Act.95 決戦の始まり
Act.95 決戦の始まり
ルークが、メカルークの一体に向けて、至近距離から時空震ブレスを放つ。メカルークの頭部が消し飛ぶ。
「これならば、どうだ…!!」
「フ…無駄だ!!」
デストヴァールの言葉と同時に、メカルークの頭部が再生する。
「な…!?」
ルークが驚愕する。メカルークになる前の個々の異形は、一度倒せば再生する事はなかった。つまり、これは特殊異形ではない筈なのだ。
しかし、目の前でメカルークは再生している。一体、これはどういう事なのか。
「我らのエネルギー供給の範囲内では、その程度の攻撃でメカルークを倒す事は出来ん!!」
「…まさか、根源的エネルギーを供給して強引に再生させたのか…!!」
そう、オーガティスが宇宙を捕食した時のヴェルゼンと同じ、という事だ。
…ジャガーノートを沈めない限り、メカルークは何度でも再生する。
「ラーゼル!これでも喰らいやがれ!!」
藤木の怒号と共に、ジェネラルが放った巨大な重力塊がジャガーノートに直撃し、艦体の一部がひしゃげる。
「無駄だ…!?」
「これでも、無駄か…!!」
そこに、更にフレアドイリーガルのライフルが叩き込まれる。
「流石にそれだと押しが足りない、少しだが後押しするぜ…!」
皇帝専用機のライフルが、そこに更に追い討ちをかける。
「何の、その程度の攻撃…!」
「まだまだ!続けて行くよ!!ジオ・バースト!!」
ジオカイザーの全ての火器が一斉に火を噴く。
「…何だと!?」
「一箇所に集中して攻撃を叩き込むか…良かろう!!」
ルークが、更に同じ場所に時空震ブレスを撃ち込む。
「目標、味方機の攻撃箇所!!全主砲、斉射!!」
ズィルヴァンシュピスの砲撃が、更にそこに叩き込まれ、ジャガーノートの横っ腹に風穴が開く。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!!わ、我らの身体に穴がぁああああああああああああああ!!!!!!!」
「ラ、ラーゼル、落ち着きたまえ…この程度、容易に再生できるであろう…!!」
その言葉と同時に開いた風穴は凄まじい速度で再生を始める。外見上は機械だったが、その本質は、間違いなく異形だった。
「チ…これだけの攻撃を叩き込んでも駄目なのかよ…!!」
藤木が舌打ちする。
「よくもやってくれたな…良かろう、望みどおり瞬時に消し去ってくれる!!」
メカルークがジャガーノートの後方に後退し、ジャガーノートの艦首に光が集まり始める。
「あれは…ジャガーノートの艦首砲、か…!!」
その威力は、かつてのインフィナイトをも長い間の休眠へと追い込むほどらしい。
「あっちがそう来るなら、こっちも切り札を切るよ!全機、ズィルヴァンシュピスの射線上から離れて!!」
イセリナが叫ぶ。見ると、ズィルヴァンシュピスの艦首に、凄まじい光が集まっている。
「エネルギー充填120%…射角補正終了…!!」
「エネルギー収束率最大、ジャガーノート、砲撃体勢に移行…!!」
そして、次の言葉は、ほぼ同時だった。
「艦首超次元閉鎖破砕砲…発射!!」
「ジャガーノート砲…発射!!」
凄まじい閃光が、境界空間を白に染める。
辛うじて見えるのは、二筋の閃光が正面からぶつかり、太い光がバラバラに散りながら、細い光と激しくせめぎあっている事だ。
「く…このままでは反動を相殺しきれませんぞ…!!」
事実、ズィルヴァンシュピスが少しずつ後退しはじめている。
しかし、その直後、ジオカイザーがズィルヴァンシュピスの横に取り付き、艦体を支える。
「こっちは私達が支えるよ!!」
「わしも手伝うぞ…!!」
格納庫から、修理を完了したアークトゥルースが出撃し、ジオカイザーが支えている場所の反対側を支える。
更に、皆がそれに合流してズィルヴァンシュピスの後退を抑える。
「今だよ!反動を相殺する分のエネルギーは全部砲の方に回して!!」
「了解しましたぞ…全エネルギーを艦首に集中!!」
ズィルヴァンシュピスの艦首から放たれる光が更に強くなる。超次元閉鎖破砕砲の閃光が、少しずつ、ジャガーノートの艦首砲の光を押し戻し始める。
「さぁ、今こそ銀の槍の底力、私達に相対した連中に見せてやろうよ…ズィルヴァンシュピス!!」
イセリナの言葉に応えるかのように、ズィルヴァンシュピスの超次元閉鎖破砕砲が、ジャガーノートの艦首砲を完全に押し返す。
「な、何だと!?」
そして、そのまま、超次元閉鎖破砕砲が、ジャガーノートの艦首に直撃する。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ!!!!!!!!」
絶叫が響く。そして、衝突したエネルギーが解き放たれる事によって発生した凄まじい爆発が、ジャガーノートの艦首を消し飛ばした。
「やったあ!」
「それで…勝ったつもりか…!!」
ジャガーノートが、凄まじい速度で再生する。
「…この速度は…!!」
再生と同時に、艦首にエネルギーが集まる。
「フ…我らがインフィナイト様から与えられた根源的エネルギー量、思い知るが良い!!」
「まさか、もう一発艦首砲を撃つ気!?…アルフレッド、こっちももう一発撃てる?」
「流石にもう一発撃つには少し時間がかかります…!」
その言葉に、イセリナが冷や汗をかく。
「く…!」
「我らの、勝ちだ!!ジャガーノート砲、発射!!」
そして、盾となったメカルークごと、ジャガーノートの艦首から光が解き放たれる。
「ここまで…なの…!?」
「まだだ!!諦めは…せぬ!!」
絶望的な状況の中、シリウスは諦めていなかった。
アークトゥルースが、フェイト・スレイヤーにエネルギーを集積し、艦首砲発射寸前のジャガーノートと対峙する。
しかし…その直後だった。アークトゥルースの横を、紅い閃光が抜けていく。
「アクセス率百五十パーセント…アクセス…『レベル2』!!」
はあああああああああああああああああああああああああああああああああああーっ!!!!!!」
少女の咆哮と共に、紅い閃光がジャガーノートの艦首から解き放たれた光に激突した。
光がバラバラに散り、視界が白に染まる。そして、紅の翼が閃光を真っ二つに両断しながら羽ばたき、そのままジャガーノートに突っ込んでいく。
「な…貴様は…!!」
「皆を、死なせはしません!!」
直後、凄まじい爆発が、ジャガーノートの艦体前部を飲み込む。
「ぎいああああああああああああああああああああああああああああああああーっ!!!!?」
そこにいたのは、皆が到着を待ちわびた宇宙群の守護者、ギルティア=ループリング…そして、その半身であるエルヴズユンデだった。
「お姉ちゃん…!!」
「皆、無事ですか!?」
「ああ…お主の方こそ、もうこの宇宙群の住人は救い切ったのか…!?」
シリウスの言葉に、ギルティアは笑う。
「…紅蓮の旅団が、力を貸してくれるそうです」
そして、後方からアイギスが合流する。いつの間にか、アイギスはいつも通りイージスの仮面を付けていた。
「そういう事だ」
「この宇宙群にいる旅人達も、一斉に行動を開始しているようです。本当の危機には、やはり皆が力をあわせるのでしょうね…」
エルヴズユンデが、ジャガーノートに向けて剣を構える。
「…まさか、あなた方が生きていたとは…しかし、今度こそ、ここで終わらせます。
あなた方を蘇らせたのがインフィナイトである以上、インフィナイトを倒せば、あなた方は二度と復活する事はありません」
ジャガーノートは、再生に手間取っている。どうやら、先程の一撃は確かに非常に大きなダメージとなったようだ。
エルヴズユンデが、メカルークの軍団に向けて剣を突き出す。
「ここで終わらせます…デストヴァール、そして、ラーゼル!!」
「ようやく現れおったか…!!」
「悪いが…ここで最後だ…確実に不幸になってもらうぞ…!!」
エルヴズユンデとアイギスの眼前に、沢山のメカルークが立ち塞がる。
「幾ら貴様でも、これだけの数のルークを相手に、勝てるものか!!」
「力だけを模した紛い物に、私が負けるとでも?笑わせてくれます…!!」
エルヴズユンデは、メカルークの軍団に突進する。
「よろしい…このミラーナイト・イージス、相手になろう…!!」
直後、アイギスは自分が無意識に発していた名乗りに冷や汗をかく。
「癖になってしまったか…少々不都合な事態であると判断」
そう言いながら、アイギスは全ての火器を一斉にメカルークに向けて放つ。
「本物の意地を見せてくれる!!」
ルークが、一体のメカルークに機械爪を叩き込みながら、時空震ブレスを集束して周囲を薙ぎ払う。
「今です!クライング・フェザー…ブレェェェェェェェェイクッ!!!」
時空震ブレスに飲み込まれたメカルークに、エルヴズユンデが紅の光の矢で追撃をかける。矢が突き刺さった数体のメカルークが爆散する。
「止めだ…!!」
ルークが爆風に突入し、まだ息があるメカルークを次々に掻き裂く。
「討ち損じの処理は俺に任せな…!」
ファラオ店長が正確な射撃によってルークを支援する。戦闘は、乱戦へと突入していた。
「行っけえ!ジオ・ブレイカー!!」
ジオカイザーのドリルがメカルークをぶち抜くが、その直後、ぶち抜かれたメカルークは再生を開始する。
「…く…まだまだ!ジオ・バーストッ!!」
メカルークが再生する瞬間に、ジオカイザーの一斉射撃がメカルークを飲み込む。メカルークが爆散する。
しかし、まだ周囲には五十近い数のメカルークが存在している。
「これじゃきりが無いよ…!」
直後、エルヴズユンデがジオカイザーの前に出る。
「イセリナ、下がりなさい!…コンヴィクション・クロォォォォォォォォォズッ!!!!」
エルヴズユンデの紅の刃が、数体のメカルークを一撃の元に消し飛ばす。直後、再び周囲をメカルークが囲む。
「まだまだ…!!」
エルヴズユンデが、再び剣を構える。
「お姉ちゃん…もしかして、さっきからずっと最大出力で戦ってる…!?」
ギルティア自身は話していなかったが、イセリナは、ギルティアの『最大出力』は彼女自身に多大な負担がかかる事に気づいていたのだ。
「え…ええ、しかし、そうでもしなければ、このレベルの敵を一撃で葬り去る事は出来ません」
まずい、とイセリナは感じた。このままギルティアが戦い続けては、この先に控えている戦いに影響が出てしまうかもしれない。
「く…ここでお姉ちゃんをこれ以上消耗させるわけには…!!」
イセリナが戦いながら考えていると、シリウスから通信が入る。
「イセリナ…お嬢ちゃんを先行させようぞ。このままだとこの先でお嬢ちゃんが消耗したままで戦う事になる」
その言葉に、イセリナは考えるが、直後、藤木とレディオスからも通信が入る。
「このままじゃ泥仕合になっちまう!!せめてギルティアだけでも行かせないと、インフィナイトと戦う時までギルティアが持たねェぞ!!」
「俺も藤木の意見に賛成だ…敵が再生に手間取っている今の状況下ならば、俺達だけでも十分戦える」
イセリナが、頷く。
「…お姉ちゃん!ここは私達が抑えるから、行って!!」
イセリナの言葉に、ギルティアが驚く。
「え…!?」
「この先、四将とインフィナイトがいる筈…こんな所で最大出力で戦ったら、力尽きちゃうよ!!」
「……」
ギルティアは、数秒考えると、頷く。
「…皆、無事でいて下さいね…」
そして、エルヴズユンデが、メカルークの包囲網に真正面から風穴を開け、ジャガーノートの横を抜ける。
「シリウス!あなたも先行して!!」
「な…!?」
シリウスがその言葉に驚く。
「…シリウスにも、この先に戦うべき相手がいるんでしょ?」
「エルグリオ…と言っていたな、奴は強い…可能な限り万全の状態で挑んだほうがいいだろう」
レディオスの言葉に、シリウスが頷く。
「すまぬな、助かる…皆、後で会おう!!」
アークトゥルースもまた、ジャガーノートの横を抜ける。
「逃すか!!」
ジャガーノートの機動兵器の上半身が、剣を振り下ろす。
しかし、その剣に、榴弾砲とアサルトライフルが直撃する。
「…元々これは俺達ラーゼル重工の問題だろうが!えェ?ラーゼル社長よォ!!」
藤木が、そう言ってニヤリと笑う。
「そういう事だ…貴様の相手は俺達だ…!!」
レディオスが、藤木の言葉に続ける。
「…イセリナよ」
アイギスが、イセリナに通信を入れる。
「予備戦力として、私も彼女に同行したいが、よろしいか?」
アイギスは、相変わらず棒読みで提案を申し出た。
「え?」
「控えている強敵は少なくとも、インフィナイト、グランディオス、エルグリオの三人だ。
何が起こるか分からない以上、予備戦力は必要だと判断する」
その言葉に、イセリナが頷く。確かに、この先に何が控えているかを考えればアイギスの申し出はもっともだ。
「…分かったよ。お姉ちゃんの事、お願いね」
「了解…このミラーナイト・イージスに任せてくれ!!」
アイギスが、アークトゥルースを追ってメカルークの包囲網を抜ける。
「…さぁ、ここは私達で抑えよう!皆、必ず生きて帰るよ!!」
イセリナの言葉に、皆が一斉に応えた…。
そして、ジャガーノートを突破したエルヴズユンデは、境界空間を進んでいた。
その先の空間に、異形は存在していなかった。どうやら、目的地から一定の距離に、異形はいないらしい。
「静か、ですね…」
そう、目的地に近付く程、神々しさすらも漂ってくるかのような静けさ…それはまるで、時の流れが止まっているかのようだった。
「…まるで、この先へと進む事を、空間自体が拒んでいるかのようです」
そう、阻むものはなかった。しかし、空気が、何処までも張りつめている。だからこそ、エルヴズユンデは速度を落とし、敵の攻撃に備えていた。
この先に四将がいる…ギルティアは、そう確信していた。
「…間違い無く、この先にいますね…」
ギルティアがそう呟いた直後、エルヴズユンデが、後方から接近してくる機影を感知する。
エルヴズユンデの後方から、アークトゥルースとアイギスが追い付いてきたのだ。
「シリウス、イージス…!?あなた方も、突破してきたのですか!?」
その言葉に、シリウスは笑う。
「わしはエルグリオとの決着をつけねばならんのでな」
「…グランディオスとインフィナイトを連続で、あるいは同時に相手にするのならば、予備戦力は必要だと判断」
その言葉に、ギルティアが頷く。
「…成る程」
そして、ギルティア達は三機で移動を再開する。そんな中、シリウスは、境界空間の彼方を睨む。
「待っておれ、エルグリオよ…お主との戦いも、これで最後ぞ…!!」
シリウスは、機体を前進させながら、静かに呟いた…。
一方、その彼方で、双剣の異形は静かに佇んでいた。
「いよいよだな、シリウス…さぁ…蹴りをつけようぜ…!!」
異形はニヤリと笑うと、三機がいる方向へと加速を開始した…。
宇宙群の命運がかかった戦い、事実、彼らの戦いもその一部に過ぎない。
しかし、今、この瞬間だけは一人の戦士、一人の男として、自分自身の背負うモノの為に戦いたい、二人の意志は同じだった。
そう、戦士達の最後の決闘の時は、間近に迫っていたのだ…。
続く




