東へ進め!お腹ぽんぽん
その後、内輪のささやかな昼食会となる。が、ルゴール辺境伯家の昼食ともなればささやかと言っても『ご馳走』なので、リュールとエルダにとってはまさに『夢のような』時間。
普段の少女達の食事は平民パン系や野菜スープにサラダ、時折魚や肉かチーズの副菜。特に不満もない慎ましい質素な食生活だが、本日の昼食会の素材は全て極上で手の込んだ多種多様な料理は盛り付けまで含めて最高級。それも『堅苦しいマナーはいらない、美味しく食べるのが唯一のマナー』とあればまさに至福そのもの。
ニコニコぱくぱくと気持ち良く食べる少女達に、食卓をともにしたルゴール家の一同は自然と笑みが零れて和やかな昼食会となった。
昼食会が済み、マリリオンに誘われたリュールとエルディオンが庭の見えるサロンで寛ぎながらまったりと語らいを満喫している。
「そうですか、ではリュールさんとエルダさんは初めての夏祭りになるのですね」
「はい。私もエルダも、今からとても楽しみにしておりますの」
「あー、今年は新規の納品許可証の件もあるから、規模も大きくなると思う。マリリオンも大分丈夫になってるんだろ?今年は街まで見物に出れそうなんじゃないか?」
「そうですね!今度、先生とも相談しておきます。僕も夏祭り、是非とも間近で見てみたいです…!」
マリリオンは今まで一度も祭り見物などをしたことがなく、土産物や土産話でしか夏祭りを知らないという。夏祭り初心者二人に、エルディオンがオススメ情報を伝授していた。
エルディナとクルス、エルダが午後の日差しを浴びて緑の葉を輝かせる庭の四阿でのんびりとお喋りを楽しんでいる。
「村では秋の収穫後に個々にお祭りをしたりするのだけど、それは豊穣への感謝の色が濃いわね。夏祭りはと言うと、景気づけやストレスの発散が目的で行われるから、それはそれは賑やかなものになるのよ」
「ガルテンやヴィーテンからも店が出るからね、屋台もひしめき合って中々のものだよ。君達も出店許可証を貰える歳になったら、お店を出すのも楽しいかもね」
「それはとても魅力的ですね!!じゃあ、今年は屋台の見学も兼ねて色んなお店を見て歩かなきゃ!」
出店許可証の話にエルダが強い関心を示し、エルディナが『いつか、二人がお店を出したら必ず行くわ』と約束をした。何気なく話題に出したクルスも、この少女達が屋台を出したら絶対に面白い事になるだろうなー…と想像していた。
エルディオンとクルスは仕事の為、それぞれ途中退席するのを機に少女達は合理して己達も帰途へつくべく謝辞を述べて領主館を後にした。
ご馳走でお腹いっぱい、夏祭りに向けて期待で胸を膨らませた少女達はご機嫌で家へと帰りつく。まずは、と二人は仲良く並んで座り手紙の返事を書き始めた。
書きたいことは山ほどあり、書いては読み返して書き足す。長くなり過ぎたかと書き直しても、結局かなりの厚さになってしまった。
気が付けばとっくに日が傾いており、慌ただしく封をしてそれぞれ暖炉の上に返信を並べた二人は上機嫌で軽い夕食の支度へと取りかかった。