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よくある異世界への巻き込まれ転移  作者: セル・ライト
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スキルと獣人と

 異世界生活3日目。時刻は8時、すでに俺は森のダンジョン入り口に来ていた。ギルド職員のチェックを受けダンジョンへと入っていく。転移陣を使い3階層へ。

 今までとは違い、内部は完全な洞窟へと変わった。どうやら人工的に作られた階層はゴブリン共の住処みたいで、ここからが本格的なダンジョンになっているらしい。


【これは期待できそうですねマスター。】

「ああ、雰囲気が明らかに違うな。気を付けていこう。」


仄かに光る洞窟内部を慎重に進む。5分程進んだところでようやくゴブリンとは違うモンスターに出会う。ゼリー状の透明な物体がプルプルと震えている、間違いなくスライムだ。スライムはゆっくりとこちらに近付いてくる。瞬間スライムの一部が伸びこちらに向かってくる。俺はネメアを振り、伸びた一部を斬りそのままスライム本体を斬る。パシャリと形を崩し水たまりを作る。


【マスター。打撃耐性小と水魔法初級を覚えました。】


魔法か。やっぱあったんだな。まあ、ギルドの看板見ればわかるが。スキルを得たことで魔法の使い方もわかる。


「ウォーターボール」


左手を前に突出し魔法名を唱える。空中に水がどこからともなく集まり球を作る。野球ボールほどの大きさになると、そのまま真っ直ぐに飛んでいき岩に当たる。ドゴッという音がし、岩の一部が欠ける。中々の威力だ。だがその後に、体力ではない何かが減るのを感じる。


「なんだ?まさか魔力?」


体に疲れはないが精神的疲労を感じる。恐らく俺の考えは正しいのだろう。魔力UPのスキルを得るまでは連発はできないだろう。


【マスター!次も別のモンスターです!】


今度は蝙蝠に似たモンスターが飛んでくる。素早く飛び回るが剣術匠のスキルで斬り払う。


【超音波のスキルですね。これはこれ以上合成できません。】


おおう。そんなスキルどうやって使うんだよ?まあ、当たりスキルばかりじゃないか。

気を取り直して先に進む。どうやらこの階はスライムと蝙蝠しか出ないみたいだ。4階層への階段を見つけるまでに、打撃耐性は特大に、水魔法は極みへとなった。


4階層のモンスターはオークに銀狼。オークは筋力UPと体力UPのスキル、銀狼は敏捷UPに遠吠えだ。筋力UPは特大に、体力UPと敏捷UPも特大になった。遠吠えは、モンスターを呼ぶスキルみたいだ。

速めにダンジョンに入り、とにかく下層へ降りる階段を見つけることを優先していた為時刻はまだ12時くらいだろう。

5階層の階段を見つけ下に降りる。どうやら下層に行くほどダンジョンは広くなっているらしい。

5階層の入り口で遠吠えを使う。これでモンスターを探す手間が省ける。よってきたのは2匹の杖を持ったゴブリンと緑色のスライム。恐らく毒を持っているだろうスライムを先に仕留める。


【毒付与小と毒耐性小です。】


ネメアが吸収したスキルを教えてくれる、やはり毒を持っていた。そしてすぐゴブリンに向き直る。それと同時に炎と土の球が飛んでくる。いずれもネメアで斬り裂き間合いを詰めゴブリンを斬る。


【魔力UP小と火魔法初級、それに土魔法初級ですね。】


どうやら魔法を使うゴブリンは、個体で違う魔法を使うらしい。これはかなり役に立つ。それに魔力UPまで手に入るのだ。この階層で一通りの魔法は手に入るだろう。俺は遠吠えを使い再びモンスターを呼ぶ。それを繰り返し行い、既に魔法を使うゴブリンの討伐数は50を超えた。

魔力UPは特大に、火魔法極、風魔法極、土魔法極、水魔法はすでに極みまで達している。どうやらこの階層で得られる魔法は、ラノベなどでよく言われる4元素だけみたいだ。


「ふ~。今日はこれくらいにしておこう。ギルドに行って換金しよう。」


出会うモンスターを無視して6階層へ行く階段を見つける。転移陣に乗りダンジョンから戻ると、いつものように走って街へと戻った。


「マジックゴブリンの魔石と素材が50セット、ポイズンスライムの魔石と素材が12セット、他にオークと銀狼の魔石と素材が10セットずつ。あとはケイプバットが1セット。」


俺の布袋から出てくる魔石と素材を確認しながら、チラチラと布袋を見るのはやめて欲しい。エリーナも深くは聞いてこないので助かってはいるが。


「全部で銀貨15枚になります。一人で5階層迄行かれたのですか?」

「はい。」


俺の返事に、エリーナはピクリと方眉を動かすが基本的に無表情なので感情が読めない。


「6階層からはモンスターが一段と強くなり徒党を組んで狙って来ますので十分なご注意を。」

「まぁ、なんとかなりますよ。魔法もあるし。」


またエリーナの方眉がピクリと動く。俺は差し出された銀貨を受け取り、ギルドをでた。

時計の針は2時を指しており、宿に戻って寝るにはまだ早い。俺は武器屋、防具屋を見に行くことに決め歩きだした。



黒い髪、グレーのローブを纏った男をカーテンの隙間から覗くように見る一つの影。その瞳は淡く金色に光っている。


コンコンとドアがノックされ、返事を待たずにドアが開けられる。


「いつも言っているでしょう、エリーナ。返事を待ちなさいと。」

「申し訳ありませんサリア様。」


エリーナはさほど悪いとも思ってない様子で謝る。


「それにしても、あのミヤベと言う男、とてつもない魔力量でした。そう、ドラゴンに匹敵するほどの。」


サリアは魔眼の持ち主で、対象の魔力量を視ることができる。


「さすが渡り人という事でしょうか?ですが初めて見たときは大した魔力も感じませんでした・・・。冒険者になってわずか3日。5階層まで一人で踏破したとはいえ、急激に魔力が上がるなど聞いたこともありません。ましてやドラゴン並みとは・・・。」

「なにか特殊な能力を持ってるか、それとも勇者一行のような強力な武器を持っているか・・・。なんにせよ彼の実力を知る必要がありますね。」


サリアはエリーナに微笑みながらそう告げる。エリーナは優雅な仕草でお辞儀をし部屋を出て行った。


「簡単には死なないでくださいね。ミヤベ様。」


サリアは虚空に視線を定めながら呟いた。



今現在俺は防具屋にいた。武器屋ではとりあえず安い弓と矢を購入し、銀貨2枚を支払った。店の中に並べられた軽鎧や、見事な全身鎧に目を奪われる。値段は金貨8枚!日本円で800万だ。この世界の物価は全てにおいて高すぎる。そういえばこの街で買い物をしているのは商人か冒険者、後は兵士ぐらいしか見たことがない。一般人はたまに見かけるが、皆顔色は良くない。


(これは調べてみた方がいいかもな。)


俺は防具屋を出て、今まで行ったことのないこの街の奥、時計塔の裏側の方へ足を向けた。時計塔までの道のりには、やはり商人風の者達が多く、住民と呼べそうな人たちは少ない。俺は時計塔の脇にある小道を見つけ裏側に回る。細く長い階段があり、それを降りていく。5分程降りていくと驚愕の光景が広がっていた。

建ち並ぶ家は、すべてがボロ小屋で雨風をしのげるかも怪しい。俺はさらに先に進む。そこに住む者達全ての者達が皆生気のない顔をしている。

だが、それだけではない。ほとんどの者には耳や尻尾がついていたのだ。


「こ、これは!?一体・・・」

「何しに来た人族よ。我らを嘲笑いに来たのか?戦に負けた我らを!」


状況処理が上手くできず固まる俺に声がかかる。その声を発していたのはギルドの前で見た獣人だった。


「ど、どういうことですか!?戦争に負けたって?」

「貴様。何も知らないのか?・・・貴様そういえばどこかで?・・・ああ、ギルドの入り口で見たな。」


どうやら獣人の方も俺の事を覚えていたみたいだ。だが俺はそれどころではない。


「戦争って!いつ!他の街の獣人は!エルフは!ドワーフは!魔人は!・・・くそっ!?あの爺さん一年は大丈夫って言ってたのに!?」


矢継ぎ早に質問し、最後には訳のわからないことを言い出した俺に今度は獣人の男が固まっていた。


「・・・落ち着け。貴様どうやら何も知らないようだな?いいだろう教えてやる。」


俺と獣人の男は瓦礫に腰掛けると、獣人の男は話し出した。


「あれは3年前だ。この街は元々我ら獣人族の街だった。しかし、西の森を越え王国の軍勢が突如やってきてこの街を支配した。」


獣人の男から聞いた話では、俺が行く森は3年前までは今よりも遥かに広く広大な森だったらしい。しかし、獣人達が隠れ住むこの街が人族の冒険者に発見され王国に報告されたことで軍勢がここまでやってきたという。その後この街が発展したのは、広大な森を切開いたことで出来た道と、さらにこの街の東側にある険しい山脈で取れる珍しい鉱石で作る物で商業が発展していき、わずか3年で王国内でも5番目の街に発展したという。

だがそれは人族だけで見れば良いことなのだろうが、この街に住んでいた獣人達は戦いに敗れた日からひどい仕打ちを受け街が発展していくにつれ、どんどんと街の隅に追いやられていったという。


「で?他の獣人の街や人族以外の住む街などはどうなったんですか?」

「他の獣人の街で戦争が起きたとは聞いてない。他の種族の事もな。」

「そっか。よかった・・・。って、すいません!ここがこんななのに。」

「フン。いずれ取り戻してみせるさ。それにしても、お前は変わった人族だ。なぜ他の獣人や、他の種族が無事で喜ぶ?貴様ら人族から見れば我らは総じて魔族なのであろう?」


俺はその言葉にどう答えていいか悩む。正直に話したところで信じてもらえないだろうが。


「いや、神様に頼まれてね。魔族と呼ばれ虐げられる人たちを救ってやってくれってね?」


迷った挙句正直に答えることにした。


「フハッ。ハハハッ!神に頼まれただと!なかなか面白いことを言う奴だ!お前、頭大丈夫か?」


うわ~、思った通りの反応でした。俺は乾いた笑いを浮かべながらポリポリと頬を掻く。


「フン。久々に笑わせてくれたのが人族とは奇妙なものだ。俺はザルバ。貴様の名は?」

「ヒロ・ミヤベ。」

「ではヒロよ。今日は笑わせてもらった礼に、このまま帰してやるとしよう。だがここには来ない方がいい。人族に恨みを持つ奴は掃いて捨てるほどいるからな、」

「そうか。でもまた来るよ。取りあえずこの街を解放するって今決めたから。」


俺の言葉に獣人の男、ザルバはまたも固まる。


「フハッ!貴様は本当に面白い奴だ。」


ザルバは俺に早く行けと促すように、手をヒラヒラとさせる。取りあえず俺の当面の目標は決まった。細く長い階段を上る。今まで綺麗に見えたこの街も、どこか濁って見えてくる。

俺は宿を目指し、この濁って見える街を足早に歩き出した。

お読みくださりありがとうございます。

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