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東へ進め!三人娘とカミングアウト

三人娘とは、なんだかんだでお茶をする程の仲になっている。


乾物屋の娘がアーカイネ、正義感強めの姉御肌で三人娘のリーダー格。

食料品店の娘はキロイナ、目つきと口の悪さに反して実は妄想力溢れる夢見がちな乙女の一面もある。

茶葉問屋の娘のミドリーロ。マイペースなのんびり屋さんだが三人の中で一番冷静。


三軒並んだ店の娘達は揃って春生まれの現在14歳。



「だーかーらぁ、あんた達は甘いのよ。もう、ほんとお馬鹿さんなんだから世話が焼けるったらありゃしない。いいわ、私がガツンと言っておいてあげるから」



アーカイネは呆れ顔で言えば、キロイナが頷く。ミドリーロはリュールの手製の薬茶に夢中で、流石は茶葉問屋の娘だねぇとエルダが関心している。


「このお茶、まだある?あ、違う、お代わりじゃなくて茶葉の方。一杯分でいいから分けて欲しいなって」


リュールが快諾して、忘れる前にとその場で紙に一杯分を包んで手渡した。


「ありがと。お礼に今度、私の手作りの花びら茶を持ってくるから楽しみにしてて。アーカイネ、ユーシアにガツンと言うなら少し離れて言った方が良いよ。あの人、すぐに手が出るもん」


薬茶に夢中で聞いていないかと思ったら、ちゃんと聞いていたらしい。


「エルダにも手をあげようとなさった方ですものね。…アーカイネ、危ないからユーシアさんには近寄らないでおいてくださいな。あなたの優しさだけ受け取っておきますわ」


「そんなぬるい事は言ってらんないでしょ。…まだ外に居るみたいだし」


キロイナがちらりと開け放った窓の向こうを目だけで確認する。向かいの建物の間に、ユーシアがいる。

建物の陰とはいえ、炎天下で一時間はああして少女達の家をじーっと見つめている。


ユーシアがエルダに襲いかかり魔王と化したリュール降臨で土下座してからというもの、ユーシアが少女達の家をじーっと見つめている事がもう何度かあった。


騒ぎを知っているご近所さんが少女達に仕返しするつもりかと警戒して声をかけると逃げるし、リュールやエルダが直接ユーシアに声をかけようにも、玄関から出てユーシアの方を向けば脱兎の勢いで走り去ってしまう。


なので、害はないのだが理由も分からないままで不気味。


今日も、三人娘が遊びに来てユーシアを見つけた。アーカイネが声をかけたら逃げ出した割に、三人娘が家に入って暫くしたらまた戻ってきている。



「んー。取り敢えず、騎士団の人には話しておくべきだと思うよ、こんな感じで見張られてるみたいでなんだか不安です、って相談しとけば見回りの時にでも気にかけて見てくれるはずだもん」



ミドリーロの提案にエルダが「名案だね!」と関心していた最中に、表がザワザワと騒がしくなった。



『あたしはただ愛しのリュール様を遠くから見守ってるだけだって言ってんだろ、この変態騎士野郎!!』



けたたましい叫び声の内容にアーカイネが飲みかけの薬茶で盛大にむせ、キロイナは薬茶を噴き出している。



連日の不審な行動はとっくに騎士団の耳に入っており、今日は現場を抑えての事情聴取…のハズが騎士に声をかけられて動揺したユーシアがあのような盛大なカミングアウトを叫んだらしい。


騒ぎの元凶のユーシアは騎士団に散々叱られた、とも聞いている。だが、リュールは疲れきった顔で「そうですか」と遠い目で答えたのみだった。


「なんでも、リュール嬢ちゃんのあの冷たい目が堪んないだの、あんなの初めてだのノロケるもんだから取り調べの騎士様の方が真っ赤になったんだってさ」


耳の早いアマンダがあれこれ教えてくれるのだが、リュールの瞳はどんどん曇る一方だった。





翌日には街中にすっかりその話が広がっており、『女を誑かす魔性の少女なんだってな、お前。すげーな』と半笑いで話しかけたテオールはリュールに氷のような目で睨まれていた。

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