわ』と付け加える。



その後、咬まれた青年は辺境伯の手配した医師の診察を受けて順調に回復。


男達からはお礼だと言って薪や野菜、干し肉を貰った。そのお礼にエルダの工芸品の中から実用的な物を幾つか渡す。




数日後。




薬に強い興味を示した医師がリュールを訪ねてきた。当初は警戒感の強い医師だったが、手持ちの薬と医薬品ライセンスの免状を見せると大興奮で全ての薬を買い占めて狂喜乱舞していた。


お礼に渡したエルダの工芸品はその質の高さと見た目の良さで町の人達に爆発的に大流行して、ぜひ買いたい譲って欲しいと人々が殺到した。実用品以外に装身具まで作り置きは完売した。



「街のギルドへ行く手間が省けましたわね。有り難い事にお財布もホカホカですわ」


「おまけに薪やお野菜、干し肉までいっぱい頂けて、冬の備えも捗りましたわね」


当初の予定とかなりのズレが生じている。良い方向へ。


なんだかんだで町の人達は少女達をすっかり受け入れて、ちょっとした差し入れの遣り取りをしたり、少女二人の慣れない平民暮らしを気にかけてくれる。


「ねぇ、リュール。私明日は朝からお洗濯とお掃除を頑張りますから…」


モジモジとはにかむエルダに、リュールが柔らかな笑みで続く言葉を待っている。聞かなくても察しはつくが、『おねだり』をするエルダが可愛いので先回りはしない。


「お昼から、遊びに行っても、良い??マルディアお婆ちゃんにお茶に誘われたの」


上目遣いのエルダに、リュールが頷く。ここ最近、町の老女達は『エルダとお茶をするのがステータス』という謎のブームを巻き起こしている。


「勿論、良くってよ。私も少しだけミモザの所へ遊びに行ってきますわ。流行りの恋愛小説を貸してくれるそうで、今から楽しみなの」


それぞれの時間を、それぞれの交友関係と過ごすようになってきている。それでも、二人の仲は変わらない。



朝はおはよう、夜はお休みを互いの顔を見て交わす毎日。


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