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東へ進め!お茶会の後は

楽しいお茶会から数時間後、ルゴール辺境伯領主館・生活棟では家族揃っての団欒中。

生まれつき病弱で、いつもひっそりと微笑みをたたえて静かに過ごすマリリオンが頬を上気させて『凄く楽しかっです』と興奮気味に茶会の様子を語る。


初めて見るマリリオンの溌剌な笑顔に、皆が皆、喜ぶ。マリリオンの母は涙を滲ませ、祖母のエルディナも目を赤くしていた。




同じ頃、街の家で夕食を済ませた少女達は二階の作業場でそれぞれ唸っていた。




リュールは美顔軟膏のレシピが書かれた手書きの本を片手に、エルダは制作中の作品を前に難しい顔をしている。



「このレシピ通りに作るのは簡単ですわ。でも、もっと工夫できる気がするのですが…でも、下手な事をすれば害のある物になってしまう可能性もあるから迂闊な事は出来ませんし。お父様に聞けないのがこんなにもどかしいなんて、思いもよりませんでしたわ」


「母様には手工芸までしか習ってなかったけど、母様は確かにこれを一人で作っていたはず。うーん、何度も見てたから私にも出来る…はず、なんだけどなぁ」



それぞれに行き詰まりを感じ、溜息が漏れる。



「下手なアレンジは自粛するとして、アイディアはノートに纏めておきましょう。…あら、エルダは今日はおしまいにするの?」


「うん。多分このまま下手に手を加えるよりも、時間を空けて頭を切り替えてからの方が良さそうだから。リュールはまだ続ける?」


「いいえ、私も今日はこの辺にしますわ。片付けたら下でお茶でも飲みましょうか」



寝る前の一時、行き詰まりについて語る。解決策は浮かばなかったが、お互いに行き詰まりを感じているのは自分だけでは無いと分かると笑顔が戻る。


「実家や学園の図書館のように、いつでも誰かに聞けたり調べられる環境というのはとても恵まれていたのだと痛感しましたわ」


「ホントにね!でも、今は悩みながら間違えながら自力でやるしかないかぁ…ま、気長に頑張ろうね、リュール」


「えぇ、そうね。難しく考えてばかりいても楽しくありませんものね!今の私達に出来る事をしながらのんびり頑張るのが一番ですわ」



結局、呑気なペースで頑張る事で話は片付いた。


これまでの環境が恵まれていたことに感謝はするが、かと言って今の不便な環境に不満はない。


不便なら不便なりに工夫すれば良いと、楽天的に考える前向きな二人は『行き詰まりを感じるなんて、私達も成長してる証拠なのでは?』と楽しそうに話していた。



「あ、それより!!リュールのお誕生日、そろそろだよね?去年はお祝いどころじゃなかったもん、今年は張り切ってお祝いしようよ!!」


「まぁ!私ったらすっかりうっかり忘れておりましたわ」



うっかりで自分の誕生日を忘れていたリュールだが、ウキウキした顔のエルダに『頑張ってご馳走作るね!』と言われて大喜び。


夏の初めにリュールの誕生日、夏真っ盛りにはエルダの誕生日。学園に入る前はそれぞれの誕生日を各家で祝い、交互に招きあって楽しい時間を過ごしていた。


去年はヤーシュカ嬢の事件のせいで悲惨な夏で、二人とも誰に祝われる事なく誕生日が過ぎてしまったのだ。今年は二人とも互いの誕生日を盛大に祝おうと誓う。



軽やかな足取りで二階に上がり、二人はそれぞれ眠りについた。

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