東へ進め!枯れ葉じゃないよ、材料だよ
町へ遊びに行きつつ、採集も行うつもりだった二人。
「ああ、遊びに来てたんだね、二人とも。この前は飴、ありがとうね。坊主が大喜びだったよ。帰る前にウチに寄っておくれ」
買い物中のミルタと一度別れ、町の人へ声をかけながら雑貨屋へ。お茶を頂き、あれこれと話を楽しんだ。
思いの外話し込んでしまったので、森での採集は諦めようかと相談しながらミルタの家を訪ねると、ミルタの息子が駆け寄ってきた。
「狭いし散らかってるが、あがっておくれよ。ほれ、坊主はあれを持っておいで」
エルダに抱っこをせがんでいた子供は、ミルタに言われて風のように去る。元気ですわね~、とのほほんと話していたら子供が両手に枯れ葉?や枝を抱えて戻ってきた。
「ん!やる!!」
「ごめんねぇ、貰ってやっておくれ。飴のお礼なんだとかで集めに集めて溜まっちまってね」
苦笑いのミルタが小声で『後で捨てて良いから』と囁くが、リュールは喜色満面で受け取る。
エルダが手籠から採取用の背負い袋を出して広げ、纏めて受け取った物を入れる。誇らしげな顔の子供に丁寧にお礼を言うと、照れてしまったのかミルタの後ろに隠れた。
「ちょうど欲しかった物がありましたの!しかも、乾燥済みなんて有り難いですわ!どうしましょう、凄く嬉しいですわ!」
「あんなゴミみたいな…痛いってば、コラ!枯れ葉にしか見えないもんでも、薬になるんだねぇ。坊主、リュール嬢ちゃんの役に立てるなんて、頑張った甲斐があったね」
「……ねぇ、ミルタさん。息子ちゃんに材料を集めて貰うのって難しい?」
エルダが聞けば、ミルタは簡単だと答える。ミルタの夫は森の手前の畑に毎日通い、息子はよくついていくのだとか。森の中へ行かずに町と畑までの間で取れる物なら、行き来のついでに子供でも集めれるだろう。
「まぁ…まぁ!なんて素敵なの!!ではね、コレとコレを集めてくださるかしら?夏までしか採れないけれど、コレらがあるととっても助かりますの」
背負い袋から取り出した葉は、エルダとミルタにはただの枯れ葉にしか見えない。しかし、子供は力強く頷いた。
お礼は幾らぐらいが相場なのかと尋ねたが、ミルタも息子もお金は要らないと断る。では、飴ならば受け取って貰えるかと提案すれば子供はリュールに抱きついた。
「しっかし、どう見ても枯れ葉だがねぇ…それ、何の薬になるんだい?」
「幾つか使い道がありますけれど、こちらは咳止め。こちらが美顔軟膏ですわね。他にですと…あら?ミルタさんどうなさいましたの?」
ガシッとリュールの手を握るミルタ。
ミルタ親子の全面協力が確約され、少女達は夕暮れの道を街へと荷馬車に揺られて帰って行った。
「美顔軟膏、早めに取り組んだ方が良いよ……」
「そ、そうしますわ……」
ミルタはサバサバしており、化粧やお洒落などには興味が無いと思っていたのが間違いだった。
矢継ぎ早に美顔軟膏の質問をし、その答えに『シミやソバカスを薄くする』が含まれていることを知ると…『予約するよ!幾ら払えば良いかね!』と財布を握りしめていた。
葉の代金や軟膏そのものの値段の相場が分からないので、取り敢えずお金の話は脇に置いて予約だけは受けた。
相場については次の納品でリュスカに相談して考えようと、二人は呑気に考えていた…。