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東へ進め!ようこそ辺境へ

久々にふかふかのベッドでぐっすり眠り、朝から元気いっぱいのエルダ。リュールも早起きのわりに目がパッチリ開いているので、こちらもよく眠れた様子。


朝食を美味しく頂き、食後の紅茶を楽しむ。


雑談していると、ルゴール伯に呼ばれた。昨日と同じ部屋に行くのかと思っていたが別の部屋になるようだ。



入室すると既にルゴール伯、ルゴール伯の息子であるマルスとアルスも居る。



「昨日付けで君達二人を正式にルゴール辺境伯領に迎え入れる事が決まった。君達の身分は平民で、領内での転移や婚姻は概ね自由。開拓地へ入村するなら別だが、納税や賦役に関しては分からぬ事は役場で聞けばいい」


アルスが説明し、二人の少女が深々と頭を下げた。


「ところで、君達は第三王子と宰相の娘のどちらにもつかないと考えて良いのだね?」


マルスがズバッと聞けば、二人もあっさり頷いて肯定。



「はい。アーガンダ侯爵様の有利になる発言をさせられぬように処分という名目で救済して頂いたのは感謝しておりますが、不敬と承知で正直に申せば『平民生活万歳!有り難う、さようなら~』でございます。感謝はしておりますが、貴族でなくなった以上は手駒になる義務もございません」



エルダがニコニコと答えると、マルスが声をあげて笑う。アルスが催促するようにリュールに目を向けた。



「私達にできる恩返しは、アーガンダ侯爵様の一件が終わるまで王都との関わりを絶つこと。殿下やアルテミア様とも関わりが絶たれますが、元より雲の上の方々ですので早々に私達の事をお忘れになられるのは当然と心得ております。平民の身ではお二方にお目通りも適わないので手駒になりようもございませんね」


ルゴール伯とその息子達が大笑いする。どんだけ嫌なんだよ、とマルスが笑えばそれだけ嫌なんでしょう、とアルスが応じる。


「そういう事らしいから、アルス。サクサクと進めてお嬢さん方の心配事はさっさと片付けてやってくれ」


ルゴール伯の命に、アルスが一礼して早速とりかかる為に退室して行った。


残ったマルスとルゴール伯、リュールとエルダの四人は紅茶を飲んでの談笑を楽しむ。その話の中で、マルスから一つの提案が出た。


「お嬢ちゃん方、春からは街へ来ないか?」


キョトンとするリュール、エルダは首をこてんと傾げた。


ルゴール伯はマルスを含み笑いで横目に見ており、反対する事はないようだ。


「砦で仕事しても良いし、医薬品や工芸品を館に納品するのも良いだろう。そのついでの半端仕事になるが、文官の手伝いをしてくれるなら駄賃稼ぎにはなる。街へ来るならば住む場所の手配や引っ越しは任せろ。無理にとは言わないが、考えてみてくれ」



「では、街へお引っ越ししましょうか」


「そうね、それも楽しそうですものね」



早い。



「アッハッハッハ!愉快愉快!」


二人の即決即断に提案したマルスが絶句し、ルゴール伯は呵々大笑している。



改めて領地へ受け入れて貰った事やあれこれへの礼を丁寧に述べ、退室の言葉を口にする二人。



「リュール、エルダよ。ようこそ、辺境の地へ」


ルゴール伯の分厚く皺だらけの手が二人の頭を撫でた。無骨な手は暖かく、そして見た目に反して優しかった。



二人の少女が領主館を出て、町を目指して馬車で揺られてゆくのを窓から見送る。



「マルスよ、お前もあの娘達が気に入ったようだな。しかし、役立つからと手駒扱いはせぬようにな。愛でるにとどめれば賑やかな囀りで楽しませてくれる小鳥も、権力を振りかざせば逃げる」


「気に入ったのは事実だが、宮廷のアホどものような理由ではなく…私の息子達と知人になってくれたら非常にかなりとても良いとは思った。それがなくとも、愛でる方向で癒やしを得るだけでも私は救われる…」


「あー………相分かった。なんかスマン」



ルゴール伯は孫達の顔を思い浮かべ、息子の肩を励ますように叩いた。

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