表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/96

東へ進め!街へお引っ越し

春の気配がそこかしこに見つけられるようになってきた。


朝晩の寒さが緩みだして昼間は日に日に少しづく暖かくなり、次々と芽吹く柔らかな緑が美しい。畑を持つ者達は畑仕事に追われ、残った冬籠もりの食材を消費すべく食卓は少しだけ豪勢になる。


そんな中で、リュールとエルダはとりわけ暖かい日の午後に荷馬車に揺られて街へ向かっていた。



マルスからは引っ越しの手伝いもする、とは言われていたが二人分合わせても大した量ではない。『これならついでに載せてあげるよ』という有り難い申し出により、雑貨屋の仕入れ用の荷馬車に同乗してのお引っ越しになった。



「それにしても、広い街ですのね…」


「迷子になりそうでちょっと心配かも」



今まで住んでいた町とは大違いだ。街は周りを高い石壁で守られている。石壁の街側は倉庫のようになっているそうだ。


街のど真ん中、中心広場は集会場のような機能を持つ公園。その公園から四方に向けて石畳の立派な道が伸びる。その道は石壁の門まで続く。


「ほれ、お嬢ちゃん方。此処が広場だよ」


「ひろーい!」


「そりゃ、広場だからなぁ」


エルダの無邪気な叫びに雑貨屋の店主が陽気に笑う。広場から離れてしばらく進むと、二人の新居が見えてきた。


「あの方…というよりあの子?がテオールさんかしら?」


木造二階建ての前で、少年が荷馬車に手を振っている。


「ここだよ、ご…おじょーさん達。俺はテオール、騎士団から手伝いに来たぜ」


「まぁ、初めまし…て?」


荷馬車から降りて挨拶の途中でリュールが首を傾げ、テオールがドキリとする。二人が町の空き家に入ってから観察していたのがバレているのか…?


「もしかして、この前にビアールさんとご一緒だった方かしら?」


「ん?あ、ああ。俺は馬と残ってたのに、よく覚えてんな」


内心ではホッとする。数日前にマルスからの手紙をビアールが届けた時に家の前で待っていたのを見ていたらしい。


「ええ、たまたまですが。あ、ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。私がリュール、こちらはエルダですの。今日はお手数おかけ致します、騎士様」


少女二人に揃って礼儀正しく礼をされて、若年ゆえに滅多に騎士扱いされないテオールが慌てる。


「お、俺はまだ騎士見習いだから!それより早く荷物を降ろしちまおうぜ」


わたわたと荷物を運ぶテオールは耳まで真っ赤で、雑貨屋の店主がほのぼのとした顔でテオールに続く。あっという間に荷物を降ろし終えて雑貨屋の店主は二人に手を振り振り、去ってゆく。


降ろした荷物は一旦玄関の脇に詰み、家の中を説明がてらに案内するという。町の家とは少し違うらしい。


「まず、玄関な。えーと…あ、これ。鍵、無くさないように気をつけてくれよ。外からは鍵で、中からは閂な」


「はーい。これ、飾り紐とかつけた方が良さそうね」


「ああ、それは良い考えだな。この通りの家は造りも全部一緒で、鍵も似てるから見分けが付きやすいのに越した事はないな」


玄関を入ってすぐは土間だが、その奥は板張りの床。真っ直ぐ突き当たりには裏口がありこちらには内側から閂のみで鍵は無い。


裏口から出ると、こじんまりとしたした裏庭。木の塀で家の横からぐるりと囲まれているので人目が気にならない。小さな納屋があるので中を覗くが、残念ながら空だった。


「じゃ、一階は終わり。二階へ行くぜ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ