東へ進め!エルダのおねだり
二度目の納品を明後日に控え、リュールとエルダはそれぞれ最後の支度を済ませた。
「うーん。…うん!ねぇ、リュール」
「何かしら?」
「私、もっと工芸品作りに本腰を入れたいと思って…お願いがあるの」
照れ照れとはにかみながら、リュールの肩にエルダが頭を預けて甘える。エルダの本気のおねだりモードにリュールがクスクスと笑いながらふわふわの髪を撫でる。
「時間がかかるけど、幾つか作りたいものがあるの。10日ごとの納期には紐細工を少し出すだけになるから、しばらく迷惑を掛けちゃう。いい?」
「随分と可愛い迷惑なのね。顔繋ぎもあるから紐細工は必ず3つ以上作ってくれれば問題ないわ。それに、私も直ぐには完成できない医薬品を幾つか制作中なのよ」
日数を掛けずに作れる物は値段も安くなりがち。当面のお金の心配がないからこそ、リュールも次の納期に出す数を抑えて長期戦の薬作りを始めている。
「ありがと!!私、頑張るね!」
すりすりと甘えるエルダの抱擁を受けながら、リュールは必要材料や道具の話を聞く。幾つかは買わねばならないが、可愛いお願いをされたことでもあるし、今後も使える道具は先行投資としていずれは回収可能と割り切る。
晩ご飯はパンと野菜と塩漬け肉の欠片入りのスープ。
「…ねぇ、この街って畑は外にあるけど。お肉はどうしてるんだろ?」
「村や町の人は狩りもするそうだけれど、基本的には村で食用に飼育されてる牛を買うのよ。街では鶏しか飼ってないから鶏肉以外は町より少し高いですわね」
「もしかして、それで川魚の方がよく見かけるのかな?私達、こっちに来てから魚をかなり食べるようになったよね。前はそんなに食べて無かった気がするもの」
「そうね。町ではあまりお魚は見なかったですわね。近くに小川もありましたのに」
少女達は狩りはできないので、買うかお裾分けかでしか肉を入手したことが無い。…生肉を始めて見た時の衝撃は凄まじいものがあった……と、リュールは懐かしむ。
そんなに月日が経っているわけでもないのだが。
食後は自家製の薬茶を飲みながら、まったり。
翌朝は少しのんびり過ごして、昼前からは掃除に洗濯、水汲みから丘の麓まで枝拾いと精力的に動きまわる。
拾った枝は裏庭で乾燥させたり割ったりと地味に忙しい。他にも、不足気味な日用品の買い足しに出たりしているうちに気がついたら日暮れ時。
「明日は納品、準備はバッチリよ!さあもう寝ましょ」
「そうね、早起きしなくてはいけないし。戸締まりしたらもう寝てしまいましょう」
玄関と裏口の閂を確認して、二人は二階へと引き上げる。




