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よくある異世界への巻き込まれ転移  作者: セル・ライト
3/8

ネメアの性能

 バタンと扉の閉まる音で目を覚ます。部屋にかけられている時計に目をやると、時刻は8時を回っていた。


【おはようございますマスター。】

(おはようネメア。ありがとうゆっくり眠れたよ。)

【それは何よりです。さあ、マスターも早く降りなければ朝食が無くなってっしまいますよ。】


そういえば朝食は9時までだと言っていた。昨日は何も食べずに寝たために腹も減っている、寝ぼけた頭を振りながら俺は部屋を出て食堂へと向かう。セルフサービス式なのだろう、皆が器を持ち順番に並んでスープを注いでいる。スープを注ぎ終わると、その先にパンを持った宿の主人が皆に一個ずつ渡していた。

無事に朝食を確保した俺は、隅のテーブルに行き食べる。パンは固くスープで柔らかくして食べるが、味がない。スープ自体も野菜のかけらがちょっと入っているだけで味も薄い。


(ハア、安いわけだよな・・・。)


昨日ベルガーさんに聞いた硬貨の価値を日本円に換算してみると、銅貨一枚千円、銀貨一枚10万円、金貨一枚100万円、白金貨一枚1000万円といったところだろう。

この宿の値段は銅貨五枚から。勿論一人部屋もある、値段は銅貨50枚で食事は別料金。最低でも銅貨60枚はいるだろう。日本だとそこそこ良い旅館に泊まれる金額を、毎日稼がなければタコ部屋暮らしになる。


(最低でもゴブリン12体か。まぁ、なんとかなるだろう。)


そう思っていた時期が俺にもありました。

時刻は12時を回ったところだろうか、朝食を食べた俺はモンスターを求め街の外へ出たが未だにゴブリン一匹も見ていない。


「このままだと食事も出来ない・・・。」


落ち込む俺にネメアから声がかかる。


【マスター、昨日の森に行って見ましょう。他の冒険者もそちらに向かって歩いてたみたいですし。】

「それしかなさそうだな。」


極力ネメアを見られないように人の少ない場所を選んでいたのだが、裏目に出たようだ。仕方なく森へと進む徒歩で一時間、結構な距離だが疲れはない。


【体力UP小の効果が出ているのでしょう。】


まぁ、俺としては営業で鍛えられたお陰だと思っている。

少し休憩して森に入る。周りには誰もいない、他の冒険者は森の奥へと行ったのだろう。キョロキョロと周りを警戒しながら進む俺の前に、二匹のゴブリンが現れた。


【大丈夫ですマスター。私に任せて下さい。】


完全に主従の立場が逆転している気がするが、今は素直にネメアに任せる。

二匹のゴブリンが同時に襲いかかって来るが、俺の体はネメアの動きにあわされゴブリンの側面へと動かされる。そして一閃、また一閃とゴブリン二匹の首は飛んでいく。


(うわー最強ですね、ネメアさん。)

【そうでもありませんよ。たかがゴブリンですから。】


頼もしすぎて逆に申し訳なく思う。


【マスター、また体力UP小ですね。合成すれば体力UP中になりますがどうしますか?】

「ん?合成?」

【はい、同じスキルを合成することでより上位のスキルへと変えることができます。】

「じゃあお願いします。って本当にチートだな。」


ネメアに許可をだしスキルを合成してもらう。瞬間、体中から力が漲る感じがする。体力UP小では感じられなかったが、今回はスキルにより体力が上昇したのだとわかった。


「凄いなこれは・・・。」


俺が感動に浸っていると茂みからまたゴブリンが現れる、が、現れた瞬間にすでに息絶える。


【また、体力UP小ですね。先ほどの体力UP小と合成し、体力UP中同士で合成することができますが?】

「成る程。そういう仕組みなのか。じゃあ頼むよ。」

【わかりました。・・・体力UP大に変化しました。】


またもスキル効果により体力の大幅な上昇を感じられる。


「はは、凄いな!一日中走っていられそうだ!」


フルマラソンを完走しても、まだまだ走れそうなほどの体力に俺のテンションも上がる。


【マスター死体を回収しましょう。他のモンスターも狩りたいですしね。】


ネメアに言われゴブリン三体を回収する。確かに体力だけでは強くなったとは言えないだろう。

ゴブリンを回収しさらに森の奥に行く。ガサガサと茂みから出てきたのは、二匹の緑色のオオカミ。完全にターゲットにされている。オオカミは隙を窺うように、グルグルと俺の周りを回る。ゴブリンとは違い無闇に突っ込んでは来ない為、俺の緊張感も高まる。ジリッと緊張感に負け、一歩後退すると二匹のオオカミは俺に飛び掛かってくる。


【させません!】


俺の思いとは裏腹に剣、ネメアが動き出す。まずは正面から飛び掛かってくるオオカミを突き殺し、そして体を反転させるような動きをされ後方のオオカミを薙ぎ払う。二匹のオオカミは血を吹き出しながら地面へと落ちていった。もうね、ネメアさんに体を預けておけばそれで勝てます。


【マスター、敏捷UP小のスキルですね。合成しますか?】

「頼むよネメア。それとこれから俺に確認とらなくていいから、じゃんじゃん合成してください。」

【わかりましたマスタ=。ですが結果だけは報告させてもらいますね。今回は敏捷UP中になりました。】


オオカミ2匹の死体を回収し、日も暮れそうなので今日は街に戻る。試しに街まで走って戻ると、疲れることもなく街に着くことができた。その足で冒険者ギルドに向かう。


「ゴブリンの素材と魔石が3セットにフォレストウルフの素材が2セットで銅貨55枚になりますがよろしいですか?」

「おお!意外といい値段ですね!」

「フォレストウルフの毛皮の状態がいいので。解体が上手なのですね。」


メガネの受付嬢の言葉に俺は得意気に頷くが、内心は冷や汗を掻いていた。アイテムボックスの存在はこの世界に無いのかもしれない、そう思ったからだ。


【すみませんマスター。言い忘れてましたがこの世界にはアイテムボックスはありませんので、極力人前では使わないでください。】


いまさらか~~いッ!大きな声でツッコみそうになるのを堪える。


「すみませんが銅貨5枚で食事のできるところはありませんか?えーっと・・。」

「そういえば名乗ってませんでしたね。私はエリーナと申します。今後ともご贔屓に。食事でしたら時計塔の近くに酒場がありますので。」

「ありがとうございます。エリーナさん。」


エリーナから銅貨を受け取り冒険者ギルドを出る。タコ部屋を回避した俺の足取りは少し軽かった。

教えられた通りに、時計塔まで行くと時計塔のすぐ真横に大きな酒場があった。酒場は賑やかで、商人や冒険者、仕事が終わったのであろう兵士の姿も見えた。俺は目立たないように隅のテーブルにつき、注文を頼む。


【マスター。どうやらあの森の奥にダンジョンがあるみたいですね。明日はそこへ行きましょう。】

(えっ?どこからその情報を?)

【私はマスターから10メートル以内の声を聞き取ることができますので、他の冒険者が話していました。】

(えっと、俺が知らないネメアの性能は以上かな?)


突然のカミングアウトに、落としそうなスプーンをワタワタとしながらなんとか掴み、これ以上驚かないように確認する。


【今できるのは、あとはオートマッピングくらいでしょうか。マスターが成長すれば、使える機能も増えますので頑張りましょう。】


この世界ではレベルと言う概念がなさそうなので、ネメアが言う成長とは恐らくスキルの量だろう。


(わかった。明日はそのダンジョンに行ってみよう。行く前にエリーナさんから情報を貰ってからな。)


今更ながらだが情報の大切さが今日はよくわかった、運良くタコ部屋を回避できたが、下手をすれば死ぬ可能性もあったのだ。つくづく自分の愚かか加減に嫌気が差す。


食事が終わり酒場を出て宿へと戻る。銅貨五十枚を払い一人部屋を頼む。タコ部屋とは違い、綺麗なベッドが置かれテーブルに椅子もある。風呂やトイレはないが、ビジネスホテルのような感じだ。

部屋の所々に置かれた燭台の上のろうそくの火が、程よい明かりをたたえ癒しの空間を作っている。


「成る程、草原の癒し亭か。中々いい仕事しやがる。」


昨日のタコ部屋からの評価が逆転した瞬間だった。

革鎧を外し、服を脱ぐ。部屋に備えられた布を同じく備えられている桶に入った水に濡らし、全身を拭う。

再び布地で出来た服を着るときに匂いを嗅ぐ。


「替えの服も買わないとな、明日は頑張ろう。」


ギシリとベッドに腰掛けそのまま横になる。ネメアの事でもう一つ気付いたのは、その刃で俺が傷つく事がないということ。ヒンヤリとした刀身を抱きながら、早めの就寝へといたった。


【おやすみなさいマスター。早くマスターに会える日を楽しみにしています。】

宮部ヒロ


能力・・・体力UP大・敏捷UP中

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