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よくある異世界への巻き込まれ転移  作者: セル・ライト
6/8

少女と依頼と

お読みくださりありがとうございます。

 翌朝、体に重みを感じ目が覚める。昨夜はそのまま癒し亭に戻り、食事をしていつも道理にネメアの刀身を抱きながら眠る。


(まさか、泥棒?いや、それならネメアが起こしてくれるはず。なら・・・)


 俺は薄く目を開け自分の体をまさぐる。


(ん?柔らかい?俺の体こんなに柔らかかったか?)


 いまだ寝ぼけた頭で、自らの体を探すように手を動かす。


「ん・・!ハア!・・・マスター、私はいつでも構いませんよ?」


 甘く艶かしい吐息と共に自らの顔の目の前に、見慣れぬ美少女の顔が現れた。


「・・・へ?」


 急速に血の気が引いていくのと同時に頭が冴えていく。


「え?誰?・・・というかやっちまった?え?マスター?」


 俺は混乱しながらガバリと身を起き上がらせる。シーツがめくれ俺の胸に寄り添っていた美少女の姿が露わになる。17歳かそこらだろう、黒く艶やかな長い髪、切れ長の眉毛に強い意志を感じさせる黒い瞳。肌は小麦色だが日焼けではないようだ。胸は程よい大きさで小さくもなく大きくもない。続いて下腹部の方へと視線を動かそうとしたことで俺は気付く。


「キミ!服はッ!?・・・まさか、マジでやっちまったのか?」


 確かに昨夜は酒を飲んだ、しかし記憶を無くすほど飲んだ覚えはない。顔を背けながらシーツを渡す。


「マスター。存分に観賞されても構いませんでしたのに。」


 美少女はシーツを受け取るが隠すことなくのたまう。


「いいから!早く隠して!」


 俺はチラチラと見たいのを、強靭な意思でなんとか抑えているが限界に近い。しょうがないよね、男なら。


「マスターの命令なら仕方ありません。」


 彼女はようやく納得してくれシーツで体を隠した。

 そこで俺は冷静さを取り戻し、あることに気付く。


「ン?マスター?」

「はい、マスター。このネメアのマスター、ヒロ・ミヤベ様。」

「ネメア・・・。ってじいさんがくれた?」

「そうですマスター。マスターが成長したので、私の能力の一つ擬人化が解放されました。」


 まさか、そんな能力が隠されていたとは思わず絶句する。


「ご心配なくマスター。キチンと剣に戻ることもできますので、戦闘については問題ありません。」

「あっ、そうですか・・・。」


 ひとまずネメアには剣に戻ってもらう。取り敢えずギルドに行く前に、服屋へ行く。

 勇気を振り絞り、女性物の服と下着を買う。黒いワンピースのようなドレスと、黒い下着。自分の刀身が黒いためか、黒色が好みらしい。銀貨8枚と聞いたとき、ネメアが安い服に代えようとしたが気にすることはないと、格好つけて購入した。ネメアには世話になってるし、可愛い女の子にはいい服を着せてあげないとね。


 服屋を出て、人通りの少ない路地にいきネメアを擬人化させ服を着させる。


「ウン。良く似合ってるよネメア。」

「ありがとうございますマスター!」


 服を着たネメアは、何処かの美しいお嬢様にしか見えずみとれてしまう。


「しまった。靴を買って無かったな。しかし、サイズを合わせないといけないし、俺の眼検討だと不味いだろうし。」


 暫く悩んだ結果、俺はネメアをお姫様抱っこして靴屋に向かう。服屋の隣に靴屋があるので、距離はそうないが恥ずかしい。ネメアは嬉しそうに、しっかりと俺の首に手をまわし俺を見つめてくる。


(何で元が剣なのに甘くていい匂いがするのかわからない。)


 通りすがる男達は、俺を視線で射殺そうとし道端で話をしている女たちはこちらを見て、あんな男のどこがいいのかしら?等と噂している。

 確かに俺はイケメンではないがブサメンでもない、到ってフツメンだ。身長170cm、短髪の黒髪に少し目つきが悪いのが悩みなのだが、細くもなく太くもなく程よい肉付きのはずだ。日本基準では普通だろう。

 だがこの世界の男どもはイケメンの比率が高い、そこからみれば俺はブサメンに分類されるのだろう。

やるせない気分になりながらも靴屋に着き、ネメアを椅子に座らせ靴を選ぶ。降ろした瞬間のとても残念そうな顔が心を抉る。俺はネメアに似合いそうな黒い靴を選び持っていく。どうやらサイズもぴったりのようだった。俺の所持金はまた減ったがな。

 いよいよと冒険者ギルドに向かうが、歩きにくい。靴を履いたネメアが、俺の腕を取り体を寄せて歩き出したからだ。どうにかギルドにたどり着くが、ネメアを連れて行くわけにはいかないのでギルドの陰で剣に戻ってもらう。


(衣類は残るんだな。・・・下着まで。)


 素早く衣類を回収しギルドの中に入る。今日もエリーナの元で6階層のモンスターについて聞こうと思ったのだが、思いがけない言葉をかけられた。


「ヒロ・ミヤベ様、ぜひ貴方に受けて頂きたい依頼がございます。」


依頼。冒険者はなにもダンジョンでモンスターを狩ったり、宝箱を見つけたりする事だけが仕事ではない。商人の護衛や、住民の頼みなどを聞くのも冒険者の仕事だ。


「え~、それは構わないんですが、どういった依頼なんでしょうか?」

「街の東にある山はご存じですよね?そこにある坑道にモンスターが住みついたみたいで・・・。その坑道は狭いため集団での行動は逆に危険と思われます。そこで異例の速さで5階層を一人で突破した貴方に白羽の矢がたったのです。」


エリーナに説明してもらうが、断らせる気はないのだろう。いつもと同じように無表情ではあるが、言葉に力強さがあった。


「ハア。断れそうにないですね、わかりました。どんなモンスターなんですか?」

「すみません。そこまで情報はまだないのです。ダメですか?」


この人絶対確信犯だよな、このタイミングで上目使いとか。あざとすぎるが可愛いから許してやろう。


「いえ、駄目じゃないですけど・・。」

「ありがとうございます。ではお気をつけて。」


いい様に翻弄され俺はギルドを出て東の山に向かう。道中とくにモンスターにも出会わずに坑道へとたどり着く。


「ここか、確かに狭いな。」

【マスター。何やら不穏な気配を感じます。気を付けて進みましょう。】


ネメアの言葉に頷き慎重に坑道の奥に進む。30分程進んだところで、野球場程ありそうな広い空間に出た。


「やけに広いな。天井も10mはあるんじゃないか?」

【マスター気をつけて下さい。何かいます。】


俺は咄嗟に構え辺りを見回す。


「・・・上か!」


周囲には何もない、そうなれば上しかないだろうと思い天井を探す。

そこでモンスターと眼があった。巨大な蜥蜴だが鱗は岩で覆われている。

パキパキと足下で音がするのが聞こえ、視線をそちらにやると足の指先から徐々に灰色に変わっていっている。


「まさか!石化してるのか!?」

【マスター!早くスキルの吸収を!一撃当てればいいだけです!】


頷き、俺はしゃがみこむ。足先は既に石とかし、動かない。蜥蜴は天井に張り付いたまま動かない。俺は全力で垂直跳びを行い、蜥蜴目掛けて飛び上がった。

蜥蜴は、恐らく届く訳がないと思っていたのだろう、慌てて動き出した。俺は剣を振りなんとか尻尾の先端を斬る事ができた。同時に石化がひいていく。


【石化無効のスキルと、石化睨みのスキルを吸収しました。】


ホッと一息ついたのも束の間、背後から強い衝撃にみまわれ、俺は吹き飛んだ。


「イッテェェェ!?何だ!?」


4~5㍍程吹き飛んだところで何とか体勢を整え、先ほど自分がいた場所を見る。


「チッ。もう一匹いたのか。」

【大丈夫ですかマスター?】


打撃耐性のおかげでダメージはあまりない。だがこの世界に来て初めて喰らった攻撃に多少の動揺がおこる。

そのまま追撃されると思いきや、蜥蜴どもも此方を警戒しているようだ。俺が石化しない事で慎重になってるみたいだ。


「今までのモンスターとは格が違うな。ネメア、何かいい考えはないかな?」

【魔法は落盤の恐れがあるので危険ですね。毒はどうでしょうか?】

「試してみるか。」


俺は布袋から弓と矢を取り出し構える。矢にはスキルで毒付与大がかけられている。狙いは蜥蜴の眼。弓術匠のスキルがあるので外す気がしない。安物の弓を壊さないように引き絞ると、狙いを定め手を放す。

ビュッという音共に矢が突き進む。蜥蜴どもが慌てて動き出すが、矢はその動きを予測したように片方の蜥蜴の眼に突き刺さった。


「グオオオオオオオオ!!」


ゲームとは違い毒状態に落ちいってもマーカーなど出てくれない。眼を貫かれた痛みで呻いているのか、毒による痛みで暴れているのかわからない。片方の蜥蜴が苦しんでいる間に、先程尻尾を切り落とした蜥蜴に矢を向ける。その蜥蜴は阻止しようと突っ込んでくる。俺は剣に持ち替え構える。蜥蜴は巨体だがこっちにはネメアがいるから怖くない。


 口を大きくあけながら突っ込んできた蜥蜴を天井目がけてジャンプしてかわし、そのまま天井を蹴り蜥蜴へと向かう。蜥蜴はそれに気づき尻尾を振ってきたが先端が切れているために俺に当たることは無かった。

岩に覆われた鱗を、岩ごと斬る。スパっという音は聞こえないが例えるならそんな感じだろう。

 蜥蜴は真っ二つに両断され息絶える。相変わらずの切れ味だ。

 蜥蜴が動かなくなったのを確認し、いまだに苦しみ呻いているもう一匹の蜥蜴に向き直る。どうやら毒は効いてるようだ。わざわざ手負いの獣に近付く必要はないだろう、俺は距離をとり辺りを警戒しながら蜥蜴が息絶えるのを待つ。5分程すると蜥蜴はドスンという音と共に倒れピクリとも動かなくなった。


【マスター。スキルを吸収してみましょう。】


 そういえば後から現れた蜥蜴のスキルは吸収していない。蜥蜴の死体に近寄り剣を刺す。


【隠密スキルと、後は先程の蜥蜴と一緒ですね。いずれもこれ以上は合成できません。】


 奇襲を受けたのはこの隠密スキルのせいか。ネメアの10m以内の音を聞く能力も、このスキルには通用しなかったみたいだ。。一先ず二匹の蜥蜴の死体をアイテムボックスに回収する。その後1時間程他にモンスターが現れるかもと思い、その場で待つが現れない。


【どうやらあの2匹が依頼のモンスターだったみたいですね。戻りましょうマスター。】

「そうだな。」


 俺は来た道を戻り坑道を出る。坑道を出た瞬間にネメアが擬人化し全裸で現れたので、慌てて服を渡した。そのあとは、ネメアに腕をとられピッタリと寄り添われながら街へと戻った。


ヒロ・ミヤベ


能力・・・体力UP大・敏捷UP大・魔力UP大・筋力UP大・火魔法極・水魔法極・風魔法極・土魔法極・超音波・遠吠え・毒付与大・毒耐性大・打撃耐性大・石化無効・石化睨み・剣術匠・弓術匠・隠密

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