表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/96

◆壊れた鍵と魔物◆開拓地・テオール

魔物に襲われ開拓地へ行った。


「…無理すんなよ」


そんなに情けない顔、してねーと思うけど。ビアールのオヤジが俺の頭をグリグリ撫で回してきた。


「んー、平気」


壊れた建物、散らばる生活道具、地面のどす黒い染み。焦げた臭いや漂う生臭さ。…思い出して胸が苦しい。

それでも俺は、顔を上げて胸を張る。いつも脳天気そうに上を向いてる、あの二人のように。



「開拓地の周りを一周したら、輪を広げてもう一周。その後は、近くの村も同じように頼む」



クルス様に、声を掛けられた。


「ハッ!承知致しました」


まだ見習いだけど、騎士の礼をすればクルス様が笑った。嫌な笑い方じゃなくて、暖かい笑い方だ。


「良い騎士になるね、お前は。頼りにしているぜ」


ふわっと風が頬を撫でて、ピュアチの香りが広がった。あ、これはクルス様の魔法だ…。



「村の見回りが済んだら、一旦こっちに戻ってくれ。じゃあな、テオール」



見回り中に開拓地から割と離れた場所で魔物を3体発見、その全てを無事にビアール達が討伐した。


近くの村は念入りに周ったが、魔物の気配はない。他の討伐騎士達も、魔物の痕跡は見当たらないという。


開拓地へ戻って報告すると、クルス様から労いの言葉を貰った。ビアールのオヤジやクルス様達が話し合いをする間に、開拓地のど真ん中からごく微かだが魔力を感じた。



魔物とは違う…けど、コレって魔力だよなぁ?



剣を抜いたまま、ジリジリと魔力の方へと進む。うん?何か変てこりんな物を見つけた。なんだこりゃ!?



「テオール!点呼に遅れるとは…どうした!?」



怒鳴りかけたビアールたが、俺が「クルス様は!?」と尋ねるなり大声でクルス様を呼んだ。すげぇ声だ。



「直ぐに案内してくれ!ビアール、ワズラーンを守れ。ワズラーン、念の為お前は俺達から少し離れて記録しておけ。弓兵、構えて待機せよ!」



報告を聞いたクルス様の顔が、怖いくらいに真剣なものになっている。


俺が感知したごく僅かな魔力。それは、確かに魔物の放つモノではない。もちろん、人間でもない。



「…これ、何ですか?」



緊張感のない間抜けな質問に聞こえるのは分かってるけど、でもホントに何なんだ??



「それこそ、【鍵の壊れたドア】ってヤツさ。よく見つけたな、テオール。これで次の被害は防げたんだ。お前の手柄で何十人もの生命が守られる」



やべぇ、全然意味が分からん。ビアールのオヤジは…あ!目ぇ逸らした!!オヤジも絶対分かってねぇな!


後でワズラーン様に教えてもらお。





あの二人に影響されて、呑気になってたんだろうか。




俺は至近距離でクルス様の魔力を浴びてひっくり返っちまった…。うう、情けない。オヤジや皆は慰めるけどさ、騎士見習いがこんな重大な任務中に女の子みたいに気絶なんて………恥ずかし過ぎて悔し涙が出るぜ。


クルス様は「テオールの感知能力が向上しているのに気付かなかったよー、スマン!」って爽やかに謝ってくださったけど。


俺、別に感知能力は変わってないんだよな。うう…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ